安土桃山時代日本の歴史

天下分け目の合戦の場所はどこ?本当に「関ヶ原」?通説を覆す新解釈を解説

1600年に起こった天下分け目の決戦こと関ヶ原の合戦。東軍率いる徳川家康が勝利し、天下の実権を握ることになった重要な戦いだとされていますよね。でももし、戦われた場所が関ヶ原ではなくて違う場所だったら?また通説でずっと信じられていたことが本当のことではなかったとしたら?それはまさに目からウロコどころか、これまで小説やメディアなどで登場した関ヶ原合戦のイメージが崩壊しかねないのです。実は最近の研究成果で、徐々に合戦像が変化しつつあります。それはいったいどういうことなのか?細かく検証していきながら解説したいと思います。

これまで通説だった関ヶ原の合戦

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まずはじめに、これまで通説とされてきた、皆さんが良く知る関ヶ原の合戦の様子を、時系列を追って見ていきたいと思います。

両軍の布陣の様子

合戦当日の両軍の布陣図

まず東軍は、岐阜城を落とした福島正則池田輝政らが待つ美濃赤坂へ家康本隊が着陣。逆に西軍は、「東軍が大垣城を通過して大坂へ直接向かうらしい」という情報を得て、それを迎撃するために関ヶ原にて陣を敷きます。

「西軍動く!」の報に接した東軍主力は、西軍を追うかのように移動し、合戦当日夜明けには西軍と相対するように関ヶ原の東側に陣を敷きました。

両軍の激突と動かない西軍

合戦当日の朝は霧靄に包まれた関ヶ原。午前8時にまず西軍宇喜多秀家隊、東軍井伊直政隊の間でまず戦端が開かれます。福島正則隊もすかさず宇喜多隊に攻めかかり、激しく戦いました。

そして他の場所でも石田三成隊には黒田長政、加藤嘉明、細川忠興が攻めかかり、大谷吉継隊には藤堂高虎、京極高知らが襲い掛かりました。この時点で西軍は兵力は劣勢ながらも奮闘し、たびたび東軍を押し返しています。まさに戦況は一進一退。

関ヶ原の東方では、まるで東軍を囲い込むかのように西軍の諸部隊(毛利秀元、安国寺恵瓊、長束正家、長曽我部盛親ら)が布陣していましたが、戦況を傍観して動きません。この時点でこれらの部隊が東軍の側背を突けば、西軍の勝利は揺るがないものだったでしょう。

小早川秀秋の裏切りと西軍敗走

関ヶ原の南には松尾山という古城があり、ここには西軍の小早川秀秋が布陣していました。かねてから東軍へ内応するという約束を交わしており、徳川家康は今か今かと内応を心待ちにしていたのです。しかし、意に反して西軍が善戦しているために小早川は動くことができずに傍観している有様。

そこで家康は世にいう【問鉄砲(といでっぽう)】を小早川の陣所へ向けて発砲したのです。裏切りを促すために威嚇射撃を行ったのでした。これを見た小早川は仰天し、「徳川内府様が怒っておられる!」とすぐさま山を降りて西軍の大谷吉継の陣へ襲い掛かったのでした。小早川の裏切りを予想していた大谷は、それに対応するために脇坂らの軍勢4千を別に布陣させていましたが、小早川が裏切るや、それらの軍勢もくるりと向きを変えて大谷隊へ襲い掛かってきました。

それまで藤堂・京極隊と戦ってきた上に、およそ2万近い軍勢にいきなり襲われたわけですから、わずか5千の大谷隊はひとたまりもありません。瞬く間に壊滅し、大谷吉継は自害。そしてまるで連鎖反応するかのように西軍の各部隊も壊滅していったのです。西軍総大将の石田三成はじめ小西行長や宇喜多秀家も敗走。東軍の完勝に終わったのでした。

関ヶ原合戦における通説の矛盾点

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これまで通説とされてきた関ヶ原合戦の様子を見てきたのですが、実はこれまで気づかれずに見過ごされてきた矛盾点がいくつかあるのです。それはいったいどういうことなのでしょう。

家康の【問鉄砲】は本当にあったのか?

小早川秀秋の内応を催促するために撃たれたといわれる【問鉄砲】ですが、実際に小早川の陣へ向けて発砲したところで聞こえるものでしょうか。まず、古戦場にある家康の陣所と小早川陣との距離をみてみましょう。約2キロも距離が離れており、当時の鉄砲の射程距離はほんの100~150メートルほど。一斉射撃をしたところで聞こえるものではないでしょう。テレビ番組で検証実験しておられましたが、約500メートルの距離まで近づかないと音が聞こえなかったそうです。しかもすでに合戦は始まっており、両軍の射撃音や喚声が邪魔をしてまったく聞こえないという可能性もあります。

もう一つ。仮に聞こえたとしても、小早川の陣は松尾山の頂上にありました。標高293メートル。登った方ならわかるかも知れませんが、片道40分も掛かる山道です。1万5千もの軍勢がすぐさま山を降りて整然と陣を並べなおし、大谷の陣へ襲い掛かることができるでしょうか?あまりにも現実離れした話ですよね。

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明石則実