フランスヨーロッパの歴史

世界の人々を魅了する「ノートルダム大聖堂」とは?わかりやすく解説

2019年4月15日から4月16日にかけて、衝撃的なニュースが世界中を駆け巡りました。フランス・パリの観光名所としても人気の高いノートルダム大聖堂で大規模な火災が発生。大聖堂のシンボルである尖塔が焼け落ち、周囲の屋根が崩れ落ちる映像を見て心を痛めた方も多いと思います。今回はそんなノートルダム大聖堂への思いを込めて、ノートルダム大聖堂について解説してみたいと思います。

なぜ世界各地にあるの?ノートルダム大聖堂の歴史と意義

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実はノートルダム大聖堂とは、パリだけでなく世界各地にいくつか建設されています。最も大きく最も有名なものはパリのシテ島のもの。しかし他の国のノートルダム大聖堂も美しい建築様式で建てられており、観光スポットとしても人気があります。ではなぜ、世界各地にノートルダム大聖堂は建てられているのでしょうか。

意味は「私たちの貴婦人」~聖母マリアにささげられた教会堂

ノートルダム大聖堂(ノートルダム教会・ノートルダム寺院)とは、聖母マリアに捧げられた教会のことをいいます。

ノートルダム(ノートル=ダム・Notre-Dame)とはフランス語で「私たちの貴婦人」という意味。聖母マリアを表した言葉なのです。

この名前は、寺院や教会だけでなく、大学など学校の名前にも用いられています。海外だけでなく日本にも、京都や広島にノートルダムの名前のついた学校があることは皆さんご存じのとおりです。

カテドラル・バシリカ・ドーム?教会堂建築の違いとは

ノートルダムという名前の教会が世界のどこにあるか調べていると「カテドラル」や「バシリカ」といった単語がたびたび登場します。

いずれも、教会建築の違い(建築様式や用途など)を表す単語です。

カテドラルとは、ギリシア語で「椅子」を表す単語カテドラがもとになっているといわれています。教会の建築様式を表す単語のひとつです。

椅子とは司教座のこと。カトリック教会の司教区で、司教座がある聖堂(大聖堂)のことをこう呼びます。

イタリア語でのドゥオモ、ドイツではドームと同義語とみてよいようです。

一方バシリカは、キリスト教が伝わる前の紀元前のローマ時代の建築様式のひとつ。奥に長く続く、両側に柱がたくさん建っている長方形をした建造物の形式のことです。教会の場合は、特別な役割を与えられた建物をさすことが多く、一般的に大聖堂を表す場合が多いとされています。

巡ってみたい!私たちの貴婦人・世界各地のノートルダム大聖堂

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聖母マリアに捧げる教会ということで、ノートルダム教会はパリだけでなく世界各地に建てられています。フランスだけでも規模の大小合わせると40以上はあるとか。もちろん、フランス以外の国にもたくさん建てられています。いずれも美しい建築様式を用いた荘厳な造りのものばかり。今回はそんな数あるノートルダム教会の中から、特に有名なものをえりすぐってご紹介します。

ゴシック様式の最高傑作・フランス・ランスのノートルダム大聖堂

まず初めにご紹介するのが、パリの北東に位置する古都・ランスにあるノートルダム大聖堂です。

「ランスのノートルダム大聖堂、サンレミ旧大修道院及びトー宮殿」という名前で、周辺の施設とともに世界遺産に登録されています。

荘厳な外観は見る者の心を奪うほどの美しさ。遠くで見ても近くで見ても迫力があります。現在の建物は、焼失後、13世紀初頭に建て替えられたときのものだそうです。建て替えには巨額の費用を必要としたため、結果的に税金という形で市民に負担がかかり、暴動が起きるなど紆余曲折、250年以上もの歳月を費やしてようやくすべて完成。そう考えるとより感慨深いものがあります。

建物の外観は、左右対称となる2つの塔を有したゴシック様式。円形の大きなバラ窓が品よく配置されています。この大聖堂の大きな特徴のひとつがステンドグラス。フランス画家マルク・シャガールによるステンドグラスは色鮮やかで個性的で、見る者の心を和ませてくれます。

外壁には2300体を超える彫像・彫刻が彫られ、文字の読めない人々にもわかるよう、聖書の世界を表現しているのだそうです。

天へとのびる神々しい姿・フランス・シャルトルのノートルダム大聖堂

パリの南西に位置するシャルトルという街にもノートルダム大聖堂があります。一般には「シャルトル大聖堂」と呼ばれることが多いですが、こちらも美しいゴシック様式の荘厳な教会です。また、こちらの大聖堂も世界遺産に登録されています。

建設が始まったのは12世紀半ばといわれていますが、途中で火災にあい、50年ほど経ってから建設再開。長い歳月をかけて建造されたこともあって、左右の塔の形(デザイン)が少し異なっています。右のほうがやや低く、左のほうが装飾がこまやか。左は16世紀に入ってから建てられたものなのだそうです。

こちらの大聖堂は、外観も美しいですが内部のステンドグラスが秀逸。「シャルトルブルー」と呼ばれる青く輝く光がバラ窓を通して差し込み、内部に幻想的な雰囲気を作り出しています。

天井の高さはおよそ36m。白い石造りの柱がすっくと伸びて、祈りをささげる人々を包み込むようです。

ベルギー最大のゴシック建築・アントワープのノートルダム大聖堂

アニメ「フランダースの犬」のラストシーンをご存じでしょうか。

画家を志す少年ネロが、どうしても見たかったルーベンスの絵(普段は布がかけられていて、お金を払わないとみることができない)。最終回、少しだけ風が吹いて布が浮き上がり、ネロは命尽きる前にルーベンスの絵を見ることができた、という悲しいシーン。涙を流した記憶をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

あの舞台となったのが、ベルギーの都市アントワープにあるノートルダム大聖堂です。実際にルーベンスの作品など、美術館さながらの絵画が収蔵されています。

建造されたのは14世紀中頃。その後、側廊や尖塔などが徐々に増築され、現在のような姿に。尖塔の高さは123mあり、周囲の建物と比べてもひときわ目立ちます。

日本語では「聖母大聖堂」という名称で紹介されることが多いです。

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