ヨーロッパの歴史

「EU(欧州連合)」の仕組みとは?歴史や加盟国、問題点までわかりやすく解説

<EU加盟国>(2018年時点)
(1958年)フランス、イタリア、ドイツ(当時は西ドイツ)、
     ベルギー、ルクセンブルク、オランダ
(1973年)デンマーク、アイルランド、英国
(1981年)ギリシャ
(1986年)ポルトガル、スペイン
(1995年)オーストリア、フィンランド、スウェーデン
(2004年)キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、
     リトアニア、マルタ、ポーランド、スロバキア、スロベニア
(2007年)ブルガリア、ルーマニア
(2013年)クロアチア

首都はあるの?どの国がリーダーなの?

EUはヨーロッパ諸国の連合組織ですのでEUとしての「首都」は設置されていませんが、活動の拠点となる本部が置かれているのは、ベルギーのブリュッセルです。

ベルギーはフランス、ドイツ、オランダ、ルクセンブルクに囲まれた国で、EUの前身となった組織に加盟していた国の大半と隣接するという好立地にありました。加えてこの一帯は古くから、多くの国々の人々が行き交う交通の要所でもあり、連合の活動拠点を置くには持って来いの場所だったのです。また、各国の調和や協調を促す意図を持つ連合の拠点が、既に大都市として機能しているフランスや西ドイツの街では具合が悪かったのかもしれません。

現在でもブリュッセルは、食や芸術、文化の香り漂う街として観光客にも大変人気があります。

リーダー国についても、EUの原則は「加盟国はそれぞれ主権を持ち、その価値は等しい」となっているので、リーダー国や代表国というものは決められていません。

EUって要するにどんなことをやる組織なの?

EUに加盟している国には、いくつかのルールがあります。

まず、加盟国間であればパスポートなしで自由に行き来することが可能。働く場所も自由に選ぶことができるのです。ヨーロッパのように、いくつもの国が陸続きで繋がっている地域では、すぐ近くにある町なのに国外なのでパスポートが必要な場所。これが、経済や物流、雇用の妨げになっているのです。

次に品物やサービス、資本の移動の自由も定められています。具体的にいうと「関税」の撤廃。それぞれの国で得意とする専門分野の製品を、関税をかけることなく他国に売ることができれば、ヨーロッパ全体に様々な産業製品が行き渡ることになります。

仕上げに共通通貨のユーロを導入することで、商品や労働力をよりスムーズに。ドイツがマルクで、フランスがフランで互いに支払いをしていたころに比べると、ユーロへ移行したことによってお金のやり取りが格段にわかりやすくなりました。

EUはこうした基本的なルールを潤滑に実現させるために形成された組織なのです。

順風満帆ではない?EUが抱える問題点とは

image by iStockphoto

こうして見ると、いいことづくめのようにも思えるEUですが、問題点もたくさんあるようです。当初の目的のひとつであったユーロについても、28ヶ国中10ヶ国はまだ導入を選択していません。さらには、設立以来一度もなかった脱退国がついに……と、前途多難なEUが抱える問題点とは?いくつかポイントを絞って見ていきましょう。

ギリシャとアイルランドの経済状況

統一通貨や関税の撤廃などでオープンになったと思われたヨーロッパ経済でしたが、それぞれの国が抱える事情は様々でした。ギリシャやアイルランドの経済破綻は記憶に新しいところです。

特にギリシャは、加盟前から、ギリシャ自身も正確に認識できていないほど膨大な赤字を抱えていました。そこへユーロを導入したため、経済的に安定しているドイツなどの黒字国との間に大きな格差が生まれてしまったのです。

アイルランドも、バブル景気崩壊後の企業倒産や銀行の不良債権などが積み重なり、経済危機に陥っていました。2010年にEUやIMF(国際通貨基金)に支援を要請。各国からの資金提供も受けながら財政改革を行い、危機的状況は回避できたといわれています。

EUはあくまでも連合組織ですので、基本的な政治や経済はそれぞれの国の中でのやりくりが必要です。お財布事情は国によって異なります。お金がない国もあれば潤沢な国もあり、経済的に傾きかけた国を支援しあうのもEUの重要な役割です。

しかしふたを開けてみると、経済的な格差には想像を超えるものがありました。これが、黒字国の中に大きな不満や不平を生むことになります。

イギリスのEU離脱問題(ブレグジット:Brexit)

時代が進み、21世紀に入ると、EU結束当時には思いもよらなかった問題も出てきます。そのひとつが「移民問題」です。

移民とは、仕事や生活の場を求めて外国に移り住む人々のこと。労働力を確保したい国にとっても移民を受け入れるということは、ある種の経済政策にもつながります。しかし近年では、あまりに多くの移民がEU諸国に押し寄せ、負担が増大するなど数々の問題が起きているのです。

そんな中、EU加盟国の中心的存在であったイギリスが、EU離脱を表明します。移民の受け入れが増え、イギリス国民への税負担や失業率の増加などが懸念されるようになったことが主な理由です。当時の首相・キャメロン氏はEU支持派でしたが、高まる国民感情を抑える意図もあって、イギリスは2016年6月23日、EU離脱か残留か、国民投票に踏み切ります。

結果はご承知の通り、EU離脱派が僅差で上回り、イギリスのEU脱退が決定。俗にいう「ブレグジット/Brexit(Britainとexitを合わせた造語)です。離脱は2019年3月29日。離脱の効果はある程度の期間をおかなければ図れませんが、数年後、どのような状況に至るか注目が集まっています。

次のページを読む
1 2 3
Share: