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知らないようで意外と知ってる「エジプト神話」のカッコイイ神様10選!

エジプト神話とは、およそ3000年以上伝えられ続けたとされる、古代エジプトの人々によって信仰されてきた神話のことです。日本人にとって馴染みのない神話のように思われがちですが、エジプト神話は開祖のない多神教であり、太陽や大地を神格化した自然信仰でもあり、日本の八百万の神に似た一面も持っています。たくさんの神様が存在するエジプト神話。中には「あれ?聞いたことある!」という神様の名前もあるはず。今回はそんなエジプト神話に登場する神様の中からえりすぐりのカッコイイ神様をご紹介します。

まずは予習から!エジプト神話の世界観

エジプト神話とはどんな世界観を持っているのでしょうか。エジプト神話には太陽や月、学問、戦いなど100以上もの様々な神様が存在します。また、それら神様を祭るために建てられた神殿もいくつか現存。しかし時代とともにイスラム教など他の宗教が伝わり、いつしか神話の神様たちは姿を消してしまいます。そんな神様たちを紹介する前に、エジプト神話の世界観について考えてみましょう。

エジプト神話の基礎知識(1)書物は残されていない

エジプト神話は主に人々の間で口伝えに伝わってきたもので、書物や文書といった記述の類が残されていません。現在伝わっているエジプト神話は、伝承をもとに後の世においてまとめられたものです。

エジプトは長い歳月の間で、都を移動し、新しい都市が誕生しています。都が遷るとどうなるのでしょうか。新しく人が住み集う場所では、その土地の風土や地形に合った神話が語られます。エジプト神話も、都市の名前を付けてヘリオポリス神話、メンフィス神話、ヘルモポリス神話、テーベ神話など、いくつかのタイプに分かれるとされているのです。このことから、神話が王や王朝と強く結びついていることが伺えます。

各神話の中では、それぞれ創造神や各神の役割などに少しずつ違いが。書物に記されることなく語り継がれてきたエジプト神話ならではのスタイルであると考えられています。

エジプト神話の基礎知識(2)神話の世界観

エジプトの人々にとって、ナイル川の存在は絶対的なものです。ナイル川を舞台にした神話は数多く存在します。またナイル川自体も神と考えられ、洪水や氾濫など川が起こす様々な事象にも神が宿ると考えられてきました。

また、人の死についても独特の世界観を持っていると言われています。エジプトでは、太陽が地平のかなたに沈んでも翌日再び天に昇ることから、命は再生すると信じられていました。名前、肉体、影、魂、精霊の5つからできているとされる人間は、死すと魂は肉体から離れてあの世へ行くが、肉体が残っていれば再生できると考えられていたのだそうです。人の亡骸をミイラにしていたのも、そう信じられていたためと思われます。

余談ですが、現在エジプトで発見されているピラミッド100基余りはすべて、ナイル川の西側に連なっており、東側にはありません。西側は太陽の沈む方向であり、そこに死後の世界があり、太陽のように人の魂も蘇る。古代エジプトの人々はそう信じていたのかもしれません。

たくさんいるぞ!エジプト神話に登場するカッコイイ神様たち

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エジプト神話の世界観をだいたい掴んでいただいたところで、早速、神話に登場する神様たちをご紹介したいと思います。たくさんの神様が登場し、それぞれ個性的ですが、ギリシャ神話ほどの人間っぽさはなく、どの神様も荘厳な雰囲気。ただし、もともと書物や文字として残されていないので、詳細がわからない神様もたくさんいます。言葉が少ないところは是非、広大な大地と地平線、乾燥した風と照りつける太陽、雄大なナイル川の流れを思い描きながら想像していただけたら幸いです。

すべての始まり・天地創造の神:アトゥム(Atum)

エジプト神話にはたくさんの種類がありますが、一般的には、現在のカイロの近くにあったヘリオポリスという都市で語られていた「ヘリオポリス神話」をもとにしたものが多いです。アトゥムはヘリオポリス神話創世にかかわる九神のうちの一柱。すべての源とされるヌン(ヌン=海と解釈されることも)から自らの力で誕生し、他の神々を生み出した創造主です。

生まれたとき、アトゥムは蛇の姿をしていたとされています。エジプトの人々にとって蛇は神秘的なものであり、生命力の象徴と考えられていたようです。

アトゥムはまず、男神シューと女神テフヌトを誕生させます。シューは大気、テフヌトは湿気の神とされ、これによってまず世界に空気が造られました。

アトゥムはすべての始まりであり、アトゥムの死は世界の終わりを意味しているのだそうです。

天と地を分けた大気の神:シュー(Shu)

アトゥムが最初に生み出した、天地創造に関わる大気の神。妹であり妻でもあるテフヌトとともに誕生した男神です。アトゥムには性別はないと考えられているので、性別を持つ最初の神ということになります。

大気を循環させる存在として、東西南北四方から吹く風の主と呼ばれることも。また「光」を表すもの、光る大気として崇められることもあるようです。

神話によるとシューはテフヌトとの間に、大地の神ゲブと天の神ヌトをもうけます。ところがゲブとヌトが仲が良すぎて始終くっついていて離れません。太陽と風の通り道を確保することができなくなったため、シューがヌトを押し上げ、ゲブと引き離します。

これ以後、天と地が分かれて世界の礎が完成。

ゲブとヌトを引き離すシューの姿はエジプト人たちの心を捉えたようで、たびたび絵図の題材となって残されています。

ライオンの頭を持った女神:テフヌト(Tefnut)

アトゥムが生み出した、性別を持つ最初の神のうちの女神がテフヌトです。兄であり夫であるシューとの間にゲブとヌトを授かり、天地創造に携わった神として崇められています。

神話ではシューの妻として語られることはあっても、テフヌト単体を主役に据えた神話はほぼ見られません。天と地を司る神を産んだ女神として語られることがほとんどです。

シューと同じく大気を司る神ですが、「湿った風」「湿気」と言い表されることもあります。乾いた風を表すシューと関わることで、天に浮かぶ雲の源になっていると言われることもあるようです。

壁画などでは、ライオンの頭を持った女神として描かれています。

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