イギリスヨーロッパの歴史

「ブレグジット」とは?離脱の背景やイギリス政府・議会の動きなど元予備校講師がわかりやすく解説

国民投票後のイギリス政治

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EU離脱を決定したイギリスですが、すんなりとEU離脱でまとまったかというそうではありません。キャメロン政権の跡を継いだメイ政権は、離脱決定から3年にわたり、EUや国内での対応に追われることになります。メイ首相が総辞職したのち、強硬なEU離脱派と目されていたジョンソン外相が首相に就任。ブレグジット実現のため、総選挙を実施しました。

メイ政権によるEU離脱交渉と議会の反対

2017年3月29日、イギリス政府はEU条約(リスボン条約)第50条の規定を発動させ、EUに対し脱退を通告しました。これを受けて、欧州理事会議長のトゥスクは、イギリスの脱退に備え、迅速に対応すると表明します。

この通告により、2年後の2019年3月29日にイギリスがEUを離脱することが確実となりました。メイ政権は秩序あるEU離脱を実現するため、EUと話し合いをおこないます。

また、国内の同意を取り付けるため、メイ政権はEU離脱法を議会に提出しました。しかし、議会ではメイ政権のできるだけ衝撃が少ないEU離脱に対し、可能な限り早くブレグジットを行うべきだとする反対意見や、逆にEU離脱を思いとどまるべきだとする反対意見などがあり、議会の審議は進みません。

2019年に入っても、イギリス議会はメイ首相の離脱案を認めませんでした。完全に事態打開の方策を失ったメイ首相は2019年5月14日に保守党党首と首相を辞任します。

交渉の足かせとなった北アイルランド問題

ブレグジットの足かせとなったのは北アイルランド問題です。北アイルランドは、アイルランド島の北部6州のことで、アイルランドがイギリスから独立した時も、イギリス領としてとどまりました。

アイルランドの主要宗教はカトリック。対して、イギリス人が多く入植した北アイルランドはプロテスタント系の住民が多数を占めていました。1960年代、北アイルランドでは多数派のプロテスタント系住民と少数派のカトリック系住民が衝突を繰り返します。

1998年、北アイルランドの帰属をめぐって和平合意が結ばれました。以来、ともにEU加盟国となったイギリス領北アイルランドとアイルランドの国境は開かれ、自由に往来できるようになります。

しかし、ブレグジットでイギリスがEUを離脱すると、再び国境が閉鎖。人やモノの流れが滞り、かつての対立もぶり返すのではないかと懸念されます。EU離脱後の北アイルランドをどのようにするかについて、皆が納得する結論を見出せなかったことも、ブレグジットが長期にわたって混迷した理由となりました。

ジョンソン政権の成立と合意無き離脱の主張

2019年、メイ党首の辞任に伴い、保守党の党首選挙が行われました。この選挙で当選し、新たに保守党党首・首相に就任したのがジョンソン氏です。ジョンソン氏は党首選で6割以上の得票を得て圧勝しました。

ジョンソン首相は議会の抵抗を封じるため奇策を打ちます。夏休み明けの9月3日、議会を9月第2週から休会にすると宣言しました。

しかし、議会はジョンソン首相に対し、10月19日までにEUと離脱条件に付いて合意できない場合、1年間離脱を延期することをEUに申し出ることを義務付ける法案を可決します。

ジョンソン首相は議会に対し、国民の信を問うため総選挙を行うことを提案しましたが、議会は拒否。しかも、イギリスの最高裁判所はジョンソン首相が行う議会の長期休会を違法だとする判決を出しました。

10月17日、ジョンソン政権はEUとの間で妥協案を成立させ、10月19日までに議会で成立させようとしますが、これも失敗。混乱を避けるためEUはイギリスの離脱を2020年1月31日まで延期することを認めます

2019年12月の下院総選挙

膠着状態だった自体が大きく動いたのは2019年10月29日。ジョンソン首相は解散総選挙ではなく、12月12日に選挙を行うとする法律を制定しようとしました。

解散総選挙では議会の3分の2の同意が必要ですが、通常の法律なら過半数の賛成で成立するからです。ジョンソン首相が出した12月12日に解散総選挙を行う法案に対し、保守党だけではなく野党の労働党なども賛成。ジョンソン政権の信を問う総選挙の実施が決定します。

2019年12月12日、イギリスの下院にあたる庶民院の総選挙が行われました。総選挙では、ジョンソン首相率いる保守党が365議席を獲得。選挙前を67議席も上回る歴史的大勝をおさめます。労働党は203議席にとどまり、選挙前と比べ41議席減らしました。

選挙の結果、ジョンソン首相は議会の主導権を握り、今後のブレグジット交渉を優位に進められることが予想されます。

今後のブレグジット

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総選挙で保守党が勝利したといっても、ブレグジットが完全に成功するかといえば、そうとも言い切れません。北アイルランド問題以外にも、関税の問題、雇用の問題、地域格差、今は目立っていないが潜在的に脅威といえるスコットランドの独立問題などイギリスが抱える爆弾がたくさん残っているからです。これらの問題をどのように解決し、ブレグジットを無事成し遂げられるか、ジョンソン首相の手腕が問われますね。

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