- サブプライムローン問題とリーマンショックの関係とは
- サブプライムローン問題に端を発した金融構造問題は解決していない
- サブプライムローンは何が問題だったのか
- 焦げ付き覚悟で住宅ローン貸付がおこなわれた
- サブプライムローンを利用した証券化商品という錬金術
- 格付会社の信用力を利用して実質的にサブプライムローン債権を売っていた
- 不動産価格の上昇が止まってサブプライムローン問題が表面化
- 劣化した証券化商品
- 商品化商品は世界中で売られ、破綻の影響は世界規模で経済を破壊した
- サブプライムローンの問題点とは
- 不動産価格の上昇をあてにした住宅ローン
- それは日本の不動産価格のバブル化と同じ構造
- サブプライムローンを利用した証券化の破綻と現代社会
- サブプライムローンは氷山の一角で金融経済の構造問題は解決していない
この記事の目次
サブプライムローン問題とリーマンショックの関係とは
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21世紀に入って、それまで順調に急拡大してきた金融経済は、金融派生商品という現代の錬金術の行き詰まりによって不安定化します。その最大の不安定要素といわれたのがサブプライムローンの不良債権化問題(サブプライムローン問題)でした。このサブプライムローンの不良債権化によって金融経済は一気に崩壊の危機を迎えたのです。
2006年ころからサブプライムローン問題が表面化した結果、2009年には米国の大手金融機関であったリーマン・ブラザース社が破綻して一気に金融経済は崩壊してしまいました。それは、現代の錬金術といえる金融派生商品を生んだサブプライムローンが行き詰まったことによるものだったのです。
サブプライムローン問題に端を発した金融構造問題は解決していない
そして、このサブプライムローンに端を発した金融経済の金融派生商品によるいびつな金融構造は現在でも生き残っているのです。すなわち、経済に金融経済というバブルをもたらした金融派生商品の仕組みは今も生き残っており、企業の生産を主とする実体経済からは未だに大きな乖離を示しています。そのため、いつまた爆発を起こすかわからない状況にあるといえるのです。
現在では、新型コロナウイルスによって経済活動全体が停滞しています。しかし、それが解決してもこのようなサブプライムローン構造の残る現代は、さらに経済を崩壊に導く時限爆弾を抱えた状態にあるといえるでしょう。
そのきっかけとして最初の金融経済の崩壊に導いたサブプライムローンについて解説します。
サブプライムローンは何が問題だったのか
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サブプライムローンは、単純にわかりやすく言えば、アメリカでおこなわれていた低所得者向けの住宅ローンのことをいいます。1990年代後半のアメリカでは、長期にわたっていた景気停滞がIT産業などの台頭によってようやく脱することができ、それにともなって不動産バブルが生じていました。
また、金利も低下しており、低所得者にとっては金利はほかよりも高くても住宅を購入できるチャンスになっていたのです。
焦げ付き覚悟で住宅ローン貸付がおこなわれた
それに目をつけたアメリカの貯蓄銀行などは、住宅ローンの返済力がなくても、住宅物件の価格が上昇していれば、貸付資金を回収できると積極的に融資をおこなっていました。ちょうど、日本のバブルと似たような構造になっていたのです。
しかし、アメリカの貯蓄銀行はサブプライムローンを提供できるほど資金はありません。これらの金融機関にお金を提供したのが、アメリカのリーマン・ブラザースなどの証券業を中心とした大手金融機関でした。投資銀行と言って、多くの投資家からお金を集めて、その資金を中小の貯蓄銀行に資金提供をしたのです。
しかし、その投資案件を提供する方法が問題でした。もともとサブプライムローンは、低所得者に提供される不動産を担保とした住宅ローンで過大な返済を強いるため、従来から延滞債権になりやすい融資だったのです。それでも不動産価格が上昇していれば、融資資金を回収できる可能性がありましたが、非常にリスクの高いローンといえました。
そのため、それらを集めて担保にしてもリスクが高いため、投資家の資金を引き出すことはできません。そこで、考え出されたのが、債権流動化手法といわれる証券化をおこなう投資商品でした。
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サブプライムローンを利用した証券化商品という錬金術
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この債権流動化手法は、高所得者向けローンと劣後債権といわれるサブプライムローンを組合わせて、そこから将来的に得られる元利返済金を担保として証券を発行するものです。
債権そのものを担保にするのではなく、将来に生まれてくる資金を担保にしていました。主に銀行、証券会社などの機関投資家を対象に販売され、それらの機関投資家はさらには個人にも販売していたのです。
このさまざまなローン債権を組み合わせたものから将来的に得られる元利金は、延滞予測率と返済予定率などを数学的な予測手法によって導き出され、投資家にはわかりません。したがって、そのままでは投資家に売ることはできません。
そこで、それらの計算方式に妥当性があるかを検証して債権に格付をおこなったのが、S&P、ムーディーズといった有名格付会社でした。しかし、それはあくまで数学的な予測の妥当性であり、実際に大きく景気が変動したケースは織り込まれていなかったのです。
格付会社の信用力を利用して実質的にサブプライムローン債権を売っていた
それでも、大手金融機関は有力格付会社の信用力を利用して金融派生商品として、実質的にサブプライムローンを売っていました。世界の投資家たちは、証券化された投資案件の中身がわからないまま、著名な格付会社がトリプルAを付けているということで投資をおこなったのです。当時は、オイルマネーをはじめ、世界の金融市場では資金が有り余っていたのもその背景になりました。
このサブプライムローンを元にした証券化債権は日本の金融機関などでも巨額の資金が流入し、購入していたのです。
不動産価格の上昇が止まってサブプライムローン問題が表面化
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しかし、2006年頃から米国景気にブレーキがかかります。株価は大きく上昇してバブルの可能性がささやかれるようになると、アメリカの中央銀行(日本の日本銀行に該当)であるFRB(フェデラルバンク)は金利を引き上げたのです。そのため、アメリカの景気は下降局面に入り、株式市場は下落し、失業率も上昇しました。そうなると、一番最初に失業するのは、パート収入などに頼る低所得者層であり、当然サブプライムローンの延滞率も上昇します。しかも、不動産価格にもブレーキがかかったために、証券化された金融派生商品の資金の回収も滞るようになったのです。
サブプライムローンの資金回収がうまくできなくなると、当然金融派生商品として販売されていた証券化商品も債権内容が悪化します。それまでのように配当をおこなうことが難しくなっていきました。
そのため、アメリカでは、サブプライムローンを元にした証券化商品に対する不安、懸念が表面化し、それらに対して投資した投資家は資金を引き揚げるようになったのです。