日本の歴史

個性豊かな日本の神獣たち~関連スポットも合わせてご紹介~

「神の使い」だといわれている神獣たち

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日本の神獣たち。次にご紹介するのは「神使(神の使い)」だとされている動物です。古来、神様はご自分の口ではなく、巫女や使いの獣たちを使って口寄せを行い、人間に神託を啓示するものだとされてきました。そんな神様と神獣との繋がりを見ていきましょう。

神社の境内に鎮座する【お稲荷さんと狛犬】

普通の神社には【狛犬】が。そして稲荷神社には【お稲荷さん(キツネ)】が向き合うように鎮座しているもの。実はどちらも「神様の使い」の役割があるのですが、その起源と入ってきた経緯が違うために「キツネ」「イヌ」になっています。

稲荷信仰の起源はといえば、もとは大陸出身だった古代豪族の秦氏がインド仏教の吒枳尼天(だきにてん)を日本へ持ち込み、日本古来の神ウカマノミタマと習合したのが源流だとされていますね。ちなみに吒枳尼天とウカマノミタマはどちらも白いキツネを使いにしているため、だからお稲荷さんはキツネなのです。

そして狛犬の場合は、時代はもっと下って平安時代。元来は中国皇帝の守護獣だった【獅子】が日本に入ってきて、天皇や皇室の守護獣となりました。そして平安時代後期ともなると、天皇と縁が深い神社や、仏法の守護獣としての意味合いも持つようになりました。

やがて神社で祀られている祭神の使いとして二対の獅子が。仏法の守護獣としては唐獅子が。というふうに系統が分かれていったのですね。ちなみに獅子というのは【ライオン】のこと。当時の日本人はライオンなんて見たことがないですから、想像をたくましくして表現していくしかありません。しかし時代が経るにつれ、だんだんと日本に古来から存在している動物に似てきました…そう、それがイヌだったのです。名前もいつしか獅子から狛犬になってしまったのは、やはり日本ならではでしょう。

お稲荷さんの関連スポット<豊川稲荷>

豊川稲荷は日本三大稲荷の一つともいわれる神社で、ここには二対のお稲荷さん以外にも「霊狐塚」という場所があります。赤いよだれかけを付けたキツネの石像が数えきれないほど安置されていて、まさに圧倒されるような雰囲気が魅力です。

様々な大きさ、様々な表情のキツネがいるので、いつまでも見飽きないくらいです。お願い事が叶った信者の方が、お礼として石像を奉納し、今では800体もあるのだとか。

危機一髪の大黒さまを助けた神獣【ネズミ】

大きな袋を背負い、打出の小槌を持った大黒さまといえば七福神の一人として、また豊穣と財福を司る神様として有名ですよね。実は大黒さまを危機一髪のところで助けたのがネズミだったのです。今では「神の使い」として縁の深い動物なのですが、なぜそういう繋がりがあったのでしょうか。

例に漏れず、大黒さまも元はといえばインドから中国経由で日本へやってきた存在です。正しくは「大黒天」といいますが。それが日本古来の神である大国主命(オオクニヌシノミコト)と習合し、大黒さまと呼ばれるようになった経緯があります。

大国主命はある時、スサノオノミコトの娘スセリビメに見初められ恋に落ちました。ところが父親のスサノオはそれを知って怒り心頭。それならばと大国主命に3日間の試練を与えます。

1日目は蛇がうじゃうじゃといる部屋、2日目は蜂やムカデがたくさんいる部屋に寝るよう命じられますが、なんとかスセリビメの機転もあって切り抜けました。

ところが3日目、大きな野原の中に放った矢を拾ってくるよう命じられますが、大国主命が足を踏み入れると途端に火が放たれ、逃げ場を失ってしまいました。すると小さなネズミが出てきて、「内はほらほら、外はずぶずぶ(内は広いが、外は狭い)」と言ったので、素早く理解した大国主命は小さな穴へ足を突っ込み、そのまま中の空洞へ逃げ込みました。

火が遠ざかったあと、例のネズミが矢を口にくわえて持ってきたので、大国主命は試練を乗り越えることができました。無事にスサノオに矢を渡した彼は、のちにスセリビメとともに新しい国造りの役目を担ったそうです。こうしてみると大国主命という人物は、因幡でウサギを助けた逸話といい、よほど動物に縁があるのでしょうね。

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明石則実