平安時代日本の歴史

リアルな女心が刺さる!枕草子の名場面を解説3選

「春はあけぼの…」「秋は夕暮れ…」 徒然草や方丈記と並ぶ三大随筆のひとつにして教科書にも出てくる、日本を代表する随筆といえば「枕草子」。平安時代に清少納言によって書かれた作品ですね。同時代の作品としては、やはり有名な紫式部の「源氏物語」があります。 そんな枕草子。時代を超えて今に残るくらいですから、それはそれはどんなに気高い内容なのか、と思いますよね。 しかし、蓋を開けて読んでみると、そのような期待は「いい意味で」裏切られます。実はその内容は親近感すら感じさせる、現代人にもわかるもの。特に女性が共感する作品に仕上がっています。では早速、その中身を見ていきたいと思います。

まずはおさらい!清少納言ってどんな人?

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まず、作者の清少納言がどんな人物であったのか、そこにフォーカスをしてみたいと思います。文学作品を書く清純派の女の子でしょうか?うーん、はてさて…。

1.そもそも本名は?

清少納言は、貴族であり、また著名な歌人でもあった清原元輔を父として生まれます。もっとも、「清少納言」という名前は本名ではなく、いわばペンネームのようなもの(「清」…清原氏の「清」、「少納言」…官位名になります)。ですから「せいしょう なごん」ではなく、「せい しょうなごん」が正しい読み方です。当時の平安貴族の女性たちは、本名を明かすことがありませんでした。実際は「清原諾子(なぎこ)」という名前であったと言われていますが、現代人の感覚からすると謎のベールに包まれているような感じもしますね。

2.開放的でバリバリとした性格、そして文才

清少納言は非常に才気にあふれ、活発な女性であったと伝えられています。例えば、貴族としての立場上距離があったとも言われる紫式部、彼女に言わせると清少納言はこんな評価。

「清少納言こそ、したり顔にいみじうはべりける人。さばかりさかしだち、真名書きちらしてはべるほども、よく見れば、まだいとたらぬこと多かり」

大まかな意味としては、「清少納言はできるような人間ぶって漢字を書き散らしてはいるが、よく見れば足りない点が多く見つかる…」といったところでしょうか。

「敵方」ゆえに評価は辛辣です。しかしこの文章から紫式部の「毒気」を抜き取ると、清少納言が今でいうところの「バリバリのキャリアウーマン」のような存在で、文章能力も紫式部の嫉妬を買うようなものであったことがわかります。

枕草子の醍醐味がわかる3つのポイントを解説!

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それでは、そんなバリキャリ作家・清少納言による「枕草子」の中から「ここぞ」という名場面・珍場面をご紹介していきたいと思います。

1.オトコを見る鋭い目!

まずは第60段。以下原文です。

「人はなほ、暁の有様こそ、をかしうもあるべけれ…」

訳すと、こんな風情になります。

「男というのは、明け方の別れのときの様子に、その真価が問われるものだ」

当時の平安貴族は、男が夜に女を訪ね、営みがあり、夜が明ける頃に再び出ることが慣例でした。いわゆる「夜這い」と呼ばれる慣習です。明け方になり、女の屋敷を出ていく男。それを見送る女…。この別れ際にこそ、男の真価が試されると清少納言は綴っているのです。試される男からすると、ヒヤリとさせられる観察眼ですね。

2.惨めな女心…

次は、第93段。以下原文です。

「…かならず来なむと思ふ人を、夜一夜起き明かし待ちて、暁がたに、いささかうち忘れて寝入りにけるに、烏のいと近く、かかと鳴くに、うち見あげたれば、昼になりにける、いみじうあさまし…」

訳すと、こんな具合になります。

「…絶対に私のところに来ると思っていた男を一晩中待っていて、明け方になって寝込んでしまい、やがてカラスの声で目覚めるも、もうお昼になってしまっていたときなどは呆然とする…」

これも男女の歌ですが、何ともやりきれない女性の心情が伝わってきますね。裏切られた期待とカラスの声という描写のマッチが絶妙で、これも彼女の観察力のなせる業でしょうか。

3.繊細な描写

最後はこちら。第151段。以下原文です。

「うつくしきもの。瓜にかきたる児(ちご)の顔…二つ三つばかりなる児の、急ぎてはひ来る道に、いと小さき塵(ちり)のありけるを目ざとに見つけて、いとをかしげなる指にとらへて、大人などに見せたる、いとうつくし…」

清少納言はこう綴っています。

「可愛らしいもの。瓜に描いてある幼い子どもの顔…2,3歳くらいの子どもが急いで這ってくる来る途中、小さな塵を目ざとく見つけ、指でつかんで大人などに見せている姿はとても可愛らしい…」

 これは目に浮かんでくるような情景ですね。清少納言は観察力に長けていると同時に、情景の描写が非常に巧みです。これは清少納言ではなくても、大方の女性は共感する場面ではないでしょうか。

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