日本の歴史

如来と菩薩の違いは?知れば知るほど興味深い「仏像の世界」

仏像にもいくつか種類があることをご存知ですか?神社仏閣を巡っているときなど「阿弥陀如来」や「観音菩薩」といった名前の付いた仏像を目にすることがあるかと思いますが、これはどちらも仏像。違いを一口で言うと、菩薩より如来のほうが偉いんです。この記事では「知っておくと仏像めぐりしたくなる」かもしれない仏像の世界について詳しく解説します。

仏像とは何か?なぜ作られるようになったのか?

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仏像とはずばり「仏様の姿を形にした像」です。訪れる人々の礼拝の対象として寺院などに安置され、美術品として評価されるものもたくさんあります。では「仏様の像」とは?作られるようになった経緯などもあわせて見ていきましょう。

仏像とは何か?

仏像とはもともと、仏教の開祖・釈迦(しゃか)の姿を形にしたものでした。

釈迦(ゴータマシッダールタ)とは、紀元前5世紀前後の北インドの種族の王子だった人。俗世の生活に悩み、王族の座を離れて若くして出家し、苦しい修行の末に悟りを開きました。悟りを開いた人のことを「仏陀(ぶっだ)」と呼びます。宗教や信仰における「悟りを開く」とは「心理に目覚めること」「迷いを払しょくし煩悩から解放されること」です。

お釈迦様は35歳で全宇宙最高の悟りを開き、この世を去る80歳まで、弟子たちをはじめ様々な人々にありがたい教えを説いて歩きました。この教えを「仏教」といいます。

仏像とはもともとは、悟りを開き仏陀になったお釈迦様の像のことでした。そして長い年月の間に、仏教の広がりと共に様々な種類の仏像が作られるようになっていったのです。

なぜ仏像が作られるようになったのか?

仏像が作られるようになったのは、お釈迦様が亡くなってから500年以上も後のことです。紀元後1世紀頃から作られ始めたといわれています。

なぜ仏像が作られるようになったのか、その経緯については残念ながら文献が残されていないので明確なことはわからないのですが、目的はおそらく「仏教の内容や世界観を人々に伝えるため」でしょう。仏様の姿を描いた仏画などもそのうちのひとつです。

仏像や仏画のようなものがあれば、学問に振れたことのない庶民にも、言葉の通じない異国の人々にもわかりやすく仏教の世界観を伝えることができます。

しかし、生前多くの人に尊敬されていたお釈迦様なのに、なぜ500年以上も経ってから仏像が作られるようになったのでしょう。これについても様々な説が語られていますが、「お釈迦様の像を作るなど恐れ多いことだ」と思われていた可能性が高いようです。

仏像が作られ始める前は、お釈迦様そのものの姿を現すのではなく、法輪、仏足石(釈迦の足跡を石に刻んだもの)、菩提樹といったお釈迦様にゆかりあるものを形にすることで、仏の教えを表していました。

仏像が最初に作られた場所についても、実はよくわかっていないのです。いったん仏像が作られ始めると、我も我もとみんなが作り始めたため、起源についても諸説あってはっきりしていません。インドのガンダーラ地方や、北部のマトゥラー地方であるという説がありますが、真相は不明。ただ、没後500年以上経過してもなお、多くの人々がお釈迦様の姿を求めていた、ということは確かなようです。

どうして仏像はたくさんあるの?

お釈迦様の教えは何世紀もの年月を経て、中国や東南アジア、ネパール、日本にも広まっていきます。その広まりと共に、様々な仏像が作られるようになりました。

それぞれ時代ごとに、様々な国のいろいろな人々が日々の暮らしの苦しさを前にして、仏教に救いを求めます。願いは人それぞれ、求められる救いの道もそれぞれ。願いを持つ人にあわせるようにして、様々な特性や雰囲気を持つ仏像が誕生していったと考えられています。

お釈迦様の教えをわかりやすく伝えるために作られたものと考えれば、様々な種類の仏像が作られた理由も理解できそうです。

日本の寺院にある仏像も、よく見ると表情や立ち姿に個性が見られます。あるときは穏やかな笑みを浮かべ、あるときは目を向いて怒りをあらわにする仏像。その種類は数千種類にも及ぶといわれています。仏教伝播の長い歴史の中で、救いを求める人の数だけ仏像が作られた、と解釈してよさそうです。

現在でも、仏像が新しく作成されることがあります。全高120mの大きさで知られる茨城県の牛久大仏や、2018年に公開された東京都日野市の鹿野大佛など、大仏様の建立となると多くの人が集まって大変話題になりました。仏像の表情やスタイルはそれぞれ異なります。その地域に住む人々が「ああ、いいお顔だなぁ」と感じ、求められる仏像が作られていくものと考えてよいのでしょう。

4段階?興味深い仏像の種類・見分け方

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冒頭で「菩薩より如来のほうが偉い」と述べましたが、厳密には仏像に上下関係があるわけではありません。多くの人々を救うため、仏像にも様々な役割やステータスがあるのです。仏像の種類はざっくり大きく分けると「如来」「菩薩」「明王」「天部」4段階。ここからはタイトルにもある「如来」と「菩薩」の違いを含めて、仏像の種類について詳しく解説します。

如来

如来(にょらい)とは「修行の末に真如(真理)に到達し悟りを開いた人」「真如の世界から来た人」という意味の言葉です。数ある仏像の中で最高ランクに当たる仏像ということになります。

見た目は非常に質素。服装は衲衣(納衣・のうえ)と呼ばれる一枚布をまとい、髪は螺髪(らほつ)というパンチパーマのようなスタイルが一般的です。

本来、如来はお釈迦様のみだったのですが、何世紀も経って仏経の広がるにつれ、お釈迦様の他に悟りを開いていた仏も尊まれるようになります。主な如来は以下の通りです。

●釈迦如来

仏教の開祖・お釈迦様が悟りを開いた姿です。

●阿弥陀如来 

お釈迦様と同じく悟りを開き如来となった人の姿。無量寿仏とも呼ばれます。悟りを開く前は法蔵菩薩。人々を救うため四十八の大願(だいがん・仏が人々を救おうとする誓願)を立てて如来となり、人々を極楽浄土へ導いています。浄土真宗は阿弥陀の力で人々が救われるという考え方のもと、阿弥陀如来を本尊に。「他力本願」とは自分で修行をおさめなくても阿弥陀如来の力で成仏できるという、親鸞によって伝えられた仏経の言葉です。他の如来との見た目の違いは、指で輪を作っているところ。鎌倉の大仏様も実は阿弥陀如来なのです。

●薬師如来

病気を治す仏様。飢えや病気を治すという願いを含む十二の大願を立てて修行をし悟りを開いており、大医王、医王善逝(いおうぜんぜい)と呼ばれることもあります。如来像は基本的には持ち物は何もないのですが、薬師如来だけは特別。左手に小さな薬壷(やっこ・やくこ)を持っています。たまに何も持っていない薬師様もありますが、そうなると釈迦如来との見分けが非常に難しいです。

●盧舎那仏(るしゃなぶつ)

毘盧遮那仏と呼ぶこともあります。毘盧遮那とは「太陽」や「輝く光」という意味があり、盧遮那仏は蓮華蔵(れんげぞう・宇宙全体)世界に住み、光明を放ち、万物の真理を照らすという、かなりスケールの大きな仏様。宇宙の真理をすべてのひとに照らし導く仏様なのです。奈良の大仏様は盧遮那仏がモデルとなっています。

●大日如来(だいにちにょらい)

密教(1300年ほど前にインドで誕生した仏教の一種)の最高位にいる仏様。宇宙そのものであるといわれている如来で、如来の中では唯一、首飾りや宝冠などの装飾品を身に付けています。髪も螺髪(らほつ)ではなく、結い上げスタイルのお姿が多いようです。

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