小説・童話あらすじ

現代文学の基礎と称される長編小説『ドン・キホーテ』を解説!スペインの文豪セルバンテスが描く滑稽小説の世界とは?

4-6ドン・キホーテの最期

医者に正気に戻ったと伝えられた、姪や家政婦、従者サンチョは、涙を目いっぱいに浮かべます。その後、彼はこれまでの騎士道的行為を反省し、死んでしまいました。このシーンでは、悲壮感すら漂い、彼の人生観を捕えることができます。最後の最後にセルバンテスは、意図的に読者が独自の解釈ができる面白さを与えたのでしょう。

レパント海戦での負傷やアルジェでの捕虜生活、アルマダ海戦で負けイスラムの影響を受けていたといわれるセルバンテスは心情的に抑圧されたといわれています。激動のヨーロッパに翻弄されいくつもの大きな事件に巻き込まれた重く辛い彼の体験を、コミカルに盛り込んだともいえるでしょう。

『ドン・キホーテ』を読めば、宗教改革の真っただ中で異端審問所が目を光らせており、発言の自由はなく真意を直接表現することができなかった歴史的背景も見えるのです。セルバンテスは、前編にも後編にも、「騎士道物語のパロディ」と明言しています。キホーテ最後の悲壮感は、ここに繋がっているのではないでしょうか?

『ドン・キホーテ』は、世界で一番読まれた名作!読めば読むほど味がでる長編小説

image by iStockphoto

『ドン・キホーテ』は、世界で一番読まれた小説なので、一度は読んでおきたい文学作品です。でも、単行本6冊と初心者には苦痛かも。単に滑稽譚として、前半3冊だけ読んでみるのもおすすめです。6冊全て読めば、単なる滑稽本ではなく、複雑な小説というのが分かってくるはず。セルバンテスの人生観を感じるのは後回しにして、面白い「滑稽本」として読むのが『ドン・キホーテ』の最大の魅力かも知れません。

1 2 3 4
Share: