豆知識・雑学

車にLEDライトが普及した今、パッシングが意味を失いつつある?

パッシングとは、対向車や後続車から、眩しい限りの点滅が発生することで何らかの意思を伝達する役割を担っていました。しかし最近の車の前照灯がLED化したことで、光の照射が車の角度によっては眩しく感じられるようになり、パッシングに近い現象を対向車や後続車から受け続けるようになりました。それがかえってパッシングの意味を失いつつあるのです。

パッシングとは?相手に何を伝えるの?

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パッシングとはウィンカーのレバーを手前に2回から3回連続して引くことで、ハイビームを点滅させることです。特に対向車に対して何らかの意思伝達をしたいときに行います。車同士の場合、特に走行中は肉声で呼びかけたりするのは不可能であり、ジェスチャーで伝えるにしても相手がこちらの車内に視線を移していることが前提です。しかしそれでは間に合わないことが多く、相手の意識を強制的にこちらに向けさせるために、パッシングによって眩しい光を点滅させます。

パッシングによる意味は大きく分けて、ポジティブなもの、ネガティブなもの、注意喚起を促すものの3種類になるでしょう。ポジティブなものとは、相手に道を譲るまたは譲って欲しいなどのお願いや促しに関わるものであり、ネガティブなものとは明らかに危険な状況下で割り込みをされた場合の抗議などです。注意喚起とは、対向車がハイビームなどで眩しい場合などですが、時代とともに変わりつつあります。

ポジティブな意思伝達としてのパッシングとは?

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ポジティブな意思伝達としては、対向車に対して道を譲ったり譲ってもらったりするためのパッシングが圧倒的に多いです。渋滞している対向車線を右折する場合の、対向車または自車のパッシング、あるいはこれから渋滞車線に流入しようとする中で、後続車となる車のパッシングがそれに該当します。譲ってもらった場合にもパッシングをすると説明しているサイトもありますが、実際にはそれはないでしょう。パッシングとは相手の意識に介入するほど急を要するものであり、お礼においては大抵の場合、譲った相手がこちらを見ていることが多いため、パッシングはかえって野暮なものとなってしまいます。手を挙げるか、雨や夜間の場合にはクラクションを軽く鳴らすことでお礼をするのがいいでしょう。

ネガティブな意思伝達としてのパッシングとは?

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ネガティブな意思伝達としては、相手の車に牽制をかけたり、抗議をしたりするためにパッシングが使われます。牽制をかける一番多いパターンは、交差点を直進する際に信号が手前で変わってしまい、右折車が右折に入ろうとする中、強引に直進する場合です。直進車のスピードが出すぎており交差点の手前で停止するには完全に間に合わない場合、対向車の右折を牽制するためによく使われます。但し対向車がよそ見をしている場合には事故に直結するほど非常に危険な状況となり、パッシングを行っても危険は回避できません。

抗議をする場合とは、無理な割り込みや、前方の車の意味のないブレーキの多用、さらには高速走行時の追い越し車線上でゆっくり走っている車に対しての抗議が多いです。しかし最近はあおり運転が大きく問題になっているため、もはやパッシングによる意思伝達としての効力は薄れてくるでしょう。

注意喚起としてのパッシングとは?-対向車のヘッドライトが眩しい

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注意喚起を促す意思伝達としては、対向車のヘッドライトが眩しい場合、ヘッドライトの消し忘れ、対向車にこの先で検問をやっているなどを知らせる場合がありますが、時代とともに変わりつつあります。最初にヘッドライトが眩しい場合の注意喚起ですが、これはハロゲンランプが主流でありLEDランプが存在しなかったころの話です。ハロゲンランプはロービームとハイビームの眩しさに格差があったため、パッシングをされた方は明らかにハイビームかどうかを確認したものでした。

その後ディスチャージヘッドランプといった明るさが増したランプが登場しましたが、点灯に時間を要し、ハイビームはハロゲンであったため、相手の車がハイビームなのかどうかが一目瞭然でした。しかしLEDランプが登場し、ハイビームも同様にLEDを採用している可能性も否めない場合、「今、対向車はハイビーム走行かロービーム走行か」の区別がつかなくなりつつあります。特にお互い上り坂の交差点で先頭車がライトを消していない場合、あからさまにハイビームで停車するのと同じことになるでしょう。

注意喚起としてのパッシングとは?-対向車にこの先のことを知らせる

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注意喚起を促すもう一つの意思伝達として、対向車に対して、この先の道路で検問や事故による道路の渋滞や封鎖を知らせるためのパッシングがあります。ただしこれも山道などの片側一車線の一歩道では有効であるわけで、そうでない場合に状況を知らせるために促したパッシングが相手に伝わらず、パッシングで返される場合も最近では出てきているのです。片側一車線の山道で通常走行をしている場合、対向車に対してはどちらかがセンターラインオーバーをしていない限り、全く接点がありません。それにも関わらずパッシングを受けるということは、この先に何かがあることを知らせてくれると受け取れるのです。

パッシングはもはや意味を失い始めたとされる3つの根拠について

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譲り譲り合うための合図から抗議、相手に注意喚起を促すなど、意思伝達のために行われるパッシングですが、最近ではパッシングによって相手に何かを伝えることがやりにくくなってきました。その根拠として、一つ目にLEDライトの普及による輝度の大幅アップによるもの、二つ目には、スマホやカーナビ、テレビの画面と前方を交互に確認しながら運転するドライバーの増加、三つ目には、縦割り社会でのドライバー間のコミュニケーションの希薄化が挙げられます。

根拠1 LEDライトの普及による輝度の大幅アップ

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近年はLEDライトの普及により、以前とは比較にならないほど対向車にとって照射の度合いが増してきました。一部を除いてハイビームはまだハロゲンランプが主流であるとはいえ、ロービームの時点で眩しくて直視できないケースも多くなってきています。これは一重に意図的に対向車や後続車を見なくなることにつながるからです。すなわち相手が何かしらの意味を含んだパッシングを行ったとしても、視界を外している状態では相手がパッシングをしていることを認識していないことにつながります。

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