飛鳥寺(本元興寺)の見どころを解説
奈良時代初めに二つに分かれてしまった飛鳥寺。見どころを紹介するとなれば、やはり双方の寺の文化財をチョイスしなければなりません。まずは飛鳥の本元興寺から解説してみたいと思います。
本尊飛鳥大仏(釈迦如来像)
年代がわかる現存の仏像では日本最古のものといわれていますね。日本書紀には仏師鞍作鳥(くらつくりのとり)によって作られたとされており、高さは約4.8メートルあります。
鞍作鳥は、飛鳥時代に活躍した仏師として有名で、中国あるいは朝鮮半島から渡ってきた金属製品を作る渡来人の一族でした。完成した大仏を飛鳥寺の金堂に入れようとしたところ、扉よりも大仏の方が大きいためにどうしても入りません。強引に扉を壊して中に入れようという案もあったのですが、鞍作鳥の工夫によって、いっさい扉を壊さずに大仏を中に入れることができました。その褒美として、近江国坂田郡に水田を賜ったという話が記されていますね。
また飛鳥大仏は、幾たびかの火災により堂が消失してからは長い間風雨に晒されてきたため、鋳造当初からだとされている部分は、頭部の額から下、鼻から上の部分と、右手の第2から第4指だけで、他の部分は後世の鋳直しと考えられています。
飛鳥資料館
飛鳥資料館の敷地内へ入ると、そこはもう飛鳥ワールド!庭園には猿石や亀石が並び、明日香村にある古墳を移築展示しています。また高松塚古墳の石室も復元展示していますね。
また飛鳥寺から発掘された遺物や模型の展示も常設されています。定期的に特別展示もされていて、最新の発掘調査結果の成果発表や普段は非公開の出土品などの展示も行っていますね。
飛鳥寺(元興寺)の見どころを解説
いっぽうこちらは、平城京遷都の際に移転した飛鳥寺(元興寺)の見どころのご紹介です。飛鳥の本元興寺のように伽藍が全てなくなった状態ではありませんので、おすすめスポットがたくさんあります。
飛鳥時代に創建された当時の部材が見られる!
極楽堂西側及び禅室の南側東寄りに葺いてある数千枚の瓦は、創建時そのままの飛鳥時代のものが残っています。また当時の瓦を焼いた窯の焼成温度が低かったため、赤みや黒みを帯びていて、まさにモザイク模様のように見えますね。
極楽堂内部には、方形の柱で区切られた一画があり、奈良時代末の僧智光が住んでいたという一房がそのまま遺されているのだそうです。
また通常非公開の禅室の屋根裏には、各時代の部材が使われています。東側の部屋で使われている横木の頭貫という部材は最も時代が古くて、おそらく飛鳥時代のものなのでは?とのこと。普段から公開されているわけではなく、季節や時期によって特別公開されていますので、元興寺のウェブサイトは要チェックですね。
伽藍の荒廃や火災などによって、何度も再建や補修が繰り返されてきた寺院だけあって、飛鳥時代~室町時代まで多くの年代にわたる部材があるのが特徴的です。
石塔やお地蔵さんが大量に並ぶ【浮図田(ふとでん)】
元興寺の境内には、浮図田と呼ばれている区画があり、ここには2,500もの石塔やお地蔵さんが並んでいます。これは1988年に並び直したもので、過去に元興寺が荒廃した際、バラバラになってしまったものらしいのです。
奈良時代に栄華を誇った元興寺も、中世になると興福寺の勢力下に置かれることになり、興福寺の僧たちの菩提所となっていたそう。そのため寺僧が作った石塔が多いですね。しかし中には僧ではない一般民衆のものも混じっているらしく、生前に極楽往生を願い、自ら石塔を建てたのでしょう。
そういったところにも、身分を問わず民衆から信仰を集めた元興寺の姿が浮かび上がりますね。