J・R・R・トールキンの『指輪物語』を解説!善と悪の狭間で人間は誘惑に勝てるのか?
2-2メディアの力で世界的ブームとなる
この時期のイギリス文学では珍しく、女性とのことが書かれていません。トールキンはラジオで、「戦争や戦いの物語だから。」と当たり前のように語ったようです。ラジオドラマも作られており、アメリカでも出版を機に大学生を中心にブレイクし世界的に有名な小説になりました。ベトナム戦争中のアメリカでは、若者たちの間で社会現象を起こします。戦争反対のプラカードに「ガンダルフを大統領に!」と書かれ、反戦のシンボルマークとしても使われました。
1997年の『ハリー・ポッター』などのファンタジーブームに加え、2001年の映画公開と共にかつての「トールキンファン」が大人になり新しい目線でのファンとなったこともあり再び注目されます。
トールキンは、色々な物語を書いており、その中でも中つ国の歴史や神話をテーマにしたものを集めた『シルマリル物語』が、彼の死から4年後に息子のクリストファーにより発表されました。物語としては面白みに欠けますが、資料集としては最高だといわれています。
3.『指輪物語』のあらすじ
『指輪物語』は3部作で構成されています。“「一つの指輪」をはめた者は、指輪の影響を受け、最後には支配される。“という、指輪の誘惑に打ち勝ち破壊することができるのか?それでは、あらすじを簡単にご紹介します。
新版 指輪物語〈1〉旅の仲間 上1 (評論社文庫)
Amazonで見る全ての発端を説明する、冒頭の詩
三つの指輪は空の下なるエルフの王に、
七つの指輪は岩の館のドワーフの君に、
九つは、死すべき定めの人の子に、
一つは、暗き御座の冥王のため、
影横たわるモルドールの国に。
一つの指輪はすべてを統べ、
一つの指輪はすべてを見つけ、
一つの指輪はすべてを捕えて、
くらやみの中につなぎとめる。
影横たわるモルドールの国に。
3-1「旅の仲間」のあらすじ
『ホビットの冒険』の中で、ビルボがこっそり持ち出した指輪は、力の指輪を支配する冥王サウロンの魔力が宿った「一つの指輪」だったのです。「一つの指輪」は、中つ国の支配者となり、自分の力で操り、権力を誇示したいという、サウロンの欲望から作られました。魔法使いのガンダルフは、ビルボから指輪を取り上げ、彼の甥で養子のフロドに指輪を託します。
サムとメリーとピピンの3人のホビット仲間を連れ、フロドは平穏なホビット庄から旅に出ました。冥王サウロンによってモルドールから放たれた、黒の乗手に危険な目にあわされるも、人間の王の血を引く野伏のアラゴルンに救われ無事安全な裂け谷へと辿り着いたのです。
そこで、エルフ王エルロンドによる会議で、指輪を消滅させることに決定します。指輪を消滅させるには、滅びの山の火口に指輪を投げ込むしかありません。滅びの山があるモルドールへの道のりは、危険を伴う上に指輪の誘惑に負けない無欲の運び手が必要でした。運び手にはフロドが選ばれ、彼を援助する仲間も決まり「旅の仲間」が結成されました。
3-2「二つの塔」のあらすじ
ガンダルフの導きでモリアの地下トンネルを通ります。恐ろしい地底の霊バルログから一行を助けるために戦い、灰色のガンダルフは犠牲になりました。一行の中から裏切り者が出ます。ボロミアです。彼は、敵を倒すために指輪の力を借りたいと、魔力に負けてしまいました。元々善良なボロミアは、オークに襲われたピピンとメリーを助けるため死んでしまいます。
その後連れ去られたピピンとメリーを救い出すため、フロドとサム以外の者は西に進みました。一方、「いとしいしと」と指輪を呼び奪おうと狙うゴクリが、後をつけていました。フロドとサムは任務を果たすため、上手い言葉を使い騙すゴクリを危険と知りながらも、滅びの山への案内人として旅を続けます。良心が残るゴクリは、フロドから指輪を奪うことができません。
オークから逃げたピピンとメリーは、ファンゴルンの森で迷うも森の守護者「エントの木の鬚」と出会います。エントはサルマンの砦アイゼンガドルを攻撃し占拠しました。そこで、ピピンとメリーは助けに来ていた仲間と、一回死ぬも白のガンダルフとして蘇った魔法使いのガンダルフと再会します。
3-3「王の帰還」のあらすじ
ガンダルフはローハンの老国王セオデンの病を治します。ここで、サウロンの召使「ヘビの舌」の陰謀を知りました。ガンダルフ一行は、セオデン軍と共にサルマンの影響を受け恐怖の場となった、ミナス・ティリスに救援のため進軍します。旅の仲間のアラゴルンとレゴラス、ギムリは、死んだ戦士たちの霊との戦いを挑むために死者の道に進みました。
仲間たちが苦戦する中、フロドは滅びの山の火口に到着します。ここで、フロドは指輪の魔力に負けますが、ゴクリの裏切りが好転し、結果指輪の消滅に成功しました。指輪が消滅すると同時に、サウロンの王国は崩壊します。そして、荒廃した土地が浄化され人間による支配がはじまります。119歳のビルボの誕生日に、サルマンがホビット庄に現れます。水辺の村での戦いで負けたサルマンは、「蛇の舌グリマ」の裏切りにより死に、指輪戦争が完結しました。
最後の船は海を越え、エルフの衰退へと向かう不死の国へと向かいます。この船には、中つ国を必要としなくなったエルフ達とガンダルフ、指輪の所持者となっていたビルボとフロドも乗りました。このシーンで、サムがフロドとの別れを寂しがる姿は、強い友情を感じられとても印象的です。その後サムは、ホビット庄で妻のロージーと幸せに暮らします。