日本の歴史

人類が唯一根絶に成功した感染症「天然痘」元予備校講師がわかりやすく解説

天然痘の根絶

ジェンナーが開発し、パスツールが有効性を証明した予防接種は、天然痘を確実に減少させていきました。20世紀中ごろには、医療技術が発達した先進国を中心に天然痘を根絶させた国が現れ始めます。日本では1956年以降、天然痘患者発見の報告はありません。

発展途上国での天然痘撲滅を図るため、世界保健機関(WHO)は、天然痘患者を発見したものに賞金をだすことで患者のあぶり出しをはかりました。天然痘患者が見つかると、1か月以内に患者に接触したすべての人に種痘を実施。天然痘ウイルスの拡散を防ごうとしました。

この方法は功を奏し、最大の天然痘患者を抱えていたインドでも天然痘患者は激減します。

インドで成功した方法は、アフリカでも実施されました。1977年、最後の天然痘患者の報告がなされて以降、現在まで天然痘の発生は報告されていません。1980年、WHOは地球上から天然痘を根絶したと宣言しました。

医学は進歩しても、人類と感染症の対決は続く

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かつては、有効な治療方法も予防手段もなく、流行するたびに多くの人々の命を奪った天然痘。しかし、ジェンナーの種痘法やパスツールの予防接種技術の確立により、人類は天然痘を過去の病気とすることができました。21世紀の現在も人類と感染症の戦いは続いています。天然痘のように根絶できる感染症が増えることを期待してやみません。

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