幕末日本の歴史江戸時代

日本社会を大きく変えた「日米修好通商条約」背景や内容などわかりやすく解説

中国で清朝を揺るがすアロー戦争勃発

1856年、イギリス領となった香港船籍のアロー号に清国の役人が乗り込んで船員を逮捕したアロー号事件をきっかけに、イギリスは清国と戦争状態に入りました。

イギリスはフランス人宣教師の殺害事件で清国ともめていたフランスと共同出兵します。イギリス・フランス連合軍は広州を占領。さらに北上して天津付近にある砲台を占拠します。

イギリスが戦争を起こした理由は清国との貿易を拡大したいからでした。当時、清国は南京を中心におきていた太平天国の乱の鎮圧に苦心しています。そのため、イギリス・フランス連合軍と十分に戦う力はありませんでした。

最終的には清国は連合軍に屈服。南京条約よりもさらに不利な条約を結ばされます。ハリスはアロー戦争開戦の知らせを聞くと、幕府に対しイギリスやフランスが日本にも攻めてくる可能性を指摘。侵略される前にアメリカとアヘンの禁輸などを含む条約を結ぶべきだとせまりました。

老中堀田正睦は孝明天皇から条約承認の勅許を得ようとするが失敗

このころの江戸幕府のトップは老中首座の堀田正睦でした。堀田は条約締結する旨を朝廷に報告します。堀田の狙いは条約締結に孝明天皇の勅許を得て外国人を排斥すべきと訴える攘夷派を抑えることでした。

知らせを受けた朝廷では反対論が巻き起こり、中山忠能や岩倉具視など中・下級公家が抗議する廷臣八十八卿列参事件が起きます。孝明天皇自身も、対等な立場で外国と条約を結ぶことには反対でした。堀田は自ら京都に乗り込みますが交渉は失敗。孝明天皇からの勅許を得ることはできませんでした。

堀田は状況を打開するため大老設置に動きます。大老にだれがなるかの駆け引きが幕府内部で繰り広げられましたが、将軍家定の意向により彦根藩主井伊直弼が大老に就任しました。

井伊直弼の大老就任と幕府の交渉方針

井伊直弼が大老に就任したころ、幕府内部では条約締結論が優勢でした。しかし、井伊は条約締結に関しては慎重で、あくまでも勅許を得てから条約を結ぶべきだと考えます。

1858年6月18日、ハリスは軍艦に乗って神奈川沖に現れ、幕府に対して即時の条約調印を要求しました。交渉担当者だった井上清直と岩瀬忠震は、即時調印すべきだと主張。これに対し、井伊は勅許を得てから調印すべきなので、できる限り調印を引き延ばすよう指示します。

井上や岩瀬は「やむを得ない場合は、調印しても良いか」と井伊に確認すると、「その場合は仕方ないが、できる限り引き延ばせ」と指示しました。井伊の回答を聞いた井上と岩瀬は井伊の承認は得たと考えます。

結局、6月19日、井上・岩瀬らは日米修好通商条約に調印しました。ほぼ同じ内容でイギリス・ロシア・オランダ・フランスとも条約を結んだので、安政の五カ国条約といいます。

日米修好通商条約の内容

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日本とアメリカが結んだ本格的な通商条約である日米修好通商条約。条約締結によって、日本は国際貿易に取り込まれることになりました。この条約には不平等な内容が多く含まれ、相手国に片務的最恵国待遇を認めていたことから、日本は明治維新後も条約改正に苦労することになります。日米修好通商条約の内容について詳しくみていきましょう。

開港数の増加と居留地貿易

日米修好通商条約では、日米和親条約で開かれた下田・函館以外に神奈川・長崎・新潟・兵庫の開港と江戸や大阪の開市と神奈川開港の半年後に下田を鎖港することが定められました。

開港場にはアメリカ人が居留する居留地が設定され、アメリカ人は土地を借りることや建物を建設することが可能となります。外交官以外の一般の外国人は居留地の外に出ることはできないため、日本商人が居留地に品物を持ち込む形で貿易が行われました。これを、居留地貿易といいます。

貿易に関してはハリスの主張が認められ、幕府が関与しない自由貿易となりました。日本からの主な輸出品は生糸や茶、日本への輸入品は軍艦や毛織物、武器などです。条約締結後、アメリカで南北戦争が発生したため対日貿易の主導権はイギリスが握ることになりました。

相手国に領事裁判権を認める

領事とは、各国から相手国に派遣される外交官のことです。日本国内で罪を犯した外国人の裁判権を日本ではなく、領事がもつことから領事裁判権と呼ばれました。

例えば、アメリカ人が日本で暴力事件を起こし捕らえられた場合、そのアメリカ人はアメリカの法律によって裁かれます。在留外国人が日本の法律の外に置かれることから治外法権とも呼ばれました。

明治時代に起きたノルマントン号事件では、イギリス人船長が日本人を救助しなかったことを理由に裁判にかけられました。領事裁判の結果、イギリス人船長は禁固3か月の軽い罰で済み、賠償金も支払われません。このように、領事裁判は相手国にとって有利に運用されます。

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