ヨーロッパの歴史

EU(ヨーロッパ連合)とは?成り立ちや仕組み・問題点などわかりやすく解説

日本・EU経済連携協定

日本とEUは2010年代の前半から新しい経済協定の締結に向けて話し合いを開始します。EU・日本の双方とも譲れない利益があり、話し合いは難航しました。事態を変化させたのはトランプ大統領の登場です。

トランプ大統領はアメリカ第一主義を掲げ、貿易でも自国産業の保護を優先する保護貿易の姿勢を明確にしました。日本とEUはアメリカに対抗するため交渉を加速。2018年に交渉が成立し、2019年2月1日から発効することになりました。

内容はチーズや自動車の関税を段階的に廃止することやワイン・日本酒・緑茶などの関税を即時撤廃などです。この結果、日本は94%、EUは99%の品目で関税をなくすことになりました。日本国内にはEU産の農作物が関税なしで入ってくることで国内農業に打撃があることを心配する一方、貿易拡大や輸入品の値下げなどを歓迎する声もあります。

EUの問題点とは

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人・モノ・カネの移動を自由にすることで大きな自由貿易圏を作ろうというEUの試みは簡単に実現できるというわけではありません。各国の経済格差の問題や流入する移民への対応、2016年のイギリスのEU離脱、いわゆるブレクジットの衝撃などEUは様々な問題を抱えています。

大きな経済格差

現在EUに加盟している28カ国は経済的に大きな格差を抱えています。所得が高いのはフランス・イギリス・ドイツ・イタリア・北欧諸国といったEC時代から加盟している西ヨーロッパ諸国。一方、新規に加盟した東ヨーロッパ諸国は依然として所得は低い状態で、2000年以降に加盟した国でEU平均の所得を越える国はありません。EUは全体の底上げを図っていますが、なかなか追いついていないのが実情です。

また、経済危機に見舞われた加盟国もあります。代表的なものはギリシャの危機でしょう。2009年、ギリシャでは歴代政権が放漫財政を行った結果、多額の赤字を抱えていたことが発覚。EUなどの支援で再建が図られました。

EUはギリシャを支援する代わりに支出を減らす緊縮財政を要求。その結果、ギリシャでは失業率が増大したり公共事業が行えなくなったりしました。EUの中でも経済力の弱い国はいつギリシャのようになってもおかしくないのです。

流入する難民

2000年代に入ると中東からヨーロッパに向けての難民の数が増加しました。背景には中東やアフリカでたびたび起こる戦争・内戦があります。ISによるイラク北部やシリア東部の支配やシリアの内戦などにより難民が激増したのも一因でしょう。アフリカからヨーロッパを目指す難民も後を絶ちません。

難民が激増したのは2015年のこと。難民の数は2015年の1年間だけで100万人に達しました。難民の流入はEU加盟国内での対立を深めます。ドイツのように移民受け入れに積極姿勢を示す国もあれば、移民を拒否する国もありました。特にハンガリー・ポーランド・チェコ・スロヴァキア・オーストリアは難民の受け入れに強く反対しています。さらにハンガリーなどはEUから課せられた難民の割り当てを拒否しました。多文化主義を掲げるEUですが、難民への対応は一枚岩とはいかないようです。

ブレクジットの衝撃

2016年6月23日、イギリスのEU離脱を問う国民投票の結果は世界に衝撃を走らせました。離脱賛成は51.89%、離脱反対は48.11%。僅差ではありましたがイギリスのEU離脱が可決されたのです。イギリスのEU離脱をブレクジットとよびます。

投票を実施した保守党のキャメロン首相は2015年の総選挙でEU離脱に関する国民投票の実施を約束し、2016年に国民投票を実行しました。イギリス国民は流入する難民や過激派による相次ぐテロ、経済の低成長などでEUに対する期待を失っていたのかもしれません。

投票結果を受け、キャメロンは首相の座をメイに譲って政権を降りました。国民投票後もイギリス国内ではEU離脱派とEU残留派の対立が続いています。2019年にはイギリスのEU離脱は現実のものとなりますが、EUとどのような関係を築くかは不透明なまま。今後の行方に注視する必要がありそうです。

ヨーロッパ統合の試みは今後も継続する

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現在、EUは結成以来最大の危機に直面しています。中東やアフリカから押し寄せる難民への対処、共通政策の維持、各国の対立と妥協、ギリシャに代表される経済危機、そしてブレクジット。それでも、EUは再び戦争の悪夢を繰り返さないためヨーロッパ統合の試みを継続し続けるでしょう。今後もEUの挑戦は続きます。

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