児童文学作家ボーム著『オズの魔法使い』の世界・あらすじをわかりやすく解説!
「オズの魔法使い」とは?作者ボームの半生と時代背景
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「イソップ童話」はイソップ兄弟、「アンデルセン童話」はアンデルセン、「グリム童話」はグリム兄弟、「銀河鉄道の夜」は宮沢賢治……。古くから子供たちの間で詠み継がれている童話や絵本の作者、すぐに思い浮かぶものも多いですが、では「オズの魔法使い」の作者は?と聞かれて、名前が思い浮かばない人も多いのではないでしょうか。「オズの魔法使い」の場合は特に、書籍よりミュージカル映画のほうが有名になっていて、本の表紙を見る機会が少ないせいもあるのかもしれません。ではまず最初に「オズの魔法使い」が書かれた時代や作者ボームなど、基本的な情報について詳しく解説します。
いつ頃書かれたもの?「オズの魔法使い」の基礎知識
「オズの魔法使い」は1900年にアメリカで出版された児童文学作品です。
作者はアメリカ合衆国の童話作家、ライマン・フランク・ボーム。多くの児童文学作品を世に残している著名な作家です。
1900年5月17日、最初に世に送り出された「オズの魔法使い」はボームお手製の本で、その後、シカゴの出版社から一般向けに出版されました。初版1万部はあっという間に完売。すぐに1万5千部が増刷されましたが、1~2か月のうちに売り切れ。人気の程が伺えます。
鮮やかな色を使ったカラー図版の児童書は当時まだ珍しかったそうで、子供たちはたちまちこの童話のとりこに。増刷に増刷を重ね空前の大ヒット作となりました。
多くのページの中に、文字とともにたくさんのイラストが添えられていて、文字が読めない子供たちにもわかりやすい内容。平凡な女の子がある日不思議な世界に迷い込み、多くの人々と出会いながら苦難に立ち向かっていく……。そんな夢いっぱいのストーリーが子供たちの心をつかんだのでしょう。
「オズの魔法使い」の登場は、その後の童話や小説、映画界などに大きな影響を与えました。
原作者:ライマン・フランク・ボームとはどんな人?
ライマン・フランク・ボーム(1856年5月15日~1919年5月6日)はニューヨーク出身の童話作家。
生家は大変裕福だったそうで、豊かな教育を受け、若い頃から自分で事業を興す傍ら、書物の出版や演劇などにも力を注いでいたそうです。自分の芝居小屋を持ち、脚本を書き、役者を集めて演出を施し、演者として舞台に立つこともありました。
しかし、興行そのものはあまりうまく回っていなかったようで、何度も破産しかかったり、芝居小屋が火事にあったりと、不運も続いていたと伝わっています。
生活のため、新聞社で働いていたこともあったというボーム。そんな彼に転機が訪れます。
1897年、ボームは「散文のマザー・グース(Mother Goose in Prose)」という短編集を出版。これがなかなかの人気となり、作家として自活できるようになったのです。
1899年にはイラストレーターのW・W・デンスロウと出会い、彼のイラスト入りの詩集「ファーザー・グース、彼の本(Father Goose, His Book)」を出版。こちらの売れ行きも好調で、ボームは児童文学作家として確固たる地位を築きます。
そして翌年の1900年、デンスロウと共同で「The Wonderful Wizard of Oz」を出版。直訳すると「オズの素晴らしい魔法使い」となりますが、日本では「オズの魔法使い」と訳されます。この時ボームは44歳になっていました。
その後もたくさんの児童文学作品を書き、演劇や映画などにも力を注いだボーム。精力的に活動する中、1919年5月5日に脳卒中で倒れ、翌日息を引き取ります。
最期の言葉は「Now we can cross the Shifting Sands.(これで私もあの砂漠を渡ることができるよ)」。「オズの魔法使い」の世界を取り巻く乾いた大地を思い描いていたのだと考えられています。
「オズの魔法使い」に続編があるって本当?
「オズの魔法使い」には、続編が13作(「オズの魔法使い」も含めるとシリーズ全14作)あります。21世紀の「ハリー・ポッター」シリーズを彷彿とさせる人気ぶりです。
ボーム自身は、続編のことなど考えていなかったようですが、「オズの魔法使い」を読んだ世界中の子どもたちからボームのもとに「続きが読みたい!」「続編を書いて!」とリクエストが届くようになります。「オズの魔法使い」は出版後、50か国以上もの言葉に翻訳され、世界中の子供たちに読まれるようになっていたのです。
そんな声に応えるべく、ボームは1904年に「オズの虹の国(The Marvelous Land of Oz)」を発表。その後も1~2年おきに次々と続編を世に送り出していきます。
1919年、ボームがこの世を去り、14作目の「オズのグリンダ(Glinda of Oz)」が出版された後も、子供たちの期待に応えるべく、出版社の依頼を受けた作家たちがオズのシリーズの執筆を続行。オズシリーズは40作にもなると言われています。
ちなみに「オズの魔法使い」の「オズ」とは、「O-Z」に由来。アルファベット順にファイルを分類するキャビネットの引き出しのラベル「OからZまで」を表す「O-Z」から来ているのだとか。これはボーム自身がメディアのインタビューの中で語っているもので、よく目にしていたファイリング・キャビネットを見て名付けたのだそうです。
どんなお話だっけ?「オズの魔法使い」のあらすじとは
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「オズの魔法使い」というお話があることは知っているけれど、「じゃあ、オズの魔法使いってどんな姿をしてた?」と聞かれると、はて?どんな魔法使いだったかな?と思ってしまう人もいるのではないでしょうか。そもそも「オズ」って何か、だんだん記憶が……。100年近く前に書かれたものであり、長い間多くの人に読み継がれてきた物語です。ほかの童話と混同してしまうのも無理はありません。ボームが描いた珠玉のファンタジー。「オズの魔法使い」のストーリーを簡単におさらいしてみましょう。
ドロシー、竜巻に巻き込まれ不思議な世界へ飛ばされる
「オズの魔法使い」の主人公はドロシーという女の子。カンザス州のとある村で、ヘンリーおじさんとエムおばさん、飼い犬のトトと一緒に暮らしています。
ある日のこと、ドロシーの住む家を竜巻が直撃。ドロシーとトトは不思議な世界に飛ばされてしまうのです。
ここは「オズ王国」と呼ばれる世界。マンチキンと呼ばれる小柄な人々が東の魔女に支配されながら暮らしていました。
そんなところにドロシーとトトが飛ばされてきて、東の魔女の家の上にドーン。不可抗力とはいえ、ドロシーはマンチキンたちを支配していた東の魔女をやっつけます。
悪い魔女を倒したことで、感謝されるドロシー。そこへ北の魔女がやってきて、悪い魔女をやっつけたドロシーに魔法の靴を授けます。東の魔女は悪い魔女、北の魔女は良い魔女だったのです。
でも、家に帰りたい。カンザスに帰るにはどうしたらいい?
北の魔女は「エメラルドの都に行って偉大なオズの魔法使いに願いを叶えてもらうとよいでしょう」とアドバイスしてくれました。
家に帰る方法を探しながら3人の仲間と出会うドロシー
強大な力を持つ「オズの魔法使い」に会うため、エメラルドの都へ行くことを決意したドロシー。長い長い冒険の始まりです。
途中、頭にワラが詰まったカカシと、悪い魔女に心を抜き取られ油が切れたブリキの木こりと、臆病なライオンに出会います。
「家に帰りたい」という望みを叶えてもらうため、オズの魔法使いに会いに行くというドロシーに、3人は同行。カカシは「脳みそ」、ブリキの木こりは「心」、ライオンは「勇気」をオズの魔法使いに授けてもらおうと思い、一緒に都へ行くことにしたのです。
様々な苦難を知恵と勇気で乗り越え、エメラルドの都に到着した一行は、まばゆいばかりに輝く街の中へ。ドロシーは大きなお城の中で、オズの魔法使いに謁見します。
ドロシーが会ったオズの魔法使いは、大きな玉座の上に鎮座する巨大な「顔」だけという奇妙な姿。顔はドロシーに「願いを叶えてほしいなら、西の魔女を退治してこい」と言われます。