古代ギリシャ哲学創成期を支えた偉大なる哲学者たち
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古代ギリシャとは、一般的には先史時代から古代ローマ人に占領される(前146年)までの間のことをいいます。ギリシャでは古くから独自の都市国家が発展し、様々な学問や芸術文化が花開いていきました。特に哲学の世界では、ソクラテス、プラトン、アリストテレスなど、1000年以上もの期間をかけて数多くの哲学者たちを生み出します。彼らはどんな哲学を説いていったのか、ギリシャ哲学創成期の世界へご案内しましょう。
「万物の根源とは何ぞや」タレス
タレスは紀元前600年前後に活躍した古代ギリシャの自然哲学者です。
古代ギリシャ哲学では「ソクラテス」「プラトン」「アリストテレス」の3人が有名で、この3人以前と以後で区切って論じられることが多いのですが、タレスはまさに「ソクラテス以前」の哲学者。ギリシャ七賢人にも数えられ、記録に残るうえでの最古の哲学者ともいわれています。
数学の教科書に出てくる「ターレスの定理(円の直径に対する円周角は直角になる)」でその名を知る人も多いでしょう。自身の影と身長からピラミッドの高さを測定したとも伝わっています。
タレスが生きた時代は、この世界は神々が作ったものであり、すべての物事は神話によって説明づけられていました。タレスは物事の合理的な説明を試みた人物として知られています。
「万物(アルケー)の根源は何か」……。この問いかけに対し、タレスは具体的な学説を打ち出します。万物の根源は「水」であり、世界のすべては水から作られ、また水に戻るのだと説いたのです。
タレスと同じように、この時期、「万物の根源は〇〇である」という議論が頻繁に行われるようになります。多アナクシメネス、ヘラクレイトス、エンペドクレスなど数々の哲学者たちが万物の根源を追い求めるようになり、万物の根源の追及が古代ギリシャ哲学の基礎となっていったのです。
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「無知であることを知る」ソクラテス
ソクラテスは紀元前450年前後に活躍した古代ギリシャの哲学者。多くの弟子を育てたギリシア哲学の第一人者として知られています。
ソクラテスの時代になると「万物の根源は何か?」的な議論はいったん落ち着き、もっと人間の内面的な部分に通じる本格的な議論が始まっていました。
彼の生まれはギリシャの都市国家アテナイ(現在の首都アテネの古い呼び方)。アテナイを中心にギリシア半島に数多くの都市国家が点在していましたが、その多くは労働力として奴隷を有していました。多くの市民が、日々の暮らしのための労働から解放され「世界は何からできているのか」「人はなぜ生きるのか」といった議論をする時間的余裕があったものと思われます。
また、多くの都市国家では、市民たちによる政治(直接民主制)がとられており、弁がたてば政治に参加することができたのです。
様々な議論が展開される中、「ソフィスト(知恵ある者)」と呼ばれる人々が誕生します。お金を取って弁論術や自然科学などの学問を教える家庭教師のような存在。中には、学問としての中身は空っぽで、ただ詭弁に走るだけのソフィストもいたようです。
人々が議論を交わし弁論術を磨く中で、ソクラテスは「相手を論破する方法」について深く考えるようになります。いわゆる「無知の知」です。
人間が「世界のすべて」を知ることはできない。でも「自分にはまだまだ知らないことがある」ということを自覚することはできる。「なんでも知っている」と根拠のない過信をするより、「無知であることを知る」ほうが優れている、と考えたのです。
「完全な真実の世界=イデア」プラトン
プラトンは紀元前4世紀に活躍した哲学者で、ソクラテスの弟子にあたります。
師匠のソクラテス自身は、自分で筆をとることはなかったようで、ソクラテスの言及の多くはプラトンが記しているのだそうです。また彼自身も多くの文章を残しています。
都市国家アテナイ生まれ。文武両道で体格もよく、レスリングなどの競技でも大いに活躍したのだそうです。
プラトンの哲学の中心は「イデア論」。「真理」を追究するうえで到達した考え方です。
この時代、人々の考え方は基本的に「相対主義」と呼ばれるものでした。「美しさ」や「正義」「善」「悪」など、立場が変われば見方も変わります。国と国との間で起きた争いも、片方の国では正義でも、片方の国では間違った判断だったとみなされる。では「真の正義」「絶対的な正義」とはどこにあるのか?
その答えをプラトンは「イデア」に見出します。
普段私たちが見たり触ったりしている物事は、イデアのコピーであり、真理はイデアにある、と説いたのです。
たとえて言うなら、私たちは炎の光に照らされて壁に移った影を見ているようなもの。本物(イデア)はその背後にある。イデアは真実の世界である、プラトンはそう論じています。
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「あらゆる学問の父」アリストテレス
アリストテレスは紀元前4世紀に活躍した古代ギリシアの哲学者で、プラトンとは師匠と弟子の関係にあります。
哲学にとどまらず、政治や生物、気象、宇宙論、文芸、詩や演劇など多岐にわたって活躍。これらのすべては哲学の知的欲求を満たすためのものと位置付けられているそうですが、その功績は高く評価され、「西洋最大の哲学者」「諸学の父」「万学の祖」と称されることもあるそうです。
若いころにアテナイに移り住み、プラトンが設立したアカデメイアという学校に入門します。
プラトンの弟子としてプラトンをリスペクトする一方で、プラトンの「イデア論」には批判的な意見を述べ、新しい哲学思想を形成。ギリシャ哲学を大いに隆盛させた人物といってよいでしょう。
その才覚をかわれ、アレクサンドロス大王の教育係を務めたことでも知られています。
とにかく学問の項目が多く、活動範囲が広くて「アリストテレスの思想とは?」と簡潔な表現が難しい人でもあるアリストテレス。アレクサンドロス大王の死後、アテナイの郊外にリュケイオンという学校を開き、そこで学んだ者たちはペリパトス(逍遥)学派と呼ばれています。
ヘレニズム哲学派:「アリストテレス後」の哲学者たち
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アレクサンドロス大王の死後(紀元前323年)からプトレマイオス朝エジプトが滅亡(紀元前30年)するまでの300年ほどの間のことを「ヘレニズム時代」と呼んでいます。この時代、ギリシャ哲学もさらに磨きがかかっていきました。一般的にはわかりやすく「アリストテレスより後」と呼ばれることが多いです。どんな哲学者たちが活躍していたのか、代表的なところをご紹介します。
「ピタゴラスの教えを継承」ピタゴラス学派
ピタゴラスとは紀元前6世紀に活躍した古代ギリシャの数学者であり哲学者であった人物。ピタゴラスが創設した集団が「ピタゴラス学派(ピタゴラス教団ともいう)」です。
塾や学校というより、一種の宗教団体のような結束力でまとまっていた団体と考えられていますが、ピタゴラス本人がかなりの秘密主義で、外部に情報が漏れることを極端に恐れ、資料を一切残さなかったと伝わっています。謎の多い集団ではありますが、ピタゴラスの教えを共有し、哲学の分野でも成果を上げていました。
ピタゴラス学派の思想の根幹には「均整と調和」があります。ピタゴラスは万物の根源とは「数」であると論じており、ピタゴラス学派も数論をベースに幾何学・天文学を重んじ、万物を数と結び付けて考え、理論数学の発展にも大いに貢献しました。
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