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「建国記念日」とは何の日?「建国記念の日」とどう違う?

曜日の途中に祝祭日があると、ちょっとホッとしますよね。2月には「建国記念の日(けんこくきねんのひ)」という祝日がありますが、これってどういう意味の祝日かご存じですか?もちろん、日本の建国を祝う日ですが、日本って西暦何年からある国か、考えてみるとよく知らないような……。日本にとって「建国」とは具体的に何があった日なのでしょうか。さらに、日本以外にも、建国記念日を祝日に定めている国は?知っているようで意外と知らない2月の祝日「建国記念日」について、詳しく調べてみたいと思います。

日本の祝日「建国記念の日」とは?

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「建国記念の日」とは、日本の建国を祝う国民の祝日です。「建国をしのび、国を愛する心を養う日」という意味の祝日で、具体的には2月11日。「憲法記念日」と聞き間違えてしまいがちですが、こちらは5月の連休中の5月3日なので混同しないようご注意を。さてさて「建国記念の日」とはいったいどんないきさつで定められた祝日なのでしょうか。制定までの流れを中心に見ていきましょう。

「建国記念の日」はいつ制定された?

建国記念の日は1966年(昭和41年)に制定されました。

なぜ2月11日なのかというと、それには「紀元節(きげんせつ)」と呼ばれる祝日が関係しています。紀元節は1873年(明治6年)に定められた祭日です。

日本書紀や古事記といった古い資料の中に、日本の初代天皇「神武天皇」の即位日についての記述があります。ただ、記述当時(日本書紀は8世紀初めに書かれたとされている)の暦と、1873年の暦には違いがあるため、明治政府内で熟考に熟考を重ねた結果、神武天皇の即位日は現代の暦上の2月11日であると結論づけられました。そこで、毎年2月11日を日本の建国の日・紀元節として祝うことにしたのです。

しかしこの紀元節、第二次世界大戦後にGHQ(占領軍)によって廃止されてしまいます。

一時は無くなってしまった建国の日。しかし戦後数年経過すると、これを復活を求める声が高まります。国内では、制定をよしとしない政党もあり、議会では何度も議論が繰り返されました。

祝日にするべきか、祝日にするなら2月11日がよいか、それ以外の日付にすべきか……。何年にもわたって議論が続けられます。

最終的に「建国記念の日」と、間に「の」を入れて、歴史上の具体的な建国日を指すのではなく、”日本が建国された”ということを記念してお祝いする日である……と、とやんわりした解釈ができるようにすることで、抵抗派・慎重派との折り合いをつけ、何とか落ちつきました。そして再び、1966年(昭和41年)6月25日に「建国記念の日」が成立。翌年から施行されるようになります。

神武天皇と日本の建国の関係とは?

日本は、他の諸外国先進国と異なり、例えば他民族が侵入して国家を制定したり、王様が国を作ったりといったことは起きていません。古くは神話の時代から、天皇は第126代令和天皇まで脈々と引き継がれ、その記録も残されています。

あまりにも古い時代の話。いつを「建国」とするか、難しいところです。人が住み始めたのがいつ頃なのか、原始時代のことなので年月日などはっきりしません。

そこで、天皇が初めて即位した日を建国の日とすることに。前述の「日本書紀」には、紀元前660年1月1日(辛酉年春正月庚辰朔)に磐余彦尊(いわれびこのみこと)が奈良盆地一帯を平定し、はじめて天皇の位についたとの記述があります。磐余彦尊は神武天皇のことです。

ただ、神武天皇は、古事記や日本書紀では120歳以上生きたとなっています。普通の人間では考えられませんよね。やはり神話の中の人ということでしょうか。実在したかどうか定かではなく、歴史学上は神話の世界の出来事と解釈されています。

「建国記念日」「建国記念の日」どちらが正しい?

正確な祝日名は「建国記念の日」となります。

先ほども述べたように、第二次世界大戦後、一度廃止になった建国の日(紀元節)を再開するべく、1950年~1960年代に日本国内でも激しい論争が続きました。折衷案として出されたのが「建国記念の日」という表現です。

「の」が入っているかどうかの違いだけですが、このわずかな違いに、戦後の日本の有識者たちの思いが込められています。「建国記念日」ではなく「建国記念の日」ということで、史実による建国日ではなく、日本という国が建国されたこと自体を記念する日、という解釈を可能にしました。

数十年経過した現代で、ただ2つの言葉を並べて比較しただけでは、それほど大きな違いがあるとは思えませんが、戦後の日本人にとっては大変大きな違いだったのでしょう。

現在、2月11日が「建国記念の日」だということは日本人なら誰でも知っていて、カレンダーにも書かれています。しかし、建国して2679年経った、2680年経った……というお祝いの仕方はしませんよね。日本が何年何月何日に建国されたか、ということではなく、国が建国されたこと自体を祝う、という解釈になっています。

知っておきたい「世界の国々の建国記念日」

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こう考えてみると、一口に「建国」といっても、国によってとらえ方が異なる可能性が高いです。植民地時代を経験している国なら、独立した日を「建国」とうたうでしょうし、移民として移り住んできたのなら、移民団が最初に上陸した日を祝うかもしれません。世界の国々にはどんな「建国の日」があるのでしょう?今度は世界に目を向けて、世界の国々の「建国の日」について、ほんの一部ですがアメリカ、中国、オーストラリアについて見ていきましょう。

アメリカ合衆国は独立記念日の「7月4日」

世界で最も有名な「建国の日」といってもよいかもしれません。1776年7月4日、アメリカ独立宣言に署名がなされた日。7月4日は「アメリカ合衆国の独立記念日」と呼ばれ、アメリカの人々はこの日を祝ってイベントがたくさん催され、大変盛り上がります。

大航海時代を経て、アメリカは長らく、イギリスの植民地となっていました。厳しい税制などから不満が募り、1775年、ついにイギリス軍との抗争が始まります。アメリカの13の州の代表は協議の結果、イギリスからの独立を目指すことで一致。翌年の7月、アメリカ独立宣言の文書が公開されます。

独立宣言の後、イギリス軍は絶対的な勢力でアメリカを制圧。アメリカ各州はイギリス軍の兵力の前に苦戦を続けますが、あきらめず粘り強く、自由を求めて戦いを続けます。フランスの援助などもあり戦況は少しずつ変化。1983年、アメリカは見事に勝利を勝ち取って独立が認められることになるのです。

なんとなく、独立戦争の後に独立記念日があるのかと思いがちですが、実は逆。現在、アメリカ独立宣言に関する資料は、独立宣言が行われたペンシルベニア州のフィラデルフィアにある「独立記念館」で見ることができます。

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