薔薇戦争はなぜ起きた?百年戦争とランカスター家
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端的に言ってしまうと「イングランドの内部抗争」であった薔薇戦争。この戦争の前に、イングランドはフランスとの間で100年もの間、戦争を繰り返していました。百年戦争の直後に起きた薔薇戦争とは、何が原因で始まってしまったのでしょうか。薔薇戦争の背景と経緯について見ていきましょう。
すべてはここから:4つの公爵家とイングランド
薔薇の話に入る前に、イングランド王朝の流れについて少しだけ見ておきましょう。
14世紀、イングランドにはエドワード3世という王様がいました。
百年戦争の中心人物でもあった王様です。
そのエドワード3世は子だくさん王でした。成人した男の子が少なくとも5人。そこでそれぞれにコーンウォール公、クラレンス公、ランカスター公、ヨーク公、グロスター公など公爵位を与えました。
そして、3番目のジョン・オブ・ゴーントによるランカスター家と、4番目のエドマンド・オブ・ラングリーによるヨーク家が、後々、薔薇戦争の中心となっていきます。
やめときゃいいのに:百年戦争の敗北と国内情勢
1339年から始まった百年戦争。先に登場したイングランド王エドワード3世が、フランス王位継承を主張してフランスに挑戦状を叩きつけたことから始まった戦争です。
当時、フランス内に広大な領地を所有していました。
そして1328年、フランス王室カペー朝が断絶してしまいます。
ここに口をはさんできたのがエドワード3世です。
エドワード3世、フランスに領地がたくさんあるので、もしかしたら自分にもフランス王になる資格があるんじゃないのかしら?と考えます。
しかし当のフランスはこれを却下。で、エドワード3世が宣戦布告。
当のエドワード3世は1377年にこの世を去り、王位は孫にあたるリチャード2世が継承。当時まだ10歳でした。
両国の戦争は1453年まで、およそ100年もの間続きます。
100年も続いたので、その間、イングランドが優勢に立ったこともありましたが、結果は敗北。イングランドはそれまでフランス内に持っていた領地のほとんどを失い、撤退を余儀なくされます。
イングランド国内では財政が悪化。民衆だけでなく貴族たちからも不満の声が上がっていました。
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当然そうなる:ランカスター家とヨーク家の対立
百年戦争が終結する前から、イングランド国内では公爵家同士の争いが始まっていました。
当時、王位についていたのは、ランカスター朝ヘンリー6世でした。
ヘンリー6世は百年戦争の敗北とイングランド国内の勢力争いで神経をすり減らし、精神に異常をきたすようになります。
これに目を付けたのが、かねてからランカスター家の王位継承を面白く思っていなかったヨーク家。ヨーク公リチャードが王座を狙い暗躍します。
一方のヘンリー6世……は頼りにならないので、王妃マーガレットが息子のエドワードの後ろ盾となり、貴族たちを束ねてこれに対抗。
ここから、薔薇戦争が始まります。
なぜ薔薇戦争?:両家のシンボルに由来
「薔薇戦争」の名前は、ヨーク家、ランカスター家それぞれの紋章から来ています。
ヨーク家は白い薔薇をシンボルにしていました。これに対し、ランカスター家は赤い薔薇をシンボルにしていたのだそうです。
ただ、ランカスター家の紋章は、戦争勃発当時はまだ赤薔薇ではなかったといわれています。もしかしたら、ヨーク家の白薔薇に対抗して後から考えたものなのかもしれません。
いずれにしてもこの呼び方は、自分たちが「薔薇戦争を始めるぞ!」と言い出したわけではなく、後世の人々によって付けられた名称。いつ頃から「薔薇戦争」と呼ばれるようになったのか、よくわかっていません。
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もとはといえば、みんなエドワード3世の子孫たち。でも長い歳月が経ち、代替わりしていて、同胞というより敵という見方が強まっていたと思われるランカスター家とヨーク家。とうとう戦争勃発。薔薇戦争はなかなか終結せず、30年も続きます。その後の流れを見ていきましょう。
薔薇戦争(1)ヨーク家の台頭
1455年、ヨーク公リチャードはロンドンの北側にあるセント・オールバンズでヘンリー6世の軍と激突。これが物理的な直接対戦となります。
この対戦ではヨーク軍が勝利。
その後も、頼りない国王に対し、ヨーク公の人気はうなぎのぼり。支持を集めるようになります。
しかし、激しい戦火の中、ヨーク公リチャードとその息子のラトランド伯が戦死。ランカスター家も中心となる人物が次々と命を落としていきます。
とうとう、ランカスター家は王位を維持できなくなり、ヘンリー6世に代わって、ヨーク家リチャードの長男・エドワードがエドワード4世して玉座に。ヘンリー6世は逃亡し、ランカスター派は一掃されてしまうのです。