2-2作家として成功する馬琴
24歳で流行の最先端を走る作家「山東京伝(さんとうきょうでん)」に入門しました。その後、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)にも仕えます。京伝も蔦屋も共に馬琴の才能を認めており、2人の勧めから処女作黄表紙『尽用而二分狂言』を発表しました。ここから馬琴の約50年に渡る、作家人生が始まります。
享和3(1803)年の『復讐・月氷奇縁(げつぴょうきえん)』の発表から、本格的な長編読本に執着しました。文化11(1814)年の馬琴48歳のときに刊行した『八犬伝』は、上田秋成の『雨月物語』と並び、江戸時代戯作文芸の代表作とされています。
2-3晩年の馬琴
『八犬伝』の執筆途中に失明に近い状態になりますが、38歳で逝去した息子の嫁「お路」に代筆を頼み完成させたことは有名です。彼女の力添えがあればこそ、世界に誇る大作が完成したのは事実でしょう。その裏には、若いお路に口述筆記をさせることに、妻のお百が嫉妬し家をでてしまいます。
馬琴が1月に『南総里見八犬伝』を書き終えた、同年6月に老中水野忠邦により、出版の弾圧が行われました。流石に馬琴も執筆を休み、忠邦失脚と同時に口述筆記を再開しています。
嘉永元(1848)年11月6日に、胸痛と喘息を患っていた馬琴は82年の人生を終え、小石川の深光寺に葬られました。最後に書いていた『近世説美少年録』の題を改めた続編、『新局玉石童子訓』は、残念ながら未完のままです。
3.登場する主要キャラクター
Utagawa Kunisada II (Japan, 1823-1880) – Image: http://collections.lacma.org/sites/default/files/remote_images/piction/ma-1330696-O3.jpg Gallery: http://collections.lacma.org/node/213133 archive copy, パブリック・ドメイン, リンクによる
戦闘ヒーローのような八犬士たちの活躍が、この物語の最大の魅力。主人公が8人もいて、ややこしいかも。超長編だけあり、荒唐無稽な部分や都合主義的なものもありますが、主要人物を知れば読みやすくなること間違いなし!また、8つの珠に浮かぶ文字に込められた、儒教精神の高潔さにも注目したいところです。
犬江親兵衛仁(いぬえしんべえまさし)
最年少の犬士で、後半の主人公です。4歳のときに神隠しに遭い、伏姫神の庇護のもと富山で育ちます。再登場は、暴漢に襲われる義実を助けるシーンで、スーパーマンのような神童に成長しているのも面白いところ。
仁…儒教の基本理念。人を慈しみ、思いやる精神。
犬川荘助義任(いぬかわそうすけよしとう)
伊豆北条生まれで、親と早くに死に別れ、子どものころは不幸の連続。八犬士一の苦労人です。義兄弟となる信乃と出会い、自分の背負った宿命を知らされます。
蟇六夫婦が陣代簸上宮六らに殺された仇を打つも、主人殺しの罪を着せられて処刑されそうになり、信乃、現八、小文吾に救われました。前半のターニングポイント「荒芽山始末」で、5人の犬士が集まるも再びちりぢりに。
義…道理。人間としての正しい道筋。
犬村大角礼儀(いぬむらだいかくまさのり)
八犬士唯一の妻帯者。随一のインテリで、日に1度聖典を読み、古今の書物にも精通しています。父を殺した上に成りすました化け猫が虐げるも、親を大切にする姿は、彼が真面目で優しい人物だけに涙なしに語れません。悪女の代表格、船虫が継母となるも、我が妻を死なせた彼女と偶然に遭い処刑します。
後半では、対両管領連合軍の水軍を壊滅させ、鎌倉を落として三浦半島地方の征服において大活躍しました。
礼…人道。社会秩序を守るための礼儀。