日本の歴史

三種の神器とは?神話の時代から受け継がれる宝物が持つ意味とは

三種の神器(さんしゅのじんぎ)と聞くと「冷蔵庫」「洗濯機」「テレビ」を思い浮かべる人もいるかもしれません。しかし今回のお話は「戦後の豊かさの象徴」とは違うもの。日本神話の時代から伝わる「三種の神器」について解説します。2019年、元号が令和に変わったとき、ニュースにもなりましたのでご記憶の方も多いと思いますが、神器とはどのようなものなのでしょうか。由来や奉納場所など、普段あまり知る機会のない「三種の神器」について見ていきましょう。

知っておきたい「三種の神器」の基礎知識

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なくてはならない必需品を3つそろえて「三種の神器」と形容することはよくありますが、その語源は、神話の世界から天皇が代々受け継いでいる宝物3種のこと。いったいどんな宝物なのでしょうか。テレビや冷蔵庫のことはひとまず忘れて、本家本元本筋の三種の神器について、基本的なことを確認しておきましょう。

三種の神器とは何か

三種の神器(さんしゅのじんぎ・みくさのかむだから)は、天孫降臨の際、天照大神(あまてらすおおみかみ)が瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に授けたとされる宝物のこと。具体的には「鏡」と「剣」と「勾玉」です。

正式名称は、八咫鏡(やたのかがみ)、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)。鏡と剣と勾玉であることは間違いありませんが、この宝物は歴代の天皇が継承しており、実際に神器を見たことがある人はごく限られているのだそうです。皇族の方々でも、実物を見ることはないといわれています。

そのため、実際にどんな形をしているのか、想像するより他にありません。実在するのか?と疑問の声もあるとか。

『古事記』や『日本書紀』には、天皇の即位の際などに剣や鏡を賜った、といった記述がいくつか残されていますが、勾玉とセットで三種類の宝物についての記述は見つかっていません。

天皇が継承するという三種の神器ですが、その実態は多くの謎に包まれているのです。

鏡・剣・勾玉とは何か

では、一般的に「鏡」「剣」「勾玉」とはどういうものなのでしょうか。剣はだいたい想像がつきますが、鏡と勾玉については、どういうものか理解を深めておきましょう。

実は「鏡」も「剣」も「勾玉」も、古代の日本では大変神聖で貴重なものでした。この3つを継承するということは、すなわち権力者の証でもあったのです。そのため、全国各地の古墳や古代遺跡などから鏡や勾玉が数多く出土しています。

鏡とは、現代のガラス製の鏡のことではなく、いわゆる銅鏡のこと。青銅などの金属を鋳型で鋳造したもので、様々な模様が施されているもの。古代より祭祀用の道具として用いられており、弥生時代や古墳時代の遺跡からも多数出土しています。

剣は文字通り剣のこと。日本刀のような反った形状のものではなく、まっすぐに伸びた幅の広い形をしているものと思われます。

勾玉とは曲玉とも書きますが、アルファベットのCの字のように曲がった形をした装飾品のことです。素材は、翡翠や水晶、琥珀などを加工して作ったものや、土を型抜きして焼いたもの、金属製のものなど様々。穴をあけて紐を通し、首飾りにして身につけることが多かったようです。

実物の三種の神器を実際に見たことがある人は限られているため、一般的な鏡・剣・勾玉と同形かどうかは不明。ごく限られた人によって密かに受け継がれてきた鏡・剣・勾玉。どのようにして神話の時代から千年二千年と受け継がれているのか、歴史ロマンを感じずにはいられません。

(余談)今どきの三種の神器とは?

難しい話が続きましたので、閑話休題。余談として、私たちの暮らしの中の「三種の神器」についても触れておきましょう。

1950年代、好景気に乗って一般家庭の生活も変わっていきます。この当時の三種の神器が、冒頭でもお話しした「冷蔵庫」「洗濯機」「テレビ(白黒)」。これらのアイテムが急速に広まり、やがて生活になくてはならないものとなっていきました。

1960年代、この時代の三種の神器は「C」がキーワードとなります。「カラーテレビ」「クーラー」「車(Car)」。いずれもまだまだ高価で、生活必需品であるとともに庶民のあこがれでもありました。

2000年代になると、人々の暮らしは多様化。誰もがあこがれを抱く生活必需品も多様化の一途をたどり、3種類に絞ることが難しくなってきます。デジカメ、DVDレコーダー、薄型テレビ、ポータブルプレイヤー、携帯電話、スマートフォン……。世代や職種によって、三種の神器の中身も変化。そんな時代がやってきたようです。

最近の三種の神器として名前が挙がるアイテムは、ロボット掃除機やドラム式洗濯機、食器洗浄機など、時短家事家電に注目が集まっているようですが、一方で、アイテムそのものではなくテクノロジーを指して「4K」「5G」「AI」を三種の神器と呼ぶことも。

何を3つ列挙するか、正解はありません。その人にとって本当に大切で手放すことができないもの、それを大切にする気持ちこそ大切なのだと思われます。

天叢雲剣・八咫鏡・八尺瓊勾玉~それぞれの歴史と由来

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では話を戻しまして、本物の三種の神器(天叢雲剣・八咫鏡・八尺瓊勾玉)について解説いたしましょう。どんな歴史や由来があるか、どこに奉納されているのか、詳しく見ていきたいと思います。

ヤマタノオロチ退治に由来する「天叢雲剣」

天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)は草薙剣(くさなぎのつるぎ)と同一のものであるとも言われています。草薙剣はゲームやアニメにもよく神聖な剣として登場するので、ご存じの方も多いでしょう。

この剣は、スサノオがヤマタノオロチ(八岐大蛇)を退治した後、大蛇の尾から見つかったものです。スサノオは天照大神にこれを献上。やがてほかの神器とともに瓊瓊杵尊の手に渡り、地上へ。以後、歴代天皇によって受け継がれているというわけです。

天叢雲剣は、天照大神やスサノオ、ヤマトタケルなど日本神話の神々を祀った熱田神宮のご神体となっています。

岩戸隠れに由来する鏡「八咫鏡」

八咫鏡(やたのかがみ)は、岩戸隠れ(天照大神が天岩戸に隠れてしまい世界が暗闇に包まれたという神話)のときに石凝姥(イシコリドメ)命が作ったという鏡。天照大神にこの鏡を見せて自分の姿を映させ、外に引き出したところ、世界に明るさが戻ったといわれています。

「八咫(やた)」とは普段あまり目にしない珍しい漢字を使った単語ですが、これには「大きい」とか「長い」といった意味があるとか。具体的にどれくらいの大きさを指すか決まっているわけではありませんが、八咫鏡はある程度の大きさの鏡であることには違いなさそうです。

八咫鏡は天照大神をご祭神として祭る伊勢神宮のご神体として、内宮に安置されています。そして、この八咫鏡の形代(かたしろ・身代わり)が、皇居の賢所に奉安されているのだそうです。

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