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将来の世界発展のカギを握る「第三世界」とは?歴史系ライターがわかりやすく解説

アフリカ諸国へ経済援助をすることで中国が勝ち組に?

中国がアフリカ諸国に対して、積極的に投資や資金援助を行っていることはニュースなどでも頻繁に報道されています。しかしなぜ地理的にも遠く離れている中国が、発展途上国に対して大規模な資金を投じているのでしょう?それは決して政治的思惑というわけではなさそうです。

中国は急成長する自国経済を背景に、必要不可欠な石油や鉄鉱石などの資源獲得を最大の関心事としています。今世紀に入ってからの不安定な中東情勢もありますし、リスク軽減のためには世界規模で資源の手当て先を見つけることが優先課題になりました。そこで白羽の矢が立ったのがアフリカ地域だったのです。

目的は、資源を持つ発展途上国に対して、投資や経済援助を積極的に行うことで優先的に資源を確保しよういうこと。もちろんライバルである欧米の民間企業も競合しますが、2兆ドルもの外貨準備高を擁する中国相手では勝負になりません。

そして現地に投資した資金は、インフラ整備や生産設備の建設、様々な事業に使われます。そこで現地の雇用を生み、経済基盤を確立させ、経済発展へと導いていくわけです。

そうすることで中国にとっては新しい消費市場を生み出すことができますし、自国の製品をバンバン売り込むことも可能となりますね。

資源を安定的に確保し、作った製品をまた新しい市場で売り込む。中国にとってはまさに一石二鳥の効果があるというわけです。こうした動きに対してアメリカは、中国に対して貿易規制を掛けて牽制するものの、有効な手段を講じられないままになっていますね。

いまだに乗り切れないラテンアメリカ諸国

いっぽうラテンアメリカ(メキシコを含む南アメリカ諸国)へ目を移すと、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンといった国々がG20(地域首脳会合)に入っていますが、経済パフォーマンスは良いとは言えないのが現状です。

1980年代に債務危機に陥るものの、90年代にハイパーインフレを脱したラテンアメリカ諸国。天然資源の高騰を背景に経済成長を遂げますが、それらの価格が下落した途端に経済危機に陥るというアキレス腱を抱えているのです。

それに対してアジアの発展途上国が、近年盛んに工業化を進めてきたことにより経済的に潤っているのとは対照的に、ラテンアメリカ諸国に関しては今一つ波に乗り切れていない感がありますね。

その理由の一つとして、アジア諸国の場合は古くから国家間での交易が盛んで人や物資の往来が絶えなかったのに対し、ラテンアメリカではアンデス山脈やアマゾン流域といった障壁が邪魔をして、なかなか国家間での交流が難しかったことが挙げられるでしょうか。

そのため広大な地域間での生産ネットワーク構築の考えが広まらずに、あくまで国内向け小規模生産にのみ注力してしまったこと。それゆえに外資系企業の進出も遅々として進んでいないということなのです。

ラテンアメリカ諸国の今後の発展のためには、やはり外資を呼び込み、北米を含んだ包括貿易を積極的に推し進めることが肝要なのでしょう。

第三世界の国々が果たす将来の役割

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産業や経済が先進国ほど発展せず、経済停滞や貧困に悩まされてきた国々にとって、明るい未来は待っているのでしょうか。最後に、第三世界の国々が果たすべき将来の役割について解説していきたいと思います。

若い世代が多く、活力のある国づくりができる

先進国と発展途上国の平均年齢を比べれば、明らかに人口ピラミッドの形態は違いますよね。例えば2019年度の発表によれば先進国で最も平均年齢が高いのが48.35歳の【日本】です。かたやインドを例にとれば平均年齢は26.4歳で、若年層の割合が高いことを表しています。

また国民が労働に従事している年齢人口を【生産年齢人口】と呼びますが、日本の場合は統計の始まった昭和25年以降、最低の水準で推移していますね。10人のうち4人は働いていないという計算になるのです。もちろんこの傾向は少子高齢化と比例していて、このまま何の手段も講じなければ老人ばかりの国になってしまうことでしょう。

インドなどの発展途上国と呼ばれる国々は、この生産年齢人口が非常に高く、主要先進国の老齢化を横目にして、将来的に活気ある国づくりができる素地が出来上がっているのかも知れません。

特にインドが注目されているのは、近い将来、GDPで日本を抜くくらいの勢いがある点ですね。アメリカ、中国に次ぐ経済大国になる可能性は十分にあるでしょう。

発展途上国がクリアしなければならない問題

発展途上国の経済が活性化しない原因について、もちろん政治体制の杜撰さやインフラが整っていない現状もあるでしょう。しかし国民間の「民族問題」「宗教問題」などもクリアしなければならない壁だといえます。

国民同士が反目しあうと差別や衝突の温床となりますし、それらが国情の不安定化に繋がるために、外部からの資金援助や投資などを結果的に呼び込めなくなってしまうことに。やはり国としての信用は非常に大事だということなのです。

しかしながら民族や宗教における諸問題は、長い歴史に裏打ちされた根深いものですから、簡単に解決するものではなく、やはり長い時間を掛けながら和解の方向へ向かわせなければならないでしょう。国民の結束なくして豊かな国づくりは成しえないことだと思います。

また紛争や衝突の背景として、大国の思惑が絡むことがよくありますね。政治的・軍事的に介入することで、少しでも大国の有利になるように誘導する動きが見られます。これはパレスチナ問題クリミア危機など、国際社会にとって対岸の火事では済まされないことではないでしょうか。

そう、国連安保理事国がいつも正義だとは限らないのです。

より良い世界の理想像とは?

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過去の歴史をひも解けば、先進国と第三世界の国々とは「搾取する側」「搾取される側」でした。そういった関係性が近年は変化しつつあり、中国が力を入れている【一帯一路政策】や、日本を含んだ【TPP(環太平洋パートナーシップ協定)】など、先進国や第三世界を巻き込んだ経済の一大ムーブメントが起こりつつあります。将来、世界のキャスティング・ボードを握るのは第三世界の国々なのかも知れません。

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明石則実