イギリスヨーロッパの歴史

「シェイクスピア」とは?その名作もジャンルごとにわかりやすく解説

『ロミオとジュリエット』や、『ハムレット』。読んだことがなくてもなんとなく内容を知っていたり、タイトルを知っていたりする人が多い作品ではないでしょうか。作者はシェイクスピア。彼の作品は現代においても舞台で上演され、長い間世界中の人々に親しまれてきました。今回はシェイクスピアが残した名作の数々を、あらすじなどを交えて紹介していきます。

シェイクスピアという人物について簡単に

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作者について知ることで、作品をより深く理解できるようになることもありますよね。そこでまずは、世界中で愛される名作を数多く書いた作家・シェイクスピアその人について紹介していきます。

シェイクスピアの生涯

シェイクスピアの本名は、ウィリアム・シェイクスピア。1564年にイングランド中部のストラトフォード=アポン=エイヴォンで生まれました。実家は裕福な家庭だったようです。シェイクスピアの出身校ははっきりと判明していないのですが、ストラトフォードにあったグラマー・スクール(文法学校)に通って、ラテン語や文学を学んでいたとされます。1582年、18歳となっていたシェイクスピアは、アン・ハサウェイと結婚。彼女は26歳で、7歳年上でした。この結婚のあと、しばらくシェイクスピアの記録は残っていません。

1592年ごろから俳優業と並行して劇作家として活動するようになったシェイクスピア。活躍した約20年の間に、数多くの名作を残しました。亡くなったのは1616年4月23日。伝承上の誕生日は4月23日であり、誕生日と命日が同じである、とも言われています。イギリスで行われた「100名の最も偉大な英国人」のランキングでは、第5位に選出されました。

英語の成立を知る重要資料として

ストーリーが評価されているのはもちろんなのですが、シェイクスピアの作品群は言語学的観点から見ても重要なものとされています。イギリスの作家なので言語は英語です。実はシェイクスピアが生きた時代において、英語はまだしっかりと成り立ってはいませんでした。英語は今でこそポピュラーなものとなりましたが、ラテン語などと比べると新しい言語。この時期の英語のことを「初期近代英語」と言い、シェイクスピアの著作はそれを使用した作品の代表格です。

また、シェイクスピアは今でも使われている多くの英単語や慣用句をも生み出したと言われています。たとえば「critical」。「批判的」といった意味があります。慣用表現としては、「love is blind」。日本語で「恋は盲目」という意味であり、日本でも恋愛の本質をあらわす際によく聞く表現ですよね。

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シェイクスピアの作風とは?

時が流れた現在でも愛される作品を数多く残したシェイクスピア。「◯◯な作風だ」とひとまとめにして語ることができないほどに、彼の作品はさまざまな性質を持っています。1592年から活動し始めたシェイクスピア。その作品群は大きく「悲劇」、「史劇」、そして「喜劇」に分けられています。この分類は、1623年にシェイクスピアの同僚であるジョン・ヘミングスとヘンリー・コンデルによって出版されたシェイクスピア作品集(ファースト・フォリオ)においてなされたものです。しかし「喜劇」でありながら、単純な楽しさだけでなく倫理的な問題を提示する作品も存在。こういった作品を別に「問題劇」や「悲喜劇」と称する批評家もいます。

思わず涙してしまう?シェイクスピアの悲劇作品

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シェイクスピアは多くの作品を生み出しました。そのなかでも『ハムレット』、『オセロー』、『リア王』、『マクベス』は合わせて「シェイクスピアの四代悲劇」と呼ばれています。これらの悲劇作品の印象が強い方も多いのではないでしょうか。

悲劇のなかにも見える人間の強さ 『ハムレット』

ハムレットはデンマーク王国の王子。前王であったハムレットの父は叔父・クローディアスに殺されてしまい、母・ガートルードはそのクローディアスと再婚します。クローディアスの裏切りを父の亡霊から聞いたハムレットは復讐を決意。狂ったふりをするハムレット。恋人・オフィーリアは自らの父親・宰相ポローニアスの命で彼に探りを入れますが、ハムレットは彼女へ辛く当たります。さらにその後、ハムレットはポローニアスを殺してしまうこととなり、オフィーリアは精神を病み自殺してしまいました。フランスから帰国したオフィーリアの兄・レアティーズはこの事実を知り、ハムレットへの復讐を決意。ハムレットへの危機感を持っていた王は、レアティーズとハムレットに剣の試合をさせて、ハムレットの暗殺を企みます。その試合の最中、ガートルードが毒酒を飲んで亡くなり、ハムレットとレアティーズは共に毒剣の餌食に。レアティーズからこの試合の真相を聞いたハムレットは、最期に王を殺害しました。

『ハムレット』には、「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」という名言が登場します。これは主人公・ハムレットのセリフ。英語原文では、”To be or not to be : that is the question.”です。悲劇ではありますが、困難に立ち向かうことが主題の『ハムレット』の物語をよくあらわしている一文ですね。

嫉妬は時に悲劇を巻き起こす! 『オセロー』

副題を「ヴェニスのムーア人」と言います。その副題の通り、ヴェニスのムーア人(北西アフリカのムスリム)であるオセローが主人公。軍人・オセローは恋人のデズデモーナと駆け落ち。オセローのことを憎んでいた部下・旗手のイアーゴーは、同僚キャシオーとデズデモーナが不義密通をしているという嘘をオセローに伝えます。これを信じてしまったオセローは妻を殺してしまいました。その後イアーゴーの企みを知り、妻の無実を知ったオセロー。デズデモーナの死体に口づけをしながら自殺をしました。

ほかの悲劇と比べて、わかりやすい構造をしていると言われる『オセロー』。オセローがイアーゴーのことを完全に信用してしまったのは、彼が普段は立派な人物だったから。いくら信頼を置く部下とはいえ、信じ込んで妻を殺してしまうなんて、相当なものですよね。嫉妬と信頼が重なったからこそ起こった悲劇なのかもしれません。

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