ヨーロッパの歴史

「プランテーション」とは?現地の安価な労働力を利用した大規模農園を元予備校講師がわかりやすく解説

カカオ豆

カカオ豆は、ココアやチョコレートの原料となる豆です。カカオは平均気温が24度から28度の地域で年降水量が2000ミリ以上の場所を好みます。気候区分でいうなら、完全に熱帯雨林気候ですが、カカオの実は落下しやすいため強風地帯での栽培は不向き。

かつ、直射日光に強くないため、日陰をつくるシェードツリーとよばれる「母の木」が必要です。カカオの木は成長すると7から10メートル。かなりの高さになりますね。

カカオの主要生産国はギニア湾沿岸のコートージボワールとガーナ、ナイジェリア。ほかにインドネシアブラジルも生産国として名を連ねます。

ロッテから発売されているチョコレートにガーナとつけられているのは、ガーナがカカオの原産国だから。2003年、ロッテは「ガーナ基金」を設立し、ガーナの技術者を支援しています。

茶は、チャノキの葉や茎を加工して作られる飲み物のこと。チャノキの原産地は東アジア。栽培条件は、年平均気温14度以上で降水量2000ミリ以上。さとうきびやコーヒー豆、カカオ豆に比べると低い気温で栽培可能。そのため、温帯である日本でも栽培されています。

茶の収穫には多くの労働力が必要なので、人口が多いアジア地域は茶の栽培に有利です。茶は大きく分けると、発酵させるものと発酵させないものに区分可能。

全く発酵させないものが、私たちがよく飲む「緑茶」。発酵度の弱いものを「黄茶」「白茶」、半発酵させた茶が「ウーロン茶」、完全に発行させたものが「紅茶」となります。

一度発酵を止め、麹菌などに後で発酵させた茶が「プーアル茶」。ほかにも、茶葉に花で香りをつけたジャスミンティーなどの「花茶」もありますよ。茶の主要生産国は中国とインド、スリランカです。

プランテーションの問題点と発展途上国の経済成長

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欧米諸国から独立した国々は、植民地時代に形成されたプランテーションの作物を輸出することで国の経済を支えました。そのため、作物の価格低迷や生育不良などが起きると、国の経済が大きな打撃を受けます。経済的に不利な発展途上国を支援する取り組みとしてフェアトレードなどが行われますが、それだけでは発展途上国の貧困はなくなりません。発展途上国の中には工業化を図ることで経済成長を達成しようとする国も現れました。

モノカルチャー経済

プランテーションは換金性が高い単一の商品作物を大量に生産する大農園です。ガーナであればカカオ豆、コロンビアであればコーヒー豆、ケニアであれば茶、キューバであればさとうきびなどというように国全体でも一つの作物に頼る状況を作り出してしまいました。

一つ、もしくは少数の作物に国の経済が委ねられている状態をモノカルチャー経済といいます。モノカルチャー経済の国では、作物の生産量や国際価格の変動が国全体の経済に強く影響。一歩間違えれば、国家財政が破綻し国民生活が危機にさらされてしまいます。

実際、2017年にはカカオの供給過剰からカカオ豆の価格が下落し、カカオ豆農家を大いに苦しめました。

フェアトレード

フェアトレード、日本語では公正取引。先進国と発展途上国が農産物などを取引するとき、経済力が強い先進国が優位に立ちます。

そうなると、先進国は可能な限り安く発展途上国の農産物を買いたたくことが発生。発展途上国の農家は安い価格で農産物を売らざるを得なくなります。その結果、発展途上国の農家の所得は向上せず、貧困が改善しません。

こうした不公正な貿易を見直し、発展途上国も利益を得ることができるよう、適正な価格で取引すべきだとして行われたのがフェアトレードでした。

フェアトレードは1960年代から見られるようになり、特にヨーロッパで盛んになります。日本でも1980年代からフェアトレードの取り組みがみられ、生協などを中心にフェアトレード産品が取り扱われていますよ。

モノカルチャー経済から工業国へ

第二次世界大戦後、東南アジア諸国はモノカルチャー経済からの脱却をはかりました。比較的経済力があったシンガポールを皮切りに、東南アジア各国は安い労働力を武器として輸出志向型の工業をそだてます

かつては、コメや天然ゴム、コーヒーなどの一次産品が輸出の主力商品でしたが、現在は輸出に占める工業生産の割合が高まりました

その背景には、積極的に外国資本を誘致し、税制上の優遇を与えて外貨の獲得や技術に輸入をはかる輸出加工区の存在があります。東南アジアで始まった輸出加工区の仕組みは世界90カ国にまで広がりました。

マレーシアのペナン島、タイのサムットプラカーン、シンガポールのジュロン工業団地などがその代表です。こうして、東南アジアは植民地時代よりも経済的に急成長を遂げました

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