古墳時代日本の歴史

日本が誇る世界遺産「大仙陵古墳(仁徳天皇陵)」を歴史系ライターがわかりやすく解説

大王家の権威を見せつけるべく海岸沿いに古墳を造営

中国や朝鮮半島諸国と国交を結び、海外からも多くの人がやって来るようになった日本。当時は大阪湾に様々な国籍の船が往来していたことでしょう。

ここで古墳の立地に注目してほしいのです。仁徳天皇の先代、応神天皇の陵墓(誉田御廟山古墳)は大仙陵古墳に匹敵するほどの大きさで、土の量はこちらの方が多いほど。しかし現在の羽曳野市にあって、かなり内陸に位置しています。

かたや大仙陵古墳は現在の堺市にあって、当時は海岸線が大仙陵古墳の際まで来ていたそう。仁徳天皇の次代の履中天皇の大きな古墳も、大仙陵古墳と隣り合うほどに海岸線沿いにあり、しかも同じ北東の方向を向いていますね。

このそれぞれの古墳の立地はいったい何を表すものなのでしょうか?

応神天皇の頃は、大和朝廷というだけあって大和国(現在の奈良県)を中心に勢力を張っており、まさにそこに天皇の陵墓が築造されたわけです。

ところが仁徳天皇の代になって国際交流が活発になると、今の堺市のあたりから大和国へかけて産業道路が建設されました。堺は輸出入港になり、多くの人が行き交います。すると、すぐ目の前に仁徳天皇の巨大陵墓があるため、嫌でもその姿が目に入ってきますよね。海の上からもよく見えたでしょうから、大王の権力の強さを見せつけるためには格好の築造物だったのです。

次代の履中天皇も同じ向きに巨大陵墓を築造しましたから、迫力ある姿がまるで並んでいるかのように見えたことでしょう。

「東の果てにある島国だからといって舐められてはいけない。我が国にもこれだけのものを造れる力があるのだぞ!」

そんな仁徳天皇の思いが伝わってきそうな気がしますね。

大仙陵古墳のその後

履中天皇の陵墓が築造されて以降は、急速に巨大古墳は造られなくなっていきました。理由は、大和朝廷が安定した政権として軌道に乗ったからです。わざわざ巨大な古墳を築造することで力を誇示する必要がなくなったからだといえるでしょう。

やがて時代は下って戦国時代。相次ぐ戦乱の最中に、大仙陵古墳は城郭として利用されました。その名は「国見城」。三好氏によって利用されていたらしく、周囲には三重の水堀があって防御は完璧。見晴らしも良くて、大軍の収容も可能となれば、使わないわけはないでしょう。

戦国の頃には、同様に城として利用されていた古墳も数多くあり、大阪府にある高屋城は畠山氏の本拠地とされていましたし、関東の忍城水攻めの時に石田三成が本陣を置いたところも丸墓山古墳なのです。

大仙陵古墳に話を戻しますと、天皇陵として立入り禁止になったのは明治以降のことですから、それ以前は誰が立ち入ってもOKな場所でした。一説によれば古墳に神社も建っていたといいます。

またとっくの昔に盗掘に遭っていて、アメリカのボストン美術館には細線文獣帯鏡や単鳳環頭太刀などの盗掘品と思しき遺物が収蔵されていますね。

大仙陵古墳を巡ってみよう!

image by PIXTA / 56608638

実際に現地へ行ってみると、古墳という感じはほとんどありません。池の向こうに木が茂った丘があるような感覚でしょうか。しかし世界遺産にも指定されたことですし、駅からも近いですから、せっかくなら行ってみたいですよね。そこで見どころなどをご紹介していきたいと思います。

レンタサイクルがおすすめ!

大仙陵古墳の周囲は遊歩道がきちんと整備されていますが、1周が2.8キロもあるため徒歩ではなかなか大変。そこでレンタサイクルの利用をおすすめします。

大仙陵古墳の隣には大仙公園があり、そこの観光案内所でレンタサイクルを借りることができるのです。

普通自転車が300円、電動アシスト付き自転車が500円なので、とてもリーズナブル。有料で手荷物も預かってくれるため手軽に利用できますね。

また、堺まちあるきマップなどのパンフレットを無料配布していますし、みやげ物も充実しているので見逃せないスポットになっています。

自転車を使えば大仙陵古墳だけでなく、周囲に点在する古墳を巡ることもできますし、気軽に利用できるため人気になっているそうです。

大仙陵古墳拝所

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Saigen Jiro投稿者自身による作品, CC0, リンクによる

天皇や皇族が埋葬されている古墳は宮内庁の管轄となっているため、一般人の立ち入りを禁止しています。それは大仙陵古墳も同じことで、そういった場所には拝所というものがあり、そこから陵墓を拝むことができるのです。

拝所は鳥居も立つ神聖な領域であるため、厳かな気持ちで拝礼するようにしましょう。古墳と大仙公園の境、ちょうど南端にありますので、わかりやすいと思います。

また拝所にはボランティアガイドさんがおられることも多いため、気軽に古墳のことについて聞いてみましょう。

大仙公園

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Oilstreet – Oilstreet, CC 表示 2.5, リンクによる

堺市のシンボルパークともいえる場所で、都市緑化植物園、大芝生広場、日本庭園、平成の森など緑にあふれた魅力ある公園ですね。

公園内の堺市博物館では、堺の歴史と文化をわかりやすく紹介しています。百舌鳥古墳群の雄大さを体感できる百舌鳥古墳群シアターや、休憩コーナーなどの無料ゾーンも充実。また、ミュージアムキャラクターのサカイタケルくんは、奈良の某ゆるキャラとすごく似ていると評判になっていますね。

また日本庭園は、堺の歴史性を背景に、堺市の発展と市民の繁栄を祈る意味を庭園に込めたそうで、市民の憩いの場となっています。「築山林泉回遊式庭園」という様式でまとめられた風景は、異なる3つの表情を織りなしていますね。

自転車博物館サイクルセンターは、世界最古の自転車の展示や、自転車産業の町・堺の自転車文化を発信しています。また毎月第2・4日曜日と祝日にはクラシック自転車のレプリカに試乗体験できるそうですよ。

ちなみに大仙公園は桜の名所でもあります。51種類1,000本近い桜が満開を迎える時期、多くの花見客がここを訪れていますね。

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明石則実