西洋にも東洋にもある神秘的なドラゴン神話の世界をご紹介
バジリスク(basilisk)
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バジリスク(またはバシリスク)は、ヨーロッパの想像上の生き物。蛇のような姿が一般的ですが、ニワトリのような姿をしたものや、トカゲやカエルのような姿をした形で描かれることも多いです。頭に冠のようなものをかぶっていることも。近世になって「コカトリス(ニワトリやトカゲやヘビをあわせたような伝説上の生き物)」と混同してしまった可能性も指摘されています。
「バジリスク」とはギリシア語で「小さな王」、ヘビたちの頂点に立つキングという意味なのだそうです。
起源はよくわかっていないようですが、古代ローマの古い書物にも登場しています。伝承では、バジリスクに見られると石化するか即死してしまうとか。コブラがモデルになっているのではないかという説や、ギリシア神話に登場する怪物「メデューサ」から来ているという説もあります。
ロールプレイングゲームではたびたび敵モンスターとして登場。バジリスクに睨まれて石化してしまった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
ヨルムンガンド(Jormungand)
「ヨルムンガンド」とは北欧神話に登場する毒を持つ大蛇。「イオルムンガンド」「ミドガルズオルム」と呼ばれることもあります。「ヨルムンガンド」とは「大地の杖」という意味を持つのだそうです。
この大蛇がどれくらい大きいかというと、人間界をぐるりと囲んで尾をくわえることができるほど。途方もない長さです。ほんの少し体をうねらせただけで大津波が起き、口から吐き出す猛毒には神々さえも恐れをなしていました。
神話の中ではたびたび、雷神トールとの戦いの様子が描かれています。
ファイアー・ドレイク(Fire Drake)
「ファイアー・ドレイク」は、ケルト人やデーン人(古代北西ヨーロッパおよび古代デンマーク)の古い伝承に残る怪物です。意味はその名の通り「火竜」。炎をまとい、空を飛び、口から火を吐き、あたり一面をまばゆく照らします。溶岩やマグマの中を泳ぐこともできるのだそうです。
ファイアー・ドレイクはおそらく、不可解な自然現象を表したものではないかと考えられています。おそらく、稲妻の閃光や流星群など空に不思議な現象が見えたとき、人々は「ファイアー・ドレイクが現れた」と思ったのでしょう。
ナーガ(Naga)
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「ナーガ」は、インド神話に由来する神聖な蛇。蛇神として崇められることもある神聖な存在です。姿は蛇そのもの。上半身が人間・下半身を蛇とする場合もありますが、基本的には蛇の姿。神話や伝承の中では、世界の下層部分にはたくさんのナーガが暮らしていると考えられています。
インダス文明の遺跡や遺構には、蛇の姿が数多く描かれているため、蛇は古くから信仰の対象となっていたと考えられていますが、ナーガがいつ頃誕生したか、詳しいことはよくわかっていません。
ナーガはお釈迦様が悟りを開くときに守護したとされ、仏教の世界では竜王として扱われ、仏の教えの守護神とされています。また、天候を左右する力を持ち、雨を降らせることもできるとか。仏教が中国に伝来した際、中国にもともとあった龍信仰と結びつき、ナーガ=龍というイメージが定着していったようです。
中国の龍
中国の神話や伝承には「龍」と呼ばれる想像上の生物がたくさん登場します。大きな口、鋭い目、鹿のような角を持ち、鱗で覆われた胴体は蛇のように長く、四つ足で鋭い爪を持ち、手には光る珠を持っている……建物の壁面彫刻や絵画などによく描かれている中国の龍の姿は、日本人にとっても非常になじみ深いものです。
中国の龍は、紀元前5000年頃には既に形作られていたと考えられており、新石器時代の遺跡でも龍の塑像が数多く見つかっています。起源は定かではありませんが、古くから信仰の対象となっていたようです。
仏教の伝来とともにインド神話のナーガと結びつき、地上に雨を降らす神として信仰されるようになります。時に邪悪なものとして描かれることもありますが、概ね神聖なものとして、皇帝の象徴にも使われてきました。現代でも中国寺などには龍の姿が描かれ、正月など伝統行事にも欠かせない存在となっています。
日本の龍
日本でも、龍と思しき文様が描かれた弥生時代の土器が見つかっており、2000年ほど前には龍信仰が行われていたと考えられています。時代が進むにつれ、龍の造形も洗練されてきて、屏風絵などのモチーフとして好んで描かれるようになっていきました。
日本の神社仏閣には、龍にまつわる伝説を持つものがたくさんあります。九頭龍や白龍、青龍、黒龍など、ところ変われば龍もそれぞれ様々。日本神話の中には、八頭の大蛇(やまたのおろち)のように人々を恐れさせ神様に退治される大蛇も登場しますが、神社に祀られている龍は、西洋のドラゴンとは少し異なり、水神として崇められ大切にされることが多いようです。