作者ってどんな人?ニッコロ・マキャヴェリについて解説
君主論を執筆したマキャベリはイタリアの貴族としてイタリアの政治に関わる人物でした。マキャベリが考えた極度な現実主義は今ではあまり合わないという考え方もあるのですが、彼が生まれた時のイタリアはまさしく君主を求めているそんな時代でもあったのです。
分裂したイタリアの貴族として
ニッコロ・マキャヴェリが生まれたのは1469年。貴族の3番目の子どもとして誕生しました。
マキャベリの家は裕福とは言えない暮らしでマキャベリも「楽しむより先に、苦労することを覚えた」と語っていましたが、マキャベリは貴族の息子としてラテン語やローマ古典などを学んですくすくと育っていきました。
しかし、当時のイタリア半島は大混乱状態。マキャベリの時代はイタリアは大小の国々に分裂しており、さらには豊かな北イタリアを求めてオーストリアとフランスが狙っている状態でした。
このイタリアの状態はのちの君主論の素地としてマキャベリは教訓としていくのですが、この当時はフィレンツェを統治しているメディチ家が最盛期を迎えている時期でもありました。
マキャベリはその後フィレンツェの書記局に働いていくようになり、周辺諸国との交渉に明け暮れることになります。
マキャベリは当時独立していたピサを再征服するために軍事行動を行なっていくことになるのですが、フランスの妨害もあって失敗。マキャベリは挫折を味わいことになるのです。
こちらの記事もおすすめ
メディチ家とは?ルネサンスを支えたフィレンツェ名門一族の歴史と足跡 – Rinto~凛と~
君主論を描く
マキャベリがピサ攻略が失敗した理由を考えていくうちにフィレンツェには常備軍がなく、傭兵の部隊しかなかったことに注目することになります。
さらには1502年に教皇の息子であるチェーザレ・ボルジアがフィレンツェ近くのウルビーノを征服したことでマキャヴェリは使節として派遣。この時、マキャヴェリはイタリア統一のために権謀術数に明け暮れる姿を理想の君主像を見ていき、君主の在り方について考えていくようになります。
マキャベリは常備軍・強い君主が混乱状態のイタリアには不可欠な存在だと考えるようになったのです。マキャベリはこの考えからフィレンツェに常備軍を持つように説得。最終的には農民を徴兵してついに常備軍が結成されたのでした。
しかし、マキャベリの思惑はうまくいくことはありません。次はスペインハプスブルク家の侵攻を受けることになってしまい、常備軍があっさり敗北。この当時ヨーロッパ最強の家柄あったハプスブルク家には勝てなかったのでした。
そしてマキャベリは敗北の責任を取ることとなり書記局長の職を解かれることに。
その後隠棲先の別荘にて悠々自適と暮らしていき、自身の考えと君主のあり方をまとめて本を執筆。この本こそが『君主論』だったのです。
こちらの記事もおすすめ
ヨーロッパの超名門ハプスブルク家とはどんな家だったのか? – Rinto~凛と~
君主論の内容について解説
マキャヴェリが『君主論』で説いた思想は、現代でも「マキャヴェリズム」と呼ばれて広く浸透しています。その内容を要約すると、「美化を排除して徹底して現実を認識する」、「目的のためには手段を選ばない」の2つになるでしょう。要するに現実主義ということですね。『君主論』は全体で26章から成っており、分裂したイタリアが統一するためにはどのようなリーダーが必要なのかを記しています。まずはそんな君主論の内容についてみていきましょう。
リーダーの性格
マキャヴェッリはの国家の生活態度にこだわっており、何でもかんでもいいことをするのはよくないとしており、君主は自身を守るためであれば悪い行いもしなければならない必要があると説いています。
リーダーというの基本的にはいい性格のほうがいいとするのは一般的だとは思うのですが、マキャベリはそうではなく、逆に国民に対して厳しい態度で臨むほうが国の秩序を維持して国民の生活を安定させる善い行いだとしているのです。
ようするに自国の存続のために悪評が立つならばその払拭にこだわることはなく、逆に悪であっても安全と繁栄がもたらされることがしばしばあるというわけなんですね。
信じすぎず疑わず
またマキャベリは君主は評判の方が好ましいことはもちろんのことではあるが、そこまでリーダーの性格は気にしなくてもいいと考えています。というか人間が利己的で偽善的なものでありたとえ民衆にいい政治を行ったところで従順であっても利益がなくなれば反逆する。一方で、君主を恐れる人々にはそのようなことはない。
民衆にばかり言い政策を行うよりは残酷な手段によってでも安定的な統治を成功させることが大切と考えているのです。ようするに君主は信じすぎず、疑いすぎずでいたほうがリーダーとしては良い方面に傾くとしているのですね。
リーダーと軍隊
ここまではリーダーと民衆の態度についてみていきましたが、リーダーの生活と同じぐらい重要なのが軍備と法律でした。国というのは強い軍隊とよい法律があるからこそ成立するものであり、マキャヴェッリにとってこの考えは「すべての国にとって重要な土台となるのは、よい法律とよい武力とである」との言葉で表されています。そんな中でもマキャベリが一番こだわっていたのが軍隊のありかでした。
上にも取り上げた通り、マキャベリはは当時イタリアの都市国家で重要視されていた傭兵では傭兵の隊長によって君主はその圧力に屈してしまい最悪の場合国が乗っ取られてしまうことを考えていました。もし傭兵が無能だったらそもそも戦争に勝つことができないのでどちらにせよ傭兵を重用するのはマキャベリからしたら危険そのものだったのです。
そのためリーダーは自国民で結成した軍隊を結成して敵の侵攻をうまく防がなければいけないとマキャヴェッリは結論づけたのでした。
確かに、自国民で結成された軍隊であれば国のために働いてくれるため結束力が段違いになることは確実。自国民による軍隊は様々なメリットがあるのですね。