壮大なスケールで描かれた悲劇 『リア王』
80歳を超えた、古代ブリテンの王、リア。彼には三人の娘がいました。退位の際に、彼女たちに国を分割して分け与えることとします。長女のゴネリルと次女のリーガンは上手く立ち回り領土を得ますが、実直な末娘のコーディリアは父親を怒らせて勘当されてしまいました。その後リア王は長女と次女に裏切られて国を追い出されます。フランス王妃となっていたコーディリアは父親を助けようとしますが、捕虜となり獄中死。リア王はこれに悲しみ、そのまま世を去りました。
四代悲劇のなかでも、『リア王』は壮大なスケールで描かれている作品です。「リア」という人物にはモデルがいます。それは伝説上のブリテン王・レイア(Leir)。『ブリタニア列王史』という、12世紀に書かれた偽史書に登場します。こちらのレイア王は末娘と協力し、裏切った二人の娘に勝利して復権を果たしました。
下剋上をしたけれど…… 『マクベス』
マクベスはスコットランドの将軍。3人の魔女にそそのかされたマクベスは、マクベス夫人の後押しもあり王であったダンカンを暗殺し、スコットランド王に。しかし夫人は精神的に不安定となり、ついには亡くなってしまいます。マクベス自身も錯乱し、戦場へ赴きますが討たれてしまいました。
『マクベス』はシェイクスピア作品のなかでも3番目に短く、四代悲劇のなかでは一番短いものです。マクベスは実在のスコットランド王がモデルですが、実際のマクベスは下剋上をしたもののその後長い間統治をしており、シェイクスピアの『マクベス』の印象とは違っているようですね。『マクベス』という作品の不吉な雰囲気からか、劇場で「マクベス」という言葉を発すると災いが起こるともされています。
何度も映画化されている名作! 『ロミオとジュリエット』
長い間対立する二つの名家がありました。それはモンタギュー家とキャピュレット家。仮面舞踏会においてモンタギュー家のロミオとキャピュレット家のジュリエットは恋に落ちます。互いの家が分かっても想いの変わらない二人は修道僧ロレンスによって密かに夫婦となりました。しかし親友を殺されたロミオがジュリエットの従兄弟・ティボルトを殺してしまい、街から追放されてしまいます。悲しむジュリエットは貴族パリスとの結婚を強くすすめられ、困ってしまいました。ロレンスから仮死状態となる薬をもらったジュリエットは埋葬され、ロミオの迎えを待ちます。不幸なことにロミオには計画が上手く伝わっておらず、ロミオは自殺してしまいました。仮死状態から生き返ったジュリエットはすぐに後を追ってしまったのです。
四代悲劇には入っていないものの、とても有名な『ロミオとジュリエット』。何度も映画やドラマになっているので、きっとこの作品に触れたことのある方は多いことでしょう。バルコニーでの二人のシーンはとても有名ですよね。少しのすれちがいが引き起こした悲しい結末が印象的なこの作品。悲劇でありながらも、恋人たちがさまざまな障壁を前に奮闘する構成は喜劇的でもあります。
楽しくて笑えるかも!?シェイクスピアの喜劇作品
ジョゼフ・ノエル・ペイトン – 不明, パブリック・ドメイン, リンクによる
悲劇作品が有名なシェイクスピアですが、喜劇作品を数多く執筆しています。当時の人々は悲劇よりも喜劇を好んでいたそうです。喜劇では、悲劇とはまた違ったシェイクスピアの魅力が分かりますよ。
最後はハッピーエンドなドタバタ劇! 『夏の夜の夢』
物語が進む場所はギリシャのアテネ。主な舞台はその近郊の森の中です。『夏の夜の夢』は登場人物が多いことが特徴。まず、ハーミアとライサンダー。この二人は恋人同士。ディミートリアスはハーミアの許嫁であり、彼自身もハーミアのことが好きなのです。そしてヘレナはディミートリアスに想いをよせています。一方森に住む妖精たち。森では、妖精の王オーベロンと女王ティターニアが喧嘩をしていました。この喧嘩からドタバタ劇が起こり、森に入った人間たちも巻き込まれていくのです。妖精の魔法のせいで一時は大変なことになりますが、最後には大団円を迎えます。
『夏の夜の夢』の原題は”A Midsummer Night’s Dream”。『真夏の夜の夢』と訳されることもあります。妖精や魔法というファンタジーに彩られた恋愛物語は必見です。メンデルスゾーンはこの物語を元にした曲を作っています。何度も映画化されているので、まずは映画から観てみるのも良いかもしれませんね。
親友のために「あるもの」を担保に! 『ヴェニスの商人』
タイトルの通り、イタリアのヴェニス(ヴェネツィア)が舞台となる作品です。タイトルにもなっている商人の名前はアントーニオ。アントーニオにはバサーニオという友人がいます。バサーニオはお金持ちのポーシャに想いをよせており、アントーニオへ結婚資金の融通を依頼。アントーニオは手元にお金がなく、ユダヤ人の高利貸し・シャイロックに自分の肉体の一部を担保として借金をしてしまいます。バサーニオとポーシャとの縁談は上手くいきますが、そんな折にアントーニオの財産のすべてが載っていた商船が遭難。肉を担保としていたアントーニオはどうなるのか――。
簡単なあらすじだけ聞くと、喜劇というよりも悲劇なのではないか、というような気持ちになりますよね。しかし、アントーニオ側にとってはハッピーエンドとなるこの作品。悪役だからということもありますが、高利貸のシャイロックは結局アントーニオの肉をもらうこともなく、さらに財産も没収とされてしまいます。シャイロックはユダヤ人であり、差別問題も含んだ複雑な作品と言えるでしょう。