3分でわかる『星の王子さま』あらすじや結末・名言をわかりやすく解説
2.『星の王子さま』が伝えたかったことって?
この本を通して作者が伝えたかったことは、3つあります。主題である「一番大切なものは、目に見えない」ということと、次に「時間を費やすこと」、最後は「自分が手懐けた者には責任がある」です。この3つの事柄が哲学的に書かれているのを読み解くのも面白さでしょう。
2-1.「一番大切なものは、目に見えない」
「ほんとうのこと」しか知りたがらない王子さまと出会う登場人物に、「本当の事は言葉の中にない。」と度々語らせています。最初書かれている大蛇ボア(ウワバミ)の絵の中に、この物語の主題「一番大切なものは、目に見えない」という事が、既に描かれているのです。容器と中身を示すボアの絵には、象を飲み込んだボアと飲み込まれた象の弁証法が表されています。
また、箱の中のひつじも同様です。物の本質(中身)を見通す力は、大人ではなく子供の持っているという事が、既に冒頭に記されています。24章にある「星が綺麗なのは、花が咲いているからなんだよ。ここからは見えないけどね…。」という、セリフからも読み取れるでしょう。更に、25章の「でも、目ではよく見えない、心で探さなくっちゃいけない…」や26章にも「大事なもの、それは目では見えないんだ」と、王子さまに語らせています。
2-2.重要なキツネのセリフ
地球で出会う、聡明で理解力と茶目っ気のあるキツネが、リンゴの樹の下に現れる21章のセリフには、特に気持ちがこもっているのです。リンゴの果実は、知恵や魔法のシンボルとして昔から物語に登場しています。王子さまに教訓や大切なことを教える重要な導き手に選んだキツネの登場シーンが、リンゴの樹の下というのも憎い演出です。それでは、キツネの話す重要なセリフを2つ紹介しましょう。
「しんぼうが大事だよ。最初は、おれから少し離れて、こんなふうに、草の中にすわるんだ。おれは、あんたをちょいちょい横目で見る。あんたは、なんにもいわない。それも、言葉っていうやつが、勘違いのもとだからだよ。」
「さっきの秘密をいおうかね。何、とても簡単なことさ。 心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、 目に見えないってことだよ。」
世界における全てが、目には見えない絆で繋がっていることを、再確認させられる描写も読んでいて面白いところ。人と人、人と動物、人と植物など、王子さまと関わるもの全てに絆が生まれているのです。その絆は、先も心の中でずっと繋がるものと、その場限りで切れてしまうものと、関わり方や感じ方によって全く違います。
2-3.「自分が手懐けた者には責任がある」
王子様に、「自分が手懐けた者には責任がある」と教えるのもキツネです。自分の星で喧嘩別れしたバラを思い出した王子さまは、「愛する」という言葉を発します。21章の地球のバラに話しかけるシーンでは、自分の星で自身が水をかけてやったバラだけが大切だというのです。
バラの世話をして注いだ愛情は、卓越した大切な愛なのだとキツネに教えられます。ここから、育てたバラに対する責任を痛感した王子さまは、喧嘩から抱いた怒りと失望をはねのけることができたのです。そうして、バラのために死ぬ覚悟を決めたのでした。自分にとって、世界でたった一つとなった者のためには、死をも受け入れなければならないという「大変重い責任」についての教えだったのです。
3. ロングセラーとなった理由は?
By Yanajin33 – Own work, CC BY-SA 3.0, Link
今も世界中で愛される名作『星の王子さま』は、1943年にニューヨークの出版社「レイナル&ヒッチコック社」から出版された児童小説。サン=テグジュペリの本国フランスでは、彼が亡くなった後の1945年に「ガリマール社」から出版されています。日本では1953年に岩波書店から出されました。出版から約70年経った現在までに、1億5千万部以上も売り上げているロングセラーとなっています。