西洋にも東洋にもある神秘的なドラゴン神話の世界をご紹介
神話・伝承の中に残る「ドラゴンのモチーフ」たち
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大きな口と大きな目、硬いうろこ、鋭い爪、巨大なトカゲのような姿……ドラゴンのイメージというと、こんな感じではないでしょうか。実在しない幻の生き物ですが、SF小説やロールプレイングゲームの中では欠かせない存在となっています。そんなドラゴンの「もと」になった神話・伝承は、世界中にたくさん残っているのです。有名なものを一挙ご紹介いたします。
テューポーン(Typhon)
テューポーンは(テュポーンやテュポーエウスとも)ギリシャ神話に登場する怪物です。女神ガイアの息子であり、あらゆる怪物の頂点に立つ存在とも言われています。
頭が星にぶつかるほどの巨体で、灼熱の炎を吐き、すべてを破壊しまくるギリシャ神話最強最大の破壊神。上半身は人間ですが、下半身は大蛇のように長くとぐろを巻いて描かれていることが多く、とても恐ろしい姿形。肩から100の蛇の頭が生えているとも言われています。翼を広げた姿が描かれていることもあるそうです。
ギリシャ神話には、ゼウスをはじめとするオリュンポスの神々が怪物たちと宇宙の支配権をめぐって壮絶な戦いを繰り広げる様子が記されています。強大な怪物を次々に倒し、ゼウスたちがちょっと調子に乗っているとき、女神ガイアはテューポーンを送り出しました。ゼウスの雷とテューポーンの炎、激しい戦いが始まります。最終的にゼウスがテューポーンを倒して勝利しますが、テューポーンは強大な力を持つ怪物として語り継がれることになるのです。
太平洋で発生する台風を表す英単語「typhoon」はテューポーンに由来するといわれています。
エキドナ(Echidna)
「エキドナ」はギリシア神話に登場する怪物。上半身は美しい女性の姿をしていますが下半身は大蛇。大きな翼を持っており、かなり気性の激しい恐ろしい怪物です。
ゼウスと死闘を繰り広げたテューポーンの妻でもあり、テューポーンとの間にケルベロスやヒュドラー、キマイラ、スキュラ、オルトロス、ラドンなど数多くの魔物たちの母でもあります。
ギリシャ神話の神々や怪物は、天体の名称になっていることが多いですが、エキドナも、小惑星テュフォン(Typhon)の衛星の名前に。テュフォンはテューポーンから命名されており、夫婦そろって海王星と共に公転しています。
ニーズヘッグ(Nidhogg)
ニーズヘッグは北欧神話に登場する幻獣。大蛇のような姿で描かれることもありますが、基本的には私たちが思い描くドラゴンの姿に非常に近い形状をしています。「ニーズヘッグ」とは北欧の古い言葉で「怒りに燃えてうずくまる者」という意味を持つのだそうです。
北欧神話では世界は9つの階層に分かれており、下層部分にはニヴルヘイムという氷の国があります。ニーズヘッグはここにたくさんのヘビたちと暮らしていて、9つの世界を支える世界樹ユグドラシルの根をかじって枯らそうとしているのだそうです。また、ラグナロク(北欧神話における終末の日)に死者を乗せて飛ぶ黒き龍として登場します。
ガーゴイル(Gargoyle)
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ヨーロッパの歴史ある建造物の屋根や壁に、恐ろしい顔をした怪物の彫刻が置かれていることがあります。悪魔のような姿をしているものもありますが、両翼を持ったトカゲのような形のものも多い。このような「建物の屋根や壁面に突出した幻獣の彫刻を「ガーゴイル」と呼んでいます。
日本でいうところの、シャチホコや鬼瓦のようなものでしょうか。
ドラゴンの一種というわけではありませんが、ドラゴンを彷彿とさせる幻獣をかたどったガーゴイルも数多く存在します。
「ガーゴイル」はフランス語のガルグイユ(gargouille)が由来で、雨どいの役目を果たすために作られたもの。屋根をつたって溜まる雨水の排出口として作られたものが始まりです。雨どいに様々な動物の形を施した痕跡は、古代ギリシアやエジプトなどの遺跡にも数多く見られます。邪悪な怪物や聖なる生物の口から水が流れ出るように造るうちに、装飾技術も向上。中世建築では芸術作品の域に達します。幻獣としての市民権を得て、SFファンタジー小説やアニメに登場するようになったのです。
ワイバーン(wyvern/wivern)
イギリスの紋章や旗章に描かれている、翼のあるドラゴンをご存知でしょうか。名前は「ワイバーン」。一般的には、頭がドラゴン、翼がコウモリ、脚はワシ、尾がヘビ、尾の先が矢のように尖っていて、口から長い舌を出していたり、火を吐いていたりといった姿形をしています。
ワイバーンはシンボルマークのモチーフとしてイギリスで非常に人気が高く、歴代の王の紋章などに好んで用いられ、大切にされてきました。12世紀頃には既に、紋章として使われていたようです。ただ、いつ頃から、どのようにして誕生したものなのか、起源や由来ははっきりしていません。
もともと、紋章として中世イギリスで誕生した存在であり、神話や伝承に登場するものではありませんが、多くの人が「ドラゴン」として思い描く姿形をしているワイバーン。ロールプレイングゲームやSF小説の中でもよく登場する人気のキャラクターとなっています。
ヒュドラー(Hydra)
「ヒュドラー」はテューポーンとエキドナの子で、ギリシャ神話に登場する怪物。ヒュドラ、ハイドラ、ヒドラと表記されることもあります。
9つの頭を持ち、そのうちのまん中の頭は不死身で、切り落としても死なないし逆に新しい首が2つ出てくるのだそうです。また、神々でさえ恐れるという強力な毒を吐くことでも知られています。神話の中では、ヘラクレスに退治された水蛇として登場。切り落とせば落とすほどヒュドラーの首はどんどん増えていくため、さすがのヘラクレスもかなり苦戦しましたが、首を落とした後で岩の下敷きにして何とか倒すことに成功します。
ヒュドラーはヘラクレスに倒された後、星座になりました。最も大きな星座として知られるうみへび座として、春の夜空いっぱいに横たわっています。