- 1. 「臥薪嘗胆」の意味
- 1-1. 「臥薪嘗胆」の使い方・例文
- 1-2. 「臥薪嘗胆」の類義語
- 1-3. 「臥薪嘗胆」の対義語
- 2. 臥薪嘗胆の故事が起きた経緯
- 2-1. 呉と越の関係
- 2-2. 呉を全盛に導いた王・闔閭
- 2-3. 返り討ちに遭った闔閭が、復讐を息子に託す
- 3. 夫差と勾践の復讐合戦から生まれた臥薪嘗胆
- 3-1. 夫差、「臥薪」して復讐心を忘れず
- 3-2. 敗れた勾践、夫差の使用人となる
- 3-3. 「嘗胆」して屈辱を忘れなかった勾践
- 4. 臥薪嘗胆のその後…両者の行く末は?
- 4-1. 夫差の痛恨のミス:伍子胥を殺してしまう
- 4-2. 伍子胥の最期と不吉な予言
- 4-3. 夫差、勾践に敗れて死を選ぶ
- 4-4. 臥薪嘗胆したはずの両者が共に衰える
- 4-5. かつての日本でも臥薪嘗胆が唱えられた
- 臥薪嘗胆はそれぞれのためになったのか?
この記事の目次
1. 「臥薪嘗胆」の意味
「臥薪嘗胆」の意味は、「薪(たきぎ)の上に臥(ふ)し、肝を嘗(な)めて、受けた屈辱を忘れないこと」です。つまり、復讐を果たすために大きな苦労を重ねることであり、現代では「目的を達成するために、長い間努力すること」という意味となります。では、「臥薪嘗胆」の使い方や類義語、対義語などについてご説明しましょう。
1-1. 「臥薪嘗胆」の使い方・例文
臥薪嘗胆の使い方はこのようになります。
「第一志望校合格のため、臥薪嘗胆し勉強に励んだ」
また、
「昨年は決勝で敗れたが、そこから臥薪嘗胆の思いで練習してきた結果、ついに優勝することができた」
などとも使えますね。
臥薪嘗胆という言葉を使うためには、「目的の達成のための努力」と、それが「長い間続いだこと」がポイントとなります。そのため、短期間での努力を指すときには、臥薪嘗胆は使えません。
1-2. 「臥薪嘗胆」の類義語
臥薪嘗胆の類義語には、「捲土重来(けんどちょうらい)」や「汚名返上」などの四字熟語が挙げられます。捲土重来は「一度は敗れたが、その後巻き返すこと」という意味であり、汚名返上は「一度失敗し、それによって被った悪い評価を覆すこと」です。「復讐を果たすために苦労を重ねる」という、臥薪嘗胆の本来の意味と似ていますね。
また、「越王之胆(えつおうのたん)」や「坐薪懸胆(ざしんけんたん)」とも同じ意味です。これらは後で登場する臥薪嘗胆の由来の項目で触れますね。
1-3. 「臥薪嘗胆」の対義語
臥薪嘗胆の対義語としてよく挙げられるのが、「再起不能」や「一蹶不振(いっけつふしん)」などです。再起不能は文字通り「再び起きることが不可能になる」、つまり「立ち直り元の勢いを取り戻すことができなくなる」ということですね。
また、一蹶不振は「一度の失敗で挫折してしまい、再起できなくなること」という意味。「蹶」には「つまずく・倒れる」という意味があるのです。
2. 臥薪嘗胆の故事が起きた経緯
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「薪(たきぎ)の上に臥(ふ)し、肝を嘗(な)めて、受けた屈辱を忘れないこと」というのが臥薪嘗胆の意味ですが、これは古代中国の故事に由来しています。呉(ご)王・夫差(ふさ)と越(えつ)王・勾践(こうせん)という2人の王は互いに争い、一度は夫差が勝ち、次は勾践が勝ちました。夫差が敗れた時には「薪の上に臥して」勾践への雪辱を誓い、勾践が敗れた時には「胆を嘗めて」夫差への復讐を誓ったわけです。
2-1. 呉と越の関係
時は古代中国、春秋時代のこと。
春秋時代とは、紀元前770年から紀元前5世紀ごろまでを指します。多くの国家が割拠し、盟主をなるのを誰もが狙う時代でした。
そんな中に、呉と越という国がありました。呉は現在の江蘇省蘇州市、越は浙江省紹興市付近にあった国で、両国は国境を接していました。つまりは、しのぎを削り合っていたというわけですね。
2-2. 呉を全盛に導いた王・闔閭
呉王・闔閭(こうりょ)の代になると、呉は隆盛をきわめました。名臣・伍子胥(ごししょ)や兵法家の孫武(そんぶ)に恵まれた闔閭は、南の大国・楚(そ)とも互角に対抗し、一時は滅亡寸前にまで追い込むほどの勢いだったのです。
しかし、その隙を衝いてきたのが隣の越王・允常(いんじょう)でした。越に攻められたことで、闔閭は楚にとどめを刺すことを断念せざるを得なくなり、撤退します。闔閭はこのことを深く恨み、允常が亡くなると、越へと攻め込んでいったのです。