ヨーロッパの歴史

国際連合と国際連盟の違いとは?「国連」といったらどっちのこと?

「国連」といえば「国際連合」のことですよね。いや、ちょっと待てよ。「国際連盟」という組織名も聞いたことがあるけれど……。「国際連合」と「国際連盟」は同じもの?違うもの?似たような名称で、混同してしまう人も多い模様。今回の記事では、「国際連合」と「国際連盟」の歴史や経緯を追いながら、双方の違いについて詳しく解説してまいります。

世界初の国際平和維持機構「国際連盟(League of Nations)」

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まず初めに組織されたのが「国際連盟」でした。世界中が激しい戦火に見舞われた20世紀初頭、第一次世界大戦の後に各国呼びかけのもと、組織されたのが「国際連盟」でした。どのようにして発足したのか、歴史をたどってみましょう。

発足は第一次世界大戦後の1920年1月10日

第一次世界大戦(1914年~1918年)が終わり、世界は国際的な秩序を求めて模索を続けていました。

1918年、アメリカ大統領ウィルソンが、「十四か条の平和原則」を発表します。この中に「国際平和機構の設立」として、国際連盟設立の基礎となる項目が盛り込まれていました。同じころヨーロッパでも、ヨーロッパをひとつにまとめて団結する「欧州連合」という考え方を唱える動きが出始めます。

世界を大きな戦火に巻き込んでしまったことへの反省と教訓。それが、国際連盟の礎となっていたのです。

1919年、第一次世界大戦のドイツに対する講和条約がヴェルサイユ宮殿鏡の間で調印されます(ヴェルサイユ条約)。その場で、ウィルソンが唱えた「国際平和機構の設立」が定められ、翌1920年1月10日に成立しました。

参加国は?常任理事国には日本の名前も

本部はスイスのジュネーブ。常任理事国はイギリス・フランス・イタリア・日本の4か国で、この時は、アメリカやソ連、ドイツは加わっていませんでした。1926年にドイツが、1934年にソビエト連邦が加盟と同時に常任理事国となります。講和条約では主導権を握っていたアメリカですが、議会の承認を得ることができず、加盟には至っていません。

1920年から解散した1946年までの間に加盟した国は63か国になります。この当時はまだ、ヨーロッパの国々に植民地支配されているアジアやアフリカの国々も多かったので、世界地図と見比べてみると、参加国が多かったとは言えないようです。

世界は平和を求めていましたが、各国が同じ方向を向いているわけではありませんでした。残念ながら、1930年前後になると脱退国が目立つようになります。

まず、常任理事入りを果たせなかったブラジルが1926年に脱退。アルゼンチンも1921年に一度脱退して再加盟するなど、せわしない動きを見せています。ドイツに至ってはナチス政権の力が強まったことで1933年に脱退。日本も1930年代に入ってから脱退しています。イタリアも1937年、脱退。加盟国が増える一方で影響力のある大国が様々な理由から次々脱退し、国際組織編制の難しさを目の当たりにすることになったのです。

第二次世界大戦後に解散し「国際連合」へ

1939年、ドイツ、イタリア、日本の三国と、イギリスやソビエト、フランス、アメリカなどの連合軍との間で戦争が勃発。第二次世界大戦がはじまってしまいます。戦火は再び世界中に。史上最大の戦争へと発展してしまうのです。

国際連盟の中核を担っていたイギリス、フランスにも、この事態を収拾する力はなかったと伝わっています。大戦はおよそ6年間。1945年まで続きます。その間も国際連盟は総会を続けていましたが、戦火が激しさを増すと共に連盟の活動も縮小傾向となってしまうのです。

1943年にテヘランで開かれた連合国首脳会談(テヘラン会談)で、半ば停止状態に陥っている国際連盟を新しい組織に移行させることが決定。翌年、国際連合憲章の原案が作られます。新しい国際組織「国際連合」の誕生です。

国際連盟はというと、1946年の総会を最後に解散。一部の機関は国際連合へ引き継がれることとなりました。

通称「国連」:国際平和のための組織「国際連合(United Nations)」

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次に、「国際連盟」の後に組織された「国際連合(United Nations)」について見ていきましょう。この英語の組織名をそのまま直訳すると「連合国」となり、特に「国際」という単語は使われていません。なぜ日本で「国際連合」命名されたかについては定かではありませんが、第二次世界大戦の「連合国」と区別するためか、ずっと「国際連合」という呼び方が使われています。1945年6月に設立され、現在、国際的平和維持のための唯一無二の国際機関として重責を担っている国際連合。どのような歴史をたどったか、詳しく見ていきたいと思います。

第二次世界大戦を教訓に・1945年に設立

国際連合の発足は、設立の4か月後の1945年の10月ですが、大戦中の1941年頃からすでに連合国の首脳陣によって協議が始まっていたと伝わっています。中心となっていたのがイギリスの首相チャーチルと、アメリカ大統領のフランクリン・ルーズベルトでした。まだ国際連合の形は作られていませんでしたが、この時の会談の内容が、後の国際連合憲章の草案へと繋がっていったと考えられています。

その目的は国際間の平和と安全の維持のための審議や各種活動です。世界の各国の間の友好関係の発展と、社会・経済・文化・宗教などによる様々な国際問題を解決するための協力体制。発足当時の加盟国(原加盟国)はイギリス、ソビエト連邦、アメリカ合衆国、中華民国など第二次世界大戦の連合国を中心とした51か国で、本部はアメリカ・ニューヨークに置かれることとなりました。

日本が国連に加盟したのは1956年のことです。当時のソビエト連邦など、日本の加盟に反対する意見もあり、1956年の「日ソ共同宣言」の後、加盟が認められるようになります。

その後、1960年代に入ると世界情勢にも大きな動きがあり、アフリカの国々が次々に独立を果たし、国連の仲間入り。加盟国数は2018年時点で193か国となり、現在に至っています。

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