5.さまざまな紋章が使われているドイツの旗あれこれ
ドイツは連邦州であるため、たくさんの州や都市自治体で構成されていますね。もちろん各自治体にも旗はあり、それぞれ様々な意味を持っている訳です。そこで特に「国旗」というわけではありませんが、自治体ごとの旗と、それが持つ意味を解説していきましょう。
5-1.ラッパの紋章を持つ「ドイツ郵便旗」
Jwnabd – 投稿者自身による作品 Anordnung über die deutschen Flaggen vom 7. Juni 1950. (BRD), パブリック・ドメイン, リンクによる
日本で郵便局を表す記号やマークといえば「〒」ですが、これは旧逓信省の「テ」からきているといわれていますね。ドイツの場合は郵便局のマークといえば「郵便ラッパ」がモチーフとして使われています。
その昔、郵便馬車がその到着を知らせるために用いていたといわれ、ポストホルンという愛称もありました。
ドイツ国旗の3色の真ん中に郵便ラッパをあしらったデザインが「ドイツ郵便旗」と呼ばれるものなのですね。ドイツ統一後の1994年まで使用されていましたが、ドイツ連邦郵便がその後民営化したため、現在は使われていません。
5-2.元気な跳ね馬がモチーフ「ニーダーザクセン州旗」
有名な自動車メーカー「フェラーリ」や「ポルシェ」のシンボル「跳ね馬」とソックリの紋章を用いているのがニーダーザクセン州の州旗です。ただし、ポルシェの跳ね馬の色は黒であり、その本拠地であるシュツットガルト市が由来となっていますね。
ニーダーザクセン州の州旗に描かれている跳ね馬の色は白で、実は中世初期にフランク王国と対峙したザクセン公ヴィドゥキントが乗っていた伝説の白馬からきています。これ以降、ザクセン家では白い馬が紋章となったそうですね。
5-3.自由と独立を謳歌したハンザ自由都市の象徴「ハンブルク市の旗」
赤地に「城壁」をモチーフとしたものがハンブルク市を表す旗であり紋章なのですが、そこにも深い意味が込められています。
ハンブルクは中世ヨーロッパにおいてハンザ同盟といわれる都市同盟を結び、商人の街としてヨーロッパの経済圏を支配していました。
しかし、この自由都市ハンブルクの独立を脅かすデンマークやイングランドなどの外敵との戦いの歴史も忘れてはならないでしょう。20世紀に至るまで同盟を維持し続けたプライドが旗には表れているのですね。
そのため旗には、高い城壁と閉ざされた門が描かれ、これが独立を意味していると言われています。そして真ん中に描かれている塔が今は存在していないマリエン大聖堂。両側の塔の上には聖母マリアの象徴でもある星が描かれていますね。
5-4.かわいいクマがシンボル「ベルリン市の旗」
ドイツの首都ベルリンはまさにクマの街といってもいいくらい。あちこちにクマをモチーフとしたオブジェやキャラクターなどが見られますね。
ベルリン国際映画祭のグランプリも金熊賞と呼びますし、ベルリン動物園でもホッキョクグマが人気を博したことでも有名です。
余談ですが、日本のドイツ菓子メーカー「ケーニヒスクローネ」も同様に、かわいいクマのデザインをあしらっていますね。
Flaggenentwurf: unbekannt diese Datei: Jwnabd – Gesetz über die Hoheitszeichen des Landes Berlin. Vom 13. Mai 1954. (PDF, 61.511 Bytes) Farbgebung nach Vorgabe des Landesarchivs Berlin: Rot – HKS 14 (RGB 226-56-42, #e2382a, Umrechnungstabelle Druckfarben + Screenfarben), パブリック・ドメイン, リンクによる
ではなぜクマがこれほど愛されているのか?その答えは中世のベルリンに遡ります。
神聖ローマ帝国の選帝侯であったブランデンブルク辺境伯がベルリンの支配を行う代わりに、ベルリン市民を庇護し特権都市とするという関係が出来上がったからですね。そして市民も自らの紋章を望んだ結果、それがクマだったという説も。
ブランデンブルクの紋章は「赤い鷲」ですが、中世ベルリンの紋章は「鷲の下でクマが支えている図柄」もしくは「クマの首輪の先に鷲のモチーフがある図柄」などが見られるのです。
ブランデンブルク侯から始まり、ホーエンツォレルン家(中世から近世まで長きにわたりベルリンを支配した)に至るまでの支配貴族との関係性を如実に表しているものなのでしょう。
国旗は国の歴史そのもの
旗にはそれぞれ、成り立ちの歴史や先人たちの思いが垣間見えてきますね。ドイツの場合、国旗だけではなく、それこそ16州すべての州に旗があり、それぞれ深い意味が込められているのです。旗の意味を知ること。それはその国やその地域の歴史を知ることにも通じるのではないでしょうか。