小説・童話あらすじ

『戦争と平和』の著者「トルストイ」ってどんな人?ロシア人文豪の人生を解説

3-3素朴な生き方をするトルストイ

トルストイが1887年に感じていたことは、イマヌエル・カントの3つの哲学的問いでした。

・私が知ることのできるものは何か?

・私が知らなければならないものは何か?

・期待や希望を抱く権利があるのか?

というものです。

次第に素朴な生き方に惹かれるようになり、ロシア正教のあり方に疑問を持ちつつ「神と人類に奉仕する」説教者としての人生を始め、農作業に従事しつつ自身の生活を質素にします。後に「トルストイ主義」と呼ばれた宗教思想の原点となるも、妻との仲は冷え切ってしまい度々別居をしていたようです。

でも、作品を読んだ信奉者が、世界各国から彼の自宅を訪れていたとか。反政府運動の中で、暴力を否定していました。国家に対し印税や地代の拒否を試みたことから、1884年に家族と対立し初めての家出をしたのです。1904年の日露戦争でも、非暴力を訴え国家を批判しています。

ちょっと雑学

「トルストイ運動(1880年代に、トルストイの思想の影響により出現したロシア帝政末期に起った社会運動)」といえば、「マハトマ・ガンジー」は忘れられません。トルストイはガンジーと文通をしています。この文通に触発され、ガンジーは南アフリカに「トルストイ・ファーム」というコロニーを作っています。

警察、法律、軍など強制力を排除するべく否定するなどの活動をし、個々人の精神や相互扶助への自然な欲求も訴えており、アナキズムと多くの共通点を持つことから「平和主義アナキズム」にも影響を与えたといわれています。トルストイ運動家たちはキリスト教徒だと主張するも、残念ながら認められていません。

3-4トルストイの晩年

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1899年に雑誌への連載で、彼の3つ目の長編『復活』が発表されました。この小説は問題作で、「聖書を自分の見解で解釈し、正教を汚した」と誤認され、1901年にトルストイはロシア正教を破門され現在も解除されていません。その後で、戯曲『闇の力』などの文学作品を書くも欲求は満たされず、ソフィアとの仲も改善されないことで1910年にまたも家出をします。

鉄道に乗車中に悪寒を感じて小駅アスターポヴォで下車したのです。この家出中の11月20日に駅長官舎で肺炎により82歳で逝去します。彼の葬儀には1万人を超える参列者があり、ヤースナヤ・ポリャーナで埋葬されました。

妻ソフィアは世界三大悪妻の一人とされています。現実に目を向け13人の子供を育てるソフィアと宗教や社会活動に傾倒する男の生き方を通したトルストイとの、価値観が合わなかっただけで、誰も責められないのでは?ソフィアは生前に、「トルストイと結婚していなかったら、多分私はピアニストになっていたでしょう。」との言葉を残しています。結婚当初の10年間の愛に満ちた幸せな日々が、トルストイ以外の男性を愛させなかったとの彼女なりの愛のメッセージに思えませんか?

4.トルストイの二大作品をご紹介

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トルストイとドフトエフスキーはロシア文学の代表者とされています。ドフトエフスキーが人間の内面を奥深く追及する作風とすれば、トルストイは淡々と人々の日常を描き人々を作品の虜にしたといえるでしょう。それでは、トルストイの二大作品『戦争と平和』と『アンナ・カレーニナ』をご紹介します。

4-1『戦争と平和』

昂然たる歴史的背景と人々の人生が織り成す長編小説です。1865~1869年にかけて書かれ、トルストイが41歳のときに完成しました。この作品は『ロシア報知』という雑誌に掲載され紹介されています。

愛と死と新たな愛の芽生えを繰り返すロマンス的な要素を柱とし、宮廷を取り巻く貴族社会とナポレオンのロシア遠征という史実を盛り込んだ、読み応えのある一冊。この時代に生きる人々だからこそ味わう、愛と嫉妬・野心と虚栄など、人々の人生の儚さと愛の強さを感じられる躍動感あふれる不朽の名作です。

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4-2『アンナ・カレーニナ』

トルストイが描く古典的作品の最高傑作として、高い評価を受ける長編小説です。美貌の人妻アンナの強烈な個性に振り回されるリアリズムを、疑似体験しながら読むのに面白い一冊。1873年~1875年にかけ書かれ、『戦争と平和』と同じく『ロシア報知』という雑誌に掲載されています。

主人公のアンナは、政府高官の夫との愛のない生活による倦怠感に苛まれていました。その一方で誰もが憧れる美貌で社交界の華として、人々を引き寄せる存在だったのです。そんなときに、青年将校と運命的な出会いをし、お互いに惹かれあいます。誰もが憧れる優雅な生活と社交界を捨て、本物の愛を信じて生きていこうと決意するアンナ…。トルストイの描く、ラブストーリーをぜひ。

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