アメリカが主張する「原爆を落とした理由」
アメリカは「本土決戦になれば、多くのアメリカ人の犠牲者が出ただろうから、戦争を早く終わらせるために原爆を投下した。」と説明しており、今でもアメリカ人の多くはこの考えを信じています。
しかし、原爆が落とされる前、日本はすでに100を超える都市がアメリカによる無差別爆撃にさらされ、多くの人が亡くなり、戦争を続ける力は残っていませんでした。日本との戦いを指揮していたアメリカの軍人の中には「原爆を落とさなくても日本は降伏していた。」と考える人も多くいます。
日本はなぜ原爆を落とされる前に降伏しなかった?
戦争を終わらせるには、連合国が提示した条件を受け入れる必要があります。アメリカ率いる連合国は、日本に「無条件降伏」を求めました。「無条件降伏」ということは、日本は降伏する際に、連合国側にどんなお願いもすることができないということです。
この「無条件」での降伏が日本を悩ませます。というのも、日本は降伏する際にどうしても「国体護持」という条件をつけたかったのです。「国体」とは国のあり方のことで、日本にとっての「国体護持」とは「天皇がいる国のあり方を続けること」を意味します。
「無条件降伏」を受け入れれば、天皇が戦争犯罪人として裁かれたり、天皇制が廃止され、「国体」が守れなくなるおそれがありました。それは日本にとって、最もあってはいけないことだったのです。
アメリカが原爆投下を選んだ理由
こうした日本の事情を知っていた人の中には、「原爆を落とすよりも、降伏条件を修正して、天皇制を維持できるように日本に伝えれば、戦争は早く終わり、多くの命を救うことができる。」と大統領に伝えた人もいました。しかし、トルーマンは受け入れませんでした。なぜアメリカは戦争を終わらせる方法に、降伏条件の修正ではなく、原爆投下を選んだのでしょう?本当の理由は分かりませんが、色々な説がとなえられています。
1. 原爆を実際に落として、威力や人体への影響を確かめたかった。
原爆の開発には莫大な予算がつぎ込まれたため、せっかく完成させた原爆を使わないわけにはいきませんでした。また、実験では都市の破壊の様子や人体への影響が分からないので、実際に落としてデータをとるためだったという考えがあります。
2. ソ連に原爆の威力を見せつけたかった。
アメリカとソ連の間には、同じ連合国でも「資本主義国アメリカ」対「社会主義をめざす国ソ連」という対立がありました。アメリカはソ連に原爆の威力を見せつけて威嚇し、第二次世界大戦後の世界の支配権をスムーズに握ろうとしたという考えです。
原爆投下が切り開いた核軍拡競争の時代
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原爆の開発から投下までには、様々な人が関わっていたので、投下した理由も1つではなく、色々な人の考えや政治的な要因が重なった結果でした。アメリカは原子爆弾を投下したことで、日本との戦争は終わらせたかもしれません。しかしこの結果、今までよりもはるかに威力の大きい爆弾の開発を競い合い、人類の未来までをも脅かす核軍拡競争の時代の幕を開いてしまいました。日本は唯一の被爆国として、核兵器の恐ろしさを正しく理解し、後世に語り継いでいくことが、今この時代に求められているのではないでしょうか。
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