労働者たちの不満と機械打ちこわし(ラッダイト)運動
機械の導入は生産効率をアップさせ、生産量を増大させました。その一方、それまで人間の手によって作り出されていたものが、機械に取って代わられることにより失業する労働者も現れます。
失業した、あるいは今後失業する恐れのある労働者達は機械の登場で不安になり、機械を憎みました。その結果、労働者たちは工場にある機械を破壊する動きを起こします。この運動を、ラッダイト運動と言いました。ラッダイト運動の名称が何に由来するかは不明ですが、1779年に起きた機械破壊事件の指導者ネッド=ラッドに由来するという説が有力ですね。
アークライト、ハーグリヴズ、カートライトはいずれもラッダイト運動によって工場を襲撃されました。ラッダイト運動は1810年ころにピークに達し、全国各地で発生します。しかし、ラッダイト運動を行った労働者達は、それ以上の展望を持っていなかったので、運動は次第に下火になりました。
産業革命の進展と労働問題の発生
産業革命が進展すると、資本を蓄積する資本家と資本家の作った工場で働く労働者という二つの階層が誕生しました。産業革命の初期、労働者は劣悪な環境での労働を強いられ、社会問題化します。19世紀初頭、資本主義の考え方を否定し労働者の開放を目指す社会主義思想が生まれました。
資本家と労働者という二つの階層の誕生
産業革命の進展により、社会に二つの階層が生まれました。一つは、工場や資源、資金などの生産手段である資本を所有する資本家。イギリスでは、地主や独立自営農民の一部が資本家となりました。もう一つは、資本家に労働力を提供し賃金を得る労働者です。
資本家は、工場で労働者に働いてもらうことで商品を生産・販売しました。労働者は労働力を提供する見返りとして賃金を得ました。資本家と労働者が経済の中心となる社会のことを資本主義社会といいます。
資本家は、商品を販売した代金から労働者に支払う賃金や原材料の購入費、輸送費などの経費を差し引いた残りを利潤として受け取りました。資本家は様々な手段で収益を上げ、利潤を最大にしようとします。
労働問題や社会問題の発生
資本家が利潤を最大化するためには、どうすればよいでしょうか。原材料費を安くすることができれば、利潤を増やすことができるかもしれません。しかし、品質が落ちる可能性もあるでしょう。価格を上昇させると利潤を増やせます。とはいえ、高すぎる商品は買ってもらえません。
原材料費を削減せず、商品価格も上昇させないで利潤を増やすには、労働者への賃金(人件費)を低く抑えるのが最も簡単です。実際、産業革命時代の労働者は低賃金・長時間労働が当たり前でした。中には一日19時間の労働を強いられた労働者もいます。少年や女性を雇用することで賃金を安くしようとする資本家もいました。
都市には低賃金労働者たちがあふれ、イギリスの首都ロンドンでは劣悪な住環境のスラムが生まれます。道路はごみであふれ、汚物が十分に処理されず悪臭が漂いました。個人の力で労働者が資本家や投資家に立ち向かうのは非常に困難な時代だったでしょう。
社会主義思想の芽生え
苦しい労働者の生活を見かねて、労働者の環境改善を図る考えが生まれます。ついには、資本主義社会を否定的にとらえ、労働者を解放しようという思想が生まれました。これが、社会主義の始まりだといってよいでしょう。
産業革命が始まった当初、イギリスやフランスを中心に空想的社会主義とのちに呼ばれる考えが生まれます。ロバート=オーウェンやサン=シモン、フーリエらが中心となりました。彼らは資本主義の改良を行う中で労働者の解放を実現しようとしたため、おのずと限界がありました。
19世紀中ごろになると、マルクスやエンゲルスが資本主義社会の克服や労働者の解放を行うための革命を目指します。マルクスらは自分たちの運動は空想的社会主義とはことなり、実践を伴う思想運動であるとして、科学的社会主義と称しました。
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ラッダイト運動は資本家と労働者の対立をもっともわかりやすくあらわしたもの
Chris Sunde; original uploader was Christopher Sunde at en.wikipedia. – Original unknown, this version from http://www.learnhistory.org.uk/cpp/luddites.htm (archive), パブリック・ドメイン, リンクによる
ラッダイト運動は、日本語訳の機械打ちこわし運動の役通り、資本家が持つ機械を労働者が破壊するものでした。資本家と労働者の利害は根本的に対立します。とはいえ、生産手段を独占する資本家は強敵。機械を壊す程度では立ち向かえませんでした。労働者はラッダイト運動のような手段から、労働者の解放を目指す社会主義革命へと運動の方向性をシフトさせ、資本家との対立に勝利しようとします。