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将来の世界発展のカギを握る「第三世界」とは?歴史系ライターがわかりやすく解説

「第三世界」と聞いて、まったくピンと来ない人が大多数のはずです。そんな筆者も詳しく調べるまではそのうちの一人でした。広義の意味ではアジアやアフリカ、ラテンアメリカなどの発展途上国のことを指すのですが、実は第三世界に属する国々が、将来の世界経済発展のためになくてはならない存在であろうこことを様々な経済学者たちが述べていることです。そこで第三世界のあらましや定義、そして今後どうなっていくのか?などについて、わかりやすく解説していきたいと思います。

「第三世界」に属するのはどんな国々?

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現在、国連に加盟している国々は世界に193ヶ国ありますが、【第三世界】に属すると考えられる発展途上国はそのうち70%以上も存在しています。なぜそれほど数が多いのか?そして、なぜ第三世界というカテゴリーが存在しているのか?簡単に説明していきますね。

第三世界の定義とは?

一昔前までは、「第三世界」といえば【西側諸国をはじめとする資本主義国】【ソ連を中心とする共産主義国】以外の国々を指すことがありました。しかしご存じの通り1991年にソ連が解体されたことにより、政治的区分が曖昧となり、「政治的な第三世界」という意味は消滅してしまいました。

現在用いられている第三世界の意味するところは、「経済的な第三世界」ということになります。とはいえ第三世界という語句が使われ始めたのは1950~1970年代ですので、もうずいぶん前のこと。もし現在の世界観で例えるならば、「第一世界」はアメリカ、ロシア、中国、EU、日本などの経済大国。そして「第二世界」は台湾や韓国、オーストラリアなどに当たるでしょうか。「第三世界」はそれ以外の発展途上国という形になるかも知れません。

かつては第三世界に属するとされていた中国に関しても、近年の目覚ましい経済発展によって大国の仲間入りを果たしていますから、第三世界じたいも時代によってその性格を変化させてきたといえるでしょう。

第三世界に属する国々の共通点【旧植民地】

第三世界に属する国々は発展途上国で構成されていると述べましたが、それらの国々の多くはGDP(国民総生産)も低く、経済・生活・社会的インフラも不十分で、国民生活のレベルも高いとはいえません。ではなぜ国家として伸び悩んでいるのか?少し考えてみましょう。

まず発展途上国の多くに共通しているのが、かつて【旧植民地】だった国が非常に多いということ。アフリカ地域をはじめアジアやラテンアメリカなど、植民地ではなかった場所を探すことの方が困難です。

植民地時代に宗主国によって物的資源や人的資源を搾取され続け、第二次世界大戦後に独立を果たした国が圧倒的に多いのですが、宗主国が去ったとしても西欧型の社会制度はなかなか機能せず、国を担うべき人材は育っていないのが実情でした。

さらに経済的にも旧宗主国や先進国に従属せねばならない状況が続いており、より安価な原料と労働力を求めて先進国企業が進出してきています。また資金力にモノを言わせた市場原理を発展途上国の国内企業に押し付け、国内産業の発達を阻害しているのです。

第三世界に属する国々の共通点【政治闘争や内乱】

発展途上国の多くは戦後になって独立したケースがほとんどです。いわば新興国といえるのですが、そこには政治イデオロギーの違いや民族間対立など、国家の発展を阻害する要因が含まれていました。

例えばコンゴ動乱などが顕著でしょうか。コンゴは独立を果たしたものの、宗主国ベルギーの言いなりとなる政府に不満が高まってクーデターが勃発。軍政が敷かれるものの、独裁的に鎖国同然の政策を行ったため経済成長がストップしてしまいます。さらに不満が高まって今度は別の勢力がクーデターを起こし、現政権をひっくり返してしまうという有様でした。

アフリカ中部の国ウガンダも同様です。政変に次ぐ政変で国家の基礎がまったく安定せず、ついには内戦が収まらなくなって今世紀に入るまで火種はくすぶり続けていました。

発展途上国における政治闘争や政変、そして内戦は、国民生活そのものを破壊するだけでなく、多くの難民をも生じさせることに繋がります。それが国の発展を阻む大きな原因の一つだといえるでしょう。

第三世界に属する国々の共通点【人口圧力】

発展途上国では多産という傾向が強く、いわば子供を産む数が多いということ。人口が多いゆえに国民一人当たりの所得も少なくなり、失業率も高い傾向にあるのですね。また世界人口も低所得国に偏在しています。それは単に貧乏国だから子供が多いということではありません。そこには2つの理由が考えられるのです。

かつての宗主国が西欧諸国だった場合、植民地を教化するためにキリスト教を布教していました。ですから現在でも発展途上国にはクリスチャンが圧倒的に多いといえるでしょう。世界のクリスチャンの総数のうち、およそ半分以上をアフリカとラテンアメリカが占めているほどです。

ご存じの通りキリスト教徒は避妊と中絶を禁じているため、子供の数が多くなることは必然でしょう。また乳児の死亡率も比較的高いために、なるべく多くの子供を産んでおきたいということが言えるかも知れません。

また発展途上国では共通して「子供は貴重な労働力」という認識があります。子供がある程度の年齢になれば、親の仕事を手伝ったり、物売りをすることで家計を支えるのです。しかしそのための弊害もあり、多くの子供が高度な教育を受ける機会を持たないために教育水準が上がらないという事実があるのですね。

国家経済が成長しないにも関わらず、人口圧力によって国家そのものを圧迫しているといえるかも知れません。

第三世界の国々の現状とは?

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第三世界に属する国々の発展がいまだ途上にあるといっても、世界の経済動向は刻々と変化しています。そうした中、第三世界の国々の中でいったい何が起こっているのか?実例を挙げて解説していきましょう。

石油王のいる国なのに【発展途上国】とはどういうこと?

ドバイを擁するUAE(アラブ首長国連邦)をはじめ、中東の原油産油国はお金持ちだというイメージがありますよね。しかし定義としては先進国には入らず、発展途上国のような扱いとなっています。これはいったいどういうことなのでしょうか。

一般的に先進国の条件として、国の実質的トップが民主的に選ばれねばならないということがあります。ちなみにUAEは各地域の首長(いわば王様)たちの連合国家ですし、ヨルダン、オマーン、バーレーンなども王国です。そういった意味では先進国とは言えず、開発途上国という呼ばれ方もしていますね。

UAEの場合、世界に名だたる産油国ですが国家の運営をすべて王族が取り仕切っています。なぜなら莫大な石油利権を一手に握ることによって、それを自国民に還元しているからです。国民から税を取らずに経済を回し、国を豊かにしようという政策ですね。だから国民は誰も文句は言いません。

しかしそんな恩恵を受けられるのは人口の1割程度の自国民のみ。その他はすべて外国人(いわゆる移民)ですね。しかし今でこそ、そのような経済政策が可能ですが、近い将来、原油が枯渇したり、化石燃料を使わないエンジン(電気や水素など)が主流となった時、あっという間に正真正銘の発展途上国へ転落する可能性は避けられないでしょう。そういったリスクもはらんでいるといえますね。

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明石則実