アメリカの歴史独立後

秘密結社「クー・クラックス・クラン(KKK)」とは?白人至上主義の暴走をわかりやすく解説

白装束で、白い三角頭巾をすっぽりと被り、白人至上主義を唱える過激な秘密結社「クー・クラックス・クラン(KKK)」。黒人をはじめとした有色人種を相手に、数々の残虐な事件を起こした狂信的集団として世界的に有名です。19世紀後半に起こったアメリカの南北戦争後に、アメリカ国内で広まったこの集団は、白人のプロテスタントのみが「アダムの子孫」として、人間以下の犯罪を数多く起こしました。ではその根本にあるのは何だったのか?KKKの正体に迫りましょう。

第1のKKK――南北戦争後の混乱の中で

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クー・クラックス・クラン(KKK)が誕生したのは19世紀後半、アメリカ全土をゆるがした内戦・南北戦争の後のことです。北部州の勝利に終わった、自由の国アメリカを二分させたこの内戦。敗者の南部では無政府状態が続き、政情不安がまんえんし、そして白装束の集団が馬に乗って解放奴隷の黒人を襲撃するように……。「第1のKKK」の時代をたどりましょう。

文学・小説が描いた「クー・クラックス・クラン誕生」の風景

わかりやすく当時の光景を解説するために、アメリカ文学を代表するマーガレット・ミッチェルの長編小説『風と共に去りぬ』を紐解いてみましょう。映画化もされた、「明日は明日の風が吹く」のセリフで有名な小説です。アメリカ南部生まれの女性スカーレット・オハラの半生を描いた作品ですが、この作品でメインに描かれるのが南北戦争。日本の幕末期にあたる1861年から4年間、奴隷制や近代化の進行にともなう経済問題などをめぐって戦われた、北部(自由州)対南部(奴隷州)の内戦です。

南部は農耕や綿花栽培の労働力として黒人奴隷を使役していました。過重労働や虐待、非人道的な扱いがあったと言われていますが、ある種の秩序でバランスは保たれていたのも事実。スカーレットのオハラ家も黒人たちとファミリーな関係を築いています。しかし戦争の末、奴隷解放が行われました。問題はここから。非常に革命的な、人類にとって(というより西洋人にとって)最大の前進でもあった奴隷解放宣言でしたが、南部諸州をまとめていた政府が解散され、北部政府が統治をはじめたのに伴い、南部には政治的混乱が広まりました。

警察もいなければ行政も機能しない、そんな無政府状態の大混乱の中で誕生したのがKKKです。差別というものは、相手が脅威だと感じる自衛本能から発生するという側面があります。黒人は劣っており愚かで、白人の統制が及んでいなければ反社会的かつ凶暴、という偏見も非常に強かったのです。ちなみに世界的にKKKの名前が有名になったのは、イギリスの作家コナン・ドイルの大人気探偵小説、シャーロック・ホームズシリーズの短編『オレンジの種五つ』の題材として使われたからなんですよ。ところで『風と共に去りぬ』では南北戦争後の社会が写実的に語られており、過剰な黒人差別はそこまで見当たりません。

19世紀の一大ブームだった「秘密結社」、KKKの誕生

実は当時19世紀アメリカでは秘密結社が大流行!アメリカ人の5人から8人のうち1人は何らかの結社に加盟しているといった具合でした。秘密結社とは、結社の存在そのものが秘密であるという他、構成員が秘密結社に所属しているということを公開されることがないこと、結社の活動内容そのものが明かされないこと、などの特徴を持ちます。

クー・クラックス・クランもまた、この秘密結社ブームに乗った政治思想団体の1つでした。南部連合の元奴隷商人であり退役軍人の、ネイサン・ベッドフォード・フォレストによって作られた組織に端を発するというのが一般的な見解です。神秘的な儀礼により信者を引き寄せ、位階を定めて(ちなみに後に指導者として推薦されたネイサン・ベッドフォード・フォレストの称号は「グランド・ウィザード」。直訳だと大魔道師)集会を行いました。

クー・クラックス・クラン(Ku Klux Klan)という不思議な響きの結社名は、ギリシャ語の「kuklos(円環、集まり)」が訛ったものと、英語の「clan(氏族、一族)」を変形させたものという説が有力です。会員は「クークラクサー」「クランズマン」と呼ばれました。

レコンストラクションへの反抗、無政府状態と自然消滅

主にアメリカ南部の白人によって組織されたKKK。そもそも最初の目的は反奴隷解放でも有色人種弾圧でもありませんでした。北部によって1863年(奴隷解放宣言の年)から1877年までの長期間に渡って行われた南部の統治・レコンストラクション(リコンストラクションとも)への反発です。南北戦争という内戦によって分断されたアメリカ合衆国をもう一度1つにする目的で行われた政策でした。

このような反抗的思想は単純だからこそ暴走しやすいものです。最初はデモをしたり、白装束で黒人居住区を練り歩いて嫌がらせをする、といった程度でした。やがて過激化。彼らは独断で決めた(法律や政府が定めたわけでもない)「黒人が出歩いてもいい時間」以外に外出した黒人をムチで打ったり、「ナイトライダー」と呼ばれる馬に乗った団員が脅迫、暴行を加える事件を次々に起こしました。

反奴隷解放、反黒人。自分たちに対して反対の意見を持つ白人を襲撃したり、戦争後に与えられた投票権を使って選挙に行こうとした黒人を殺害する事件など、目に余る暴走ぶりに軍部による制圧も何度も行われました。しかし必要がなければ過激な差別もじょじょに薄れていくもの。すべての南部州がアメリカ合衆国に忠誠を誓い、結局のところ有色人種への差別は残り、戦後処理が完了したと判断されレコンストラクションが終わった1877年以降、そもそもレコンストラクションへの反抗として結社していたKKKは存在意義を失います。そして自然消滅し、アメリカから姿を消したのでした。

第2のKKK――クー・クラックス・クラン史上最悪の時期

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40年弱の沈黙を経て、自然消滅したと思われていたKKKは復活します。きっかけはまたしても戦争でした。1914年から4年半、世界中を戦場として約1000万人が亡くなった第一次世界大戦。非常事態の間というものは疑心暗鬼となり、世間がピリピリとなるものです。アメリカは戦場にはなりませんでしたが、共産主義やナチスの脅威はすぐそばにありました。第2のKKKは、戦争が呼んだ恐怖の光景の1つです。

神のお告げ、復活と発展へ

81年後に平和の祭典オリンピックが開かれることになる、ジョージア州の都市・アトランタ。1915年「神のお告げ」を受けたという男があらわれます。名前はジョゼフ・ウィリアム・シモンズ。伝道師の彼によって新たに再建されたKKKは、敵国からやってきた移民から祖国の民衆を守るという「愛国者集団」として立ち位置を確立したのです。

奴隷解放宣言を行ったわりに、合衆国政府は有色人種や黒人に対し平等な人権を与えるつもりは全然ありませんでした。人種差別を法的に肯定する「ジム・クロウ法」は南北戦争直後に作られた法律です。また、シモンズに神のお告げが下ったのと同じ年の1915年には映画「國民の創生」が公開。南北戦争直後の南部社会で、解放奴隷の黒人たちが政治的混乱を引き起こす中、2つの家が和解し結ばれるというストーリーのこの映画。一方的に黒人が悪として描かれたこの映画が大ヒットしたことから、KKKへの入会者は増加したとも言われています。

この第2のKKKは、黒人のみならず有色人種全般を加害対象としました。人種主義だけではなく民族主義、宗教も大きく影を及ぼし、反黒人、反有色人種、反ユダヤ人、反ムスリム、反カトリック、反共産主義と排外対象を拡大したのです。リンチを伴う集団での暴力というものは、だいたいうっぷん晴らしですが、これを強く支持したのは白人貧困層。彼らにとって「アメリカ人」は白人のプロテスタント・キリスト教徒のみだったのです。第一次世界大戦が1918年に終戦した後もKKKは存続し、1920年にはKKKの構成員は500万人にものぼりました。

おそろしくプライドが高い!KKKの「白人至上主義」ってどんなもの?

ちょっとここで「白人至上主義」をじっくりと見ていくことにしましょう。私たちが一口に「白人」とくくっている中には、アーリア人やケルト人、サクソン人など細かい違いが存在します。その中でもKKKが「白人認定」しているのは、北方人種(ノルマン人)のみ。アダムの子孫であるのはこの北方人種だけ、つまり北方人種以外は人間として考えていないのです。

さらに日本人にとっての理解を難しくするのが、プロテスタントのみが正しいという思想。アメリカはもともとカトリックの抑圧を逃れたプロテスタント教派の人びとが作った国、という側面を持ちます。このあたりの宗教対立の感覚は非常に微妙で政治的、敏感なもの。20世紀後半にローマ教皇(法王)ヨハネ・パウロ2世らの宗教界のトップたちがカトリック・プロテスタント・正教会(さらにもっと細かい他の教派もありますが)ら相互の破門を解いて平和路線に切り替えましたが、それまでは思想的・政治的にもカトリック・プロテスタント双方がかなり敵対的な関係にあったのです。

アメリカの保守エリート層であり、合衆国建国に携わってきたというプライドがある「WASP(White Anglo-Saxon Protestant ホワイト アングロ・サクソン プロテスタント)」をKKKは取り込んでいきました。また、アメリカ合衆国の西部開拓や植民地支配を正当化するマニフェスト・デスティニーを掲げているのもKKKの特徴。一言でまとめると彼ら、とんでもなくプライドが高いのです。

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