3-5.インフレターゲットとは?
アベノミクスでは、インフレターゲットを2%に掲げました。これは、物価を毎年2%ずつあげてゆくということです。インフレ率が高くなり過ぎないようにする対策は、1930年代にスウェーデンではじまったもので、当初は導入する国はなかったのですが、1990年代のニュージーランドの導入により、現在では20を超える国が採用しています。
日銀が大量の現金をつぎ込んだにもかかわらず、物価の上昇にはつながりませんでした。2%の物価安定指数の実現は、残念ながら失敗といわざるを得ません。5年も低金利が続いたため銀行では収益が悪化し、上場企業の4割の大株主が日銀という異常な状態に陥っています。インフレターゲット2%は、先進国では平均的な数値です。
3-6.金融緩和の緊急修正とは?
金利「ゼロ程度」の方針は変えないものの、0.2%までの上昇は容認するよう修正されました。昨年10月に行われた、消費税を10%へ引き上げたのも修正のひとつです。日銀が間接的に、企業の大株主になることを減らす政策も行われています。
「大胆な金融緩和」については、円安株高の成功や企業マインドの改善など、ファーストステージにおいては成功といえるでしょう。しかし、デフレの克服や2%のインフレターゲットに達しなかったこと、新たな策を打ち出せなかったことなど、最終的には失敗といわざるを得ません。
4.機動的な財政政策は評価に値しない?
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バブル期には4.32%あった潜在成長率は、一時期プラス成長となりましたが常に1%以下にとどまっています。国会で積極的に議論が行われている、「人づくり革命」や「働き方改革」では、大幅な財政改革は見込めないようです。一応世界第3位の経済大国日本の財政対策は、アベノミクスでうまくいったのでしょうか?
4-1.機動的な財政改革とは?
財政政策は、「国の歳出入を通じて経済に影響を与える」です。アベノミクス第二の矢「財政改革」では、デフレ脱却をスムーズに行うために有効的な需要を生み出し、経済成長の促進を目指しました。歳入では増減税、国債の発行や増減並びに、公共事業の拡大縮小による、景気の拡大や抑制を図ったのです。
景気回復を目指すうえで、歳入面では減税をして経済を活性化させ、雇用を増やしたり賃金をあげたりした企業に対する法人税減税をしました。設備投資をした企業も同様です。政府の債務が深刻な日本経済において、財政を健全な形に戻すことで、「財政的児童虐待」問題解決への期待もされました。
公共事業の拡大などの積極的な財政支出により経済の落ち込みを防いだことは、評価ポイントといえるでしょう。しかし、肝心の財政再建(財政を健全な形に戻す)については先延ばしを余儀なくされており、コロナウィルスの影響がなくても未達に終わることは明白です。
4-2.財政改革による国債問題
現在の危機的状況は、国が借金返済の公約を守れないという重大な問題で、経済的に日本は信用できないといわれ国債の価値が下落してもおかしくはありません。超問題なのは、日本のGDP(国内総生産)の2倍を超える財政赤字となっていることです。
日本の国債が下落し高金利になれば、間違いなく日本は財政破綻するでしょう。現在は景気回復により税収が増えたことや低金利政策が功を奏し、財政は緩やかに改善しました。でも、緩やかな改善では全く事足りないのです。
財政法5条の「日銀が直接国債を引き受ける」ことは禁止されているのに、法律の抜け穴を掻い潜り民間の金融機関に国債を購入させ日銀がすぐに買い取って通貨の安定を図っています。国債が暴落すれば金利も急騰し、すぐさま円が暴落して、財政破綻するからです。
4-3.財政改革による予算問題
財政出動での経済回復は、景気上昇には役立つものの「リフレ政策(通貨再膨張)」の柱にはできないのです。減税などで収入を減らしながら、支出を増やせば国の赤字は更に膨らみます。国の財源には限りがあり、借金大国日本は最終的には破綻するでしょう。
「サイバー対策」や中長期的課題とされている「防衛費の膨らみ」、「社会保障の改革」の先送りなど、予算問題も深刻です。米国製の兵器も分割で購入し、連続して4年も膨らみ続けている防衛費は、将来の予算にも響きます。
メディアもなおざりにできない「社会保障の改革」は、財政的児童虐待に直接つながる問題です。なぜなら、幼児教育や保育の無償化などばらまき政治のお陰で、現在は本来返済すべき借金の中から年間2兆円も使い込んでいます。長期的に見るとアベノミクスは、「日本を貧乏にする」政策といえるのでは?借金を増やす財政改革は、タブーでしょう。
4-4.使い込み財政の黒字化はいつ?
「基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)」を黒字化することも、アベノミクスでの重要課題です。当初2020年を期限に黒字化を目標にしていました。消費税増額による増収でも賄い切れず、先ほども少し触れましたが2020年の黒字化を断念しています。
これには、借金返済の財源を別に回していることも起因しているのです。内閣では、2027年度にPBの黒字化を予測していますが、2025年の黒字化を実現すべきとの声も高まりました。
財政改革で一番の問題は、労働生産性(実質GDP)です。しかし、アベノミクス下で労働生産性は伸び悩みました。アベノミクス前は緩やかながら成長しており、米国やユーロ圏でも伸びているのに…。更にコロナウィルスの影響もあり、現在は全てが皆無の状態にまで、落ち込んでいるといわざるを得ないでしょう。