小説・童話あらすじ

HSPの若者へーゲーテ「若きウェルテルの悩み」の魅力を解説!

自殺を肯定している?「ウェルテル」を読むと死にたくなるのか

「若きウェルテルの悩み」に関連した歴史上の事件で有名なものがあります。「ウェルテル効果」――「若きウェルテルの悩み」の愛読者の青年たちが、作中のウェルテルと同じ服装でピストル自殺を遂げる事件が多発したのです。これによって「ウェルテルは自殺肯定のけしからん本だ」という風潮は多少今もあることは否めません。

しかしウェルテルは私たち読者の代わりに死んでくれているのです。読書は他人の人生の追体験。悩み苦しんだウェルテルが自らの命を断つシーンを読むことで、どこか、不愉快な皮を脱皮したようにスッキリするのです。ただただ、「ウェルテル」は、あなたの苦痛によりそうことでしょう。だからこそ数百年にわたり愛されてきたのです。

あとこれは読んでからのお楽しみなのですが、ウェルテルの死に方はわりとリアルで、苦しそう。しかも自殺は最悪の罪、地獄行きと考えるキリスト教の決まりに従ってお葬式ナシ。ただ埋められるだけというシビアな扱い。筆者は「うわぁ……」となって死ぬのやめました。本当です。

生きづらいのは、あなただけじゃない

「若きウェルテルの悩み」を読んだからといって「ウェルテルも死ぬくらいに世の中ろくでもない。よし、死のう」……とはなかなかなりません。「ウェルテル」は自殺を否定も肯定もしていませんが、筆者を含め多くの人を生きる方向に引っ張っています。

ウェルテルにはロッテしかいませんでしたが、あなたには、私たちには、片思いの恋人以外にも、心を許し愛することができる人を作ることができるはずです。哲学者キルケゴールに「絶望は死に至る病である」という有名な言葉がありますが、ウェルテルは恋に破れたことのみならず、世の中に疎外されている感覚を強く覚え、誰も自分を理解しないことに対して激しく絶望したのでした。

しかし「ウェルテル」を読むと「自分を理解してくれる本がここにある」と励まされます。これはとても大きなことです。「若きウェルテルの悩み」をゲーテは自身の体験をベースにして書いています。ウェルテルと同じく婚約者を持つ女性に恋し、絶望のあまり彼自身も自殺を考えました。しかしゲーテは思いとどまり、自身のことを「若きウェルテルの悩み」という作品に昇華させたのです。生きづらいのは、あなただけじゃない。若く繊細なあなたに語りかけてくれます。

人間は醜いし裏切るが、世界は美しいし、信じることができる

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理解されない繊細すぎる感性、暴走しがちな感情、集団でうまくやっていけない苦しみ、報われない恋……HSPにとってウェルテルの姿はあまりにも自分に近いものです。ウェルテルは小説の中で、何度も私たちの代わりに死にます。この本は理解者としてあなたに寄り添ってくれることでしょう。私たちは哀れなウェルテルの悲劇に涙し感動し、もうちょっとだけ、なんとか、と生きる勇気をもらえるのです。ぜひ手にとって読んでみてください。

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