日本の歴史江戸時代

『南総里見八犬伝』をわかりやすく解説!江戸時代の文豪「滝沢馬琴」が28年情熱を傾けた長編小説

伏姫

伏姫は、女神となった後も、神秘的な存在としてさまざまな場面に登場し、神力と神薬で八犬士たちを助けます。神隠しに遭った親兵衛を育てたり、悪女玉梓が化けた妙椿狸の浜路姫誘拐事件で助けたりと、ストーリーを円滑に運ぶためのフォロー的な役割も担っているのです。

後半の対両管領連合軍戦で、信乃や現八らの軍が危機に陥ったとき、猪たちが現れ敵を蹴散らす働きもやってのけます。

親兵衛が富山をでたときに持たせた、神薬は万能薬で傷や打撲などに即効薬として絶大な効果をもたらすのです。

八房

八犬伝のスタートを担う犬。百姓の家に誕生し、母犬は生後7日で食われてしまいます。悪女玉梓が化けた狸に育てられ、巨大犬に成長しました。里見義実の大敵安西景連の首を取り、約束通り義実の娘伏姫と結婚します。

娘を取り戻そうとする義実の命を受けた、金碗大輔(出家しゝ大法師となる)に射殺されました。その後は、神犬となり、女神(伏姫)と共に、里見家や八犬士の危機に度々登場します。

4.『南総里見八犬伝』のあらすじ

八犬伝に登場する人物は400人以上いますが、途中で行方不明となる人物はおらず、馬琴の文章構成能力の高さを感じられる作品です。馬琴の政治思想や処世観、芸術的知識なども盛り込んでいます。戦乱の最中での暮らしと密接した、人々の見えない結びつきにおける照応的描写も見どころでしょう。発端から大団円に至るまで、意表を突く奇想天外の説話が整然と描かれているのも、日本の古典小説では希少価値が高いといわれています。

IMAGE

南総里見八犬伝 第九輯(1) (国立図書館コレクション)

Amazonで見る
Amazonで詳しく見る

4-1八つの珠の誕生

関東管領の足利持氏が、幕府に蜂起するが負け自害します。彼の家来だった里見季基(さとみすえもと)は、息子の義実(よしみ)と共に恩に報いようと意を決するも大敗。再興を信じ義実は逃がされ、南総安房で領主となります。

安房朝夷の安西景連に攻められ危機に陥ったのです。伏姫と仲良く暮らす黒い8つの痣を持つ大型犬「八房(やつふさ)」に、義実が愚痴交じりに「景連の首を取ってきたら、伏姫を嫁にやるぞ。」と語りました。伏姫が大好きだった八房は、景連の首をくわえて帰ってきたのです。

約束通り伏姫との結婚を許され、安房富山の洞窟に住みます。伏姫が唱える法華経を聞くうちに、八房の情欲も失せますが、姫の腹が妊婦のように膨らんだのです。犬から娘を取り戻そうと、追っ手を差し向け発砲。八房は死に伏姫は怪我をしました。

伏姫は、「犬の気」で子を宿したと誤解し自分を恥じます。身の潔白を証明するかの如く、守り刀で自らの腹を切り裂きました。白い気が閃きでて、首の数珠を包んで天に上り、数珠はバラバラに。8つの珠が空に留まり煌めき、燦然と光を放ち流れ星のように飛び散ったのです。

4-2八犬士の誕生

関東で、体に牡丹のような痣と文字が浮き出る珠を持った子どもが誕生します。彼らには、「犬」で始まる名前が付けられたのです。彼らは、珠の因縁に導かれるままに出会い、ときには主従関係に。ときには敵味方で戦うことも…。

犬という名前に痣と珠という共通点を持つ、仲間を探す旅が始まります。集まるうちに互いに助け合い、共通の敵を倒すうちに結束しました。一端バラバラになった仲間は、再会を果たし因縁を感じます。伏姫を霊母とする「八犬士」が揃ったのです。

4-3里見家の繁栄と八犬士のその後

代が変わり義実の息子義也(よしなり・伏姫の弟)が領主となりました。里見家は繁栄しており、上総国から下総国(千葉県中央部から中北部)に渡る広域を収めます。近隣国が攻めてこようと、八犬士がいれば怖いもの無しだったのです。義也は、八犬士に褒美としてそれぞれに城と受領の位を与え、8人の姫君を嫁がせました。

十数年のときが経ち、義通の時代をへて4代実尭(さねたか)が領主になると、8人の体の痣と珠の文字が不思議と消滅したのです。8つの珠は国の四隅に守護として埋められ、八犬士たちは富山の頂上の観音堂で隠居生活を始めます。

更に20年後に、里見家に反乱がおこると察した八犬士は、子孫に他郷へ移れと言い残し、仙人と化し姿を消しました。4代5代と里見家ではお家騒動が続き、残念ながら十代目にして滅亡しています。

 

『南総里見八犬伝』は、勧善懲悪のストーリーに「スカッと!」すること請け合いの長編スペクタル!

里見八犬士終焉の地.jpg
Koda6029投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

珠に導かれ集まった犬士は正義で、管領方の領主は彼らと宿怨があり、犬士たちを虐げる管領側は悪の温床といえるでしょう。怨霊や呪術、妖怪変化など、飛躍する馬琴の見事な想像力の結晶といっても過言ではありません。これを機に、ぜひ読んでみてくださいね!

1 2 3 4
Share: