ヨーロッパの歴史

キリスト教勢力がイベリア半島で行ったレコンキスタとは何か。わかりやすく解説します。

ローマ教会による十字軍の呼びかけ

11世紀、世界全体でみるとイスラム勢力の領土拡大は続いていました。トルコ人の一派であるセルジューク朝は東ローマ帝国から小アジアを奪い、帝国首都のコンスタンティノープルに迫ります。

東ローマ皇帝はローマ教皇に対し救援を要請。時の教皇ウルバヌス2世クレルモンで公会議(宗教会議)を開催。東ローマ帝国救援とセルジューク朝によって支配されている聖地エルサレム奪還の軍を起こし、諸国の騎士が参加するよう訴えたのです。

こうして組織された十字軍は聖地エルサレムと周辺地域を征服しエルサレム王国などを建てました。聖地エルサレムを奪還するという宗教的情熱と貴族や騎士たちによる領土拡大の欲求が入り混じった十字軍は100年以上にわたって続けられました。十字軍と同じく、「異教徒から領土を奪い返す」という名分で進められたのがレコンキスタです。

キリスト教徒連合軍によるレコンキスタの結果、スペイン王国とポルトガルが成立

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イベリア半島のイスラム勢力が弱体化すると、キリスト教勢力によるレコンキスタが本格化しました。1212年のナバス=デ=トロサの戦いでカスティリア・アラゴン・ポルトガルなどがムワッヒド朝に勝利すると、レコンキスタはより一層加速します。そして、1492年にナスル朝が滅亡することでレコンキスタは完成しました。イベリア半島に成立したスペイン・ポルトガルの両王国は大航海時代の主役となっていきます。

イベリア半島にできたキリスト教諸王国

10世紀ごろ、イベリア半島北西部にあったアストゥリアス王国は首都をレオンに移し、レオン王国となります。10世紀にレオン王国からわかれ、レコンキスタの主役となるのがカスティリア王国です。

カスティリア王国はイスラム勢力と戦い、領土を南へと広げました。レオン王国とカスティリア王国は、統合と分離を繰り返しましたが、13世紀には完全に一体化しました。

北東部に成立したのがアラゴン王国です。アラゴン王国はサラゴサやバルセロナを中心に地中海に積極的に進出しました。アラゴン王国は地中海にそってイスラム勢力と戦い、領土を拡大します。

大西洋岸に成立したのがポルトガル王国です。カスティリアから独立したポルトガルは1147年にはイスラム勢力支配下のリスボン攻略に成功。こうして、レコンキスタの主役になるカスティリア・アラゴン・ポルトガルの三王国が出そろいます。

レコンキスタの一大決戦、ナバス=デ=トロサの戦い

12世紀末から13世紀の初めにかけて、北アフリカに本拠地を置くムワッヒド朝がイベリア半島に大軍を上陸させます。この知らせを聞いたローマ教皇インノケンティウス3世は、イベリア半島の諸王国に争いをやめ、イスラム教徒に備えるよう命じました。

教皇の命令により、カスティリア王国・アラゴン王国・ポルトガル王国などは連合軍を結成。さらに、テンプル騎士団など多数の騎士団もイベリア半島に集結しムワッヒド朝を迎え撃ちます。

1213年、キリスト教連合軍とムワッヒド朝軍はナバス=デ=トロサの地で激突しました。ムワッヒド朝軍はキリスト教連合軍の2倍の兵力を持っていましたが、連合軍による本陣突撃によってムワッヒド朝軍は大混乱し潰走します。

ナバス=デ=トロサの戦いにより、ムワッヒド朝は潰滅的被害を受けました。その後、レコンキスタを阻むイスラム勢力はなかったのです。

グラナダ陥落により、イベリア半島のレコンキスタは完成した

ムワッヒド朝が衰退しイベリア半島から後退すると、カスティリア王国・アラゴン王国・ポルトガル王国はそれぞれ、南へと領土拡大しました。

1469年、カスティリア王女のイサベルとアラゴン王子のフェルナンドが結婚すると両国の連合が深まります。そして、1479年、カスティリア王国とアラゴン王国は統合し、スペイン王国が誕生しました。イサベルとフェルナンドはカトリック両王とも呼ばれます。

最後までイベリア半島に存続していたイスラム王朝がナスル朝です。ナスル朝はグラナダを首都とし、アルハンブラ宮殿を造営するなど高い文化力を持っていましたが、軍事的には強力ではありません。1492年、スペイン軍がグラナダを攻略することでナスル朝は滅亡。ここに、レコンキスタは完成しました。

レコンキスタに勝利したスペインとポルトガルは海外へと飛躍した

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1492年のグラナダ陥落により、800年にもわたったレコンキスタは終結しました。同じ年、女王イサベルはある人物の計画を承認、援助します。その人物こそ、大航海時代の主役の一人であるコロンブスでした。コロンブス以前から北アフリカに進出していたポルトガルとともに、スペインは大航海時代をけん引。16世紀には黄金時代を迎えます。レコンキスタで国を統一したからこそ、外の世界へと進出できたのでしょうね。

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