古代中国文明の源となった「黄河文明」を元予備校講師がわかりやすく解説
文明成立の背景
古代文明は、世界各地に存在しましたが、いずれの文明も自然条件を抜きに語ることはできません。黄河文明や長江文明を理解するためには、東アジア全体の自然環境や黄河・長江の特色を知る必要があります。古代の人々は自然条件にうまく適応して農業を行い、国家を作り上げました。文明成立の背景について探ってみましょう。
アジアの区分と東アジアの風土
ユーラシア大陸は、ウラル山脈を境にヨーロッパとアジアに区分されます。アジアは、自然環境や気候・文化などにより5つに区分することが可能ですね。
砂漠の乾燥地帯中心となる西アジア、シベリアなどの森林やモンゴルの草原を中心とする北アジア、インドやスリランカなどの南アジア、中国とインドに挟まれた熱帯の東南アジア、そして、中国や朝鮮半島、日本などを中心とする東アジアの5つです。
東アジアは、稲作や畑作が非常に盛んで世界的に見ても人口が多い地域となりました。なかでも、年間降水量1000ミリのラインより北は小麦を中心とする畑作が、南は米を中心とする稲作が盛んにおこなわれます。黄河文明は畑作中心の、長江文明は稲作中心の文明となりますね。
黄河文明を生み出した黄河
黄河は、青海省中部を源とし、黄土高原を経て渤海に注ぐ大河。全長は約5,464キロメートル。中国で二番目に長い河川です。中国において「河」といえば、黄河のことを表しました。
黄河は黄土高原を貫流するため、多数の泥砂を含みます。そのため、黄河の水は名前の通り黄色く濁っていますよ。黄河のもたらす大量の泥砂は、中流・下流の河底に堆積し、黄河の河床を上昇させました。河底が上昇すると、河が氾濫しやすくなります。
黄河は一度氾濫すると手が付けられないほどの洪水を引き起こしました。古来、中国では黄河を治めた者が天下を治めるといわれるほど、治水管理が難しい河川なのです。それでも、人々が黄河流域に住み続けたのは、黄河が運ぶ黄土に豊富な栄養分が含まれていたからでした。
氾濫が終わると、黄河流域には豊かな黄土が残されます。人々は、黄土を利用して小麦などの作物を生産しました。黄河は災いと恵を同時にもたらす河川だったのです。
長江文明を生み出した長江
中国で最も長大な河川は長江です。上流部の別名は金沙江、下流部の別名は揚子江といいますね。中国で「江」といえば、長江をさしました。黄河と並び称される河川です。特に、長江下流域は江東とよばれました。
長江の流域は豊富な降水量を生かした稲作が盛んです。豊富な生産量を背景に、長江下流域には地方政権の首都がおかれました。政治の中心が黄河など華北地方に置かれることが多かったのに対し、経済は長江を中心とする華中で発達します。稲作が発展した長江南岸の湿潤な地域は江南とも呼ばれました。
長江流域の最大の特徴は降水量が多いこと。交通は船による移動が中心となります。馬が中心の華北と比較され、「南船北馬」ともいわれました。一度、中国が南北に分かれると、船での戦いが不得意な華北の勢力が、江東・江南といった地域を征服するのは容易ではありません。
農業の発展と国家の成立
中国で、黄河文明や長江文明が花開いていたころ、世界でも大河川沿いに古代文明が発生していました。ティグリス=ユーフラテス川流域のメソポタミア文明やナイル川流域のエジプト文明などが典型的ですね。
農業に大河川の水を利用することができれば、広大な農地を獲得することができ、食料の生産は増大するはずです。そこで、人々は大河の流域に集まって住み始めました。集住した人々を率いるリーダーは、人々を組織して堤防や用水路を建設します。
人々を率い、大事業を行うリーダーはやがて、王となりました。また、神に仕える神官などの専門職が生まれます。こうした専門的な階級は、やがて、世襲されるようになりました。王や神官になれない一般の人々との間で身分の差が広がります。
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黄河文明と長江文明の特色
紀元前5000年頃、黄河中流域に仰韶文化が誕生しました。金属を持たない石器文化でしたが、のちの文化にも通じる重要な文化です。同じころ、長江流域に河姆渡文化が生まれました。河姆渡文化は仰韶文化に比べると比較的最近になって注目されるようになった文化です。これらの文化が発展し、古代中国文明が誕生したといってよいでしょう。
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