日本の歴史

如来と菩薩の違いは?知れば知るほど興味深い「仏像の世界」

菩薩

菩薩とは「悟りを求める者」という意味。如来になるため修行をしている姿を菩薩と呼びます。シンプルないでたちの如来にとは異なり、装飾品類を身につけ着飾っているような豪華な印象。髪は高く結い上げていて優雅な雰囲気を持っています。お釈迦様がまだインドの王子様だった頃の姿がモデルになっているのだそうでです。

如来のほうが偉い、というわけではなく、菩薩のひとつ先に如来というポジションがあります

菩薩も、基本的には修行中のお釈迦様の姿を表す仏像ですが、時とともに様々な菩薩が誕生しています。以下は主な菩薩像です。

●観音菩薩

苦しい目にあっている人の声を聞き、救いの手を差し伸べててくださるのが観音様。姿形も様々で、十一面観音や千手観音など、顔がたくさんあったり、手がたくさんあったりするものもあります。手に水瓶(すいびょう)を持っていることが多く、中には功徳水という水が入っているのだそうです。

●弥勒菩薩

修行中ではありますが、既に如来になることが決まっているという菩薩。現在は仏教の世界の天上界のひとつである兜率天(とそつてん)というところに留まっています。いつ如来になるかというと、お釈迦様が亡くなってから56億7千万年後。はるか未来に如来となって現れ、人々を救うといわれています。仏像としてのスタイルは独特。椅子のようなところに腰掛け、右足を左ひざの上に置き、右ひじついて考え事をしているかのような姿をしています。

●普賢菩薩(ふげんぼさつ)

普賢とは「賢い者」という意味の言葉。普賢菩薩は釈迦如来の脇侍(わきじ)として、釈迦如来と文殊菩薩と共に3つ並んで(三尊)いることが多い仏像です。様々な知恵を用いて人々を苦しみから救う賢者として扱われます。もちろん単体(独尊)の場合もありますが、見た目としては白い象の上に座って合掌している姿が多いです。

●文殊菩薩(もんじゅぼさつ)

「三人よれば文殊の知恵」と言われるように、知恵を司る菩薩として知られています。普賢菩薩と共に釈迦如来の脇に並ぶことが多く、こちらは獅子の上の蓮花台に座っている姿が多いです。

●地蔵菩薩

私たちがよく知るあの「お地蔵さん」のことです。お釈迦様が亡くなってから弥勒菩薩が現れるまでの間、地上に生きるすべての生き物を救うとされています。道端になにげなく立っているあのお地蔵さんたちは、実は仏像であり、大変ありがたい菩薩様だったのです。

明王(みょうおう)

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如来、菩薩の次に来るのが明王。明王とは、仏の教えを守る守護神とされる仏像です。

非常に強い力を持ち、常に怖い顔をしている明王。如来の言うことを聞かない人たちを、怒りの表情でいさめる役割を担っています。手には様々な武器を持っていますが、軍神というわけではなく、その目的はあくまでも「人々の救済」。仏の教えに従わない人たちを力ずくで救おうとしているのです。

明王にもたくさんの種類があります。おそらく、すべての人を従わせ救い出すために、多くの明王像が作られるようになったのでしょう。

●不動明王

もともとはヒンドゥー教の三大神として知られるシヴァであったとされています。災難や厄難、煩悩を断ち切る存在であり、大日如来の化身とも。日本では親しみを込めて「お不動さん」と呼ばれ、人気があります。右手には諸刃の剣、左手には羂索(けんさく・一端に環を付けた縄状のもの)を持ち、背後には激しい炎を従えている姿が一般的です。

●愛染明王(あいぜんみょうおう)

煩悩のひとつである愛欲や執着。この欲望のパワーを悟りに変えて境地まで導いてくれるのが愛染明王。もともとは愛欲を、人々を救済し導くためのひとつの手段としてとらえていましたが、現在では恋愛成就のご利益があると考えられ、大変人気があります。

●孔雀明王

明王の中では珍しく、優しく慈悲深い女性的な表情を浮かべています。手に武器は持っていません。孔雀が神格化したものと考えられており、孔雀に乗った姿が一般的です。

天部

天部とは、天上界に住み、仏様の教えを守る守護神です。役割は明王と似ていますが、種類はもっと多く個性豊か。天部の仏像は実に多種多様です。

インドの古代神話の中に登場する、天界に住む神々に由来するとも言われています。仏の教えを守り、人々に様々なご利益を与えてくださるのです。

「〇〇天」と名の付く仏像は、日本にもたくさんあります。ほんの一部ですが以下に一覧にしました。

●梵天(ぼんてん)

天部の中でも最高位に位置するのが梵天。如来や菩薩を守るのが仕事です。顔が4つ、腕が4本という姿で、人間が身に着ける礼服のようなものを着ている場合が多いです。帝釈天と対で祀られることもあります。

梵天と並んで天部の最高位にいるのが帝釈天です。仏を守る守護神であり、天界から命あるものすべてを見守っています。インドの古代神話の武勇神・インドラがもとになっていると言われており、裾の長い服や甲冑を身に着けて武器を持っている猛々しい姿が多いです。

●毘沙門天(びしゃもんてん)

戦国武将・上杉謙信が信仰していたことで知られる毘沙門天は、持国天、増長天、広目天と共に「四天王」と呼ばれる天部の武神です。四天王では多聞天という呼び名で表されます。四天王として、独尊として、日本でも大変人気の高い仏神です。

●四天王(してんのう)

四天王とは、仏教の世界の中心にそびえる須弥山に住む帝釈天に仕え、東西南北四方を守る神様です。東が持国天(じこくてん)、南を増長天(ぞうちょうてん)、西を広目天(こうもくてん)、北を多聞天(たもんてん・毘沙門天)が守ります。日本の四天王の仏像はどれも甲冑と武器を身に着け、邪悪なものを踏みつけるようなポーズをとっているものが多いです。

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