イギリスヨーロッパの歴史

英海軍がスペインの無敵艦隊に勝利した「アルマダ海戦」を元予備校講師がわかりやすく解説

戦術面での影響

アルマダ海戦は、それまでの海戦の常識を大きく変える戦いとなりました。これまで、ヨーロッパでの大規模な海戦は、比較的波が穏やかな地中海で行われます。地中海での戦いはガレー船によるもので、敵艦の艦腹に、艦首の衝角(ラム)を突き立て穴をあける衝角攻撃や敵船に接舷して兵士を乗り込ませる接舷攻撃が主流でした。

これに対し、アルマダ海戦では衝角攻撃や接舷攻撃は機能せず、艦隊の大砲を打ち合う砲撃戦がメインとなります。それまで、補助的な役割だった砲手の地位が飛躍的に向上。火力や命中率が海戦の勝敗を左右するようになりました。

大砲の数や弾丸の飛距離が勝敗を分けるようになるとわかると、各国で大型艦載砲を装備したガレオン船が艦隊の主力となります。

その後のスペインとイングランド

戦いの後、スペインは直ちに艦隊を再建します。アルマダ海戦での敗北は、スペイン艦隊の滅亡に直結しませんでした。スペインはアルマダ海戦の敗北後も、大西洋地域での制海権を維持します。

しかし、圧倒的に有利なはずのスペイン艦隊がイングランド艦隊に翻弄されたことは、当時の人々にも大きな印象を与えたでしょう。

イングランドはスペイン艦隊の上陸を阻止することに成功します。しかし、その後の戦いで敗れ、一気に制海権を奪取することはできませんでした。

とはいえ、イングランドや女王エリザベス1世の威信が高まったことは確かです。その後、イングランドは国力を強め、新たに台頭したオランダに英蘭戦争で勝利。海洋帝国への道を歩みます。

アルマダ海戦後、借金大国となったスペイン

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多くの植民地を家書け、世界各地から銀を集めたスペインは、世界で最も華やかな国となりました。しかし、集めた金銀は戦争と宮廷文化に消え、スペイン王室は有力商人から資金を借りることで何とか国を運営します。獲得した金銀を国内産業の育成に回さず、戦争で消費してしまったスペインは、国内産業を発達させ経済力をつけたオランダ・イギリスとの競争に敗れ、没落しました。無敵艦隊の敗北よりも、経済戦争での敗北がスペインの衰退を決定づけたといえるでしょう。

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