イギリスヨーロッパの歴史

イギリスを第二次世界大戦で勝利に導いた「チャーチル」不屈の政治家をわかりやすく解説

チャーチル政権の発足とナチス=ドイツとの戦い

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1940年、宥和政策が失敗し行き詰まったチェンバレンは首相を辞任。かわって反ナチスを掲げていたチャーチルが首相の座につきました。首相となったチャーチルはナチスと徹底的に戦い抜きます。その一方、大戦への参加に消極的だったアメリカからの支援を得るため、大西洋会談を実施しました。チャーチルが大戦末期に参加したヤルタ会談は戦後の世界の行方を決める重要な会談となります。

ヒトラーと戦い、イギリス国民を鼓舞する不屈の首相

チャーチルが組閣した1940年5月、ドイツ軍は中立を宣言していたオランダとベルギーに侵攻します。ドイツ軍の電撃戦で劣勢となったイギリス・フランス軍はドーバー海峡沿岸のダンケルクに追い詰められました。

チャーチルはイギリス軍の撤退を決定。イギリス本土でのドイツ軍との戦いの為、戦力を温存しました。フランスを降伏させたドイツはイギリス上陸を計画します。

そのため、ドイツはイギリスの制空権を取るための航空戦を仕掛けてきました。ドイツ軍は連日、ロンドンなどを激しく空襲しました。イギリス空軍はドイツ空軍を撃退すべく、戦い続けます。戦いの最中、チャーチルは国民を鼓舞し続け、イギリス国民も空襲に耐えました

その結果、イギリスの制空権をめぐるバトル・オブ・ブリテンでイギリス空軍は勝利。ドイツ空軍の撃退に成功しました。

ドイツに対抗するためにチャーチルが行った外交戦略

圧倒的優勢なドイツ軍に対し、イギリスは孤独な戦いを続けていました。ドイツに勝利するためには、アメリカやソ連との連携が必要です。1941年3月、アメリカは武器貸与法を制定しました。これにより、アメリカはイギリス支持を明確に打ち出します。

6月に独ソ戦が始まると、共通の敵であるドイツと戦うためイギリスとソ連は英ソ軍事同盟を成立させました。加えて、チャーチルは8月にアメリカのフランクリン=ローズヴェルト大統領と太平洋上で会談。ドイツなどの枢軸国と戦う目的や戦後処理について話し合いました。

大西洋会談で決められた大西洋憲章にはソ連も賛成。大西洋憲章の枠組みに基づいて連合国共同宣言が作成されます。アメリカ・ソ連・イギリスを中心とする連合国は、ドイツ・イタリア・日本などの枢軸国を追い詰めていきました。

ヤルタ会談への参加と第二次世界大戦の勝利

1942年頃から、戦局は連合軍に有利になりつつありました。1943年2月、ソ連軍はドイツ軍とのスターリングラードの戦いに勝利。徐々にドイツ軍を押し返していきます。また、7月にはイタリアのムッソリーニが失脚し、イタリアは降伏。戦線を離脱しました。

1944年6月、アメリカ・イギリス連合軍はノルマンディー上陸作戦を実行。西部戦線での反撃を開始します。戦局は連合軍に有利となり、ドイツの降伏は時間の問題と考えられるようになりました。

1945年2月、黒海沿岸のヤルタに連合国首脳が終結。戦後の枠組みを決めるヤルタ会談をおこないます。この会談で国際連合の創設やソ連の対日参戦が決められました。

会談ではチャーチルとスターリンの立場の違いが明確になります。ローズヴェルトはソ連の対日参戦を引き出すため、スターリンに大幅な譲歩を示しました。この譲歩が、のちの冷戦につながったといわれます。

第二次世界大戦後のチャーチル

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1945年4月にヒトラーが自殺し、ドイツは無条件降伏します。8月には日本も降伏し、第二次世界大戦は終結しました。チャーチルは選挙に敗れ、政権を労働党に譲ります。しかし、彼の反共姿勢は退陣後も揺らぐことはありませんでした。1951年の選挙に再び勝利したチャーチルは首相の座に返り咲きますが、1955年に首相を引退します。

選挙に敗北し、アトリーに政権を譲る

ヒトラーの自殺によりナチスが降伏すると、戦争の行方ははっきりしたものとなります。1945年6月、イギリスではおよそ10年ぶりとなる総選挙が実施されました。1944年にチャーチルがドイツとの戦争が終結したら選挙を行うと宣言したからです。

選挙では、大戦でのチャーチルの活躍を訴えた保守党陣営に対し、労働党は戦争後の社会保障の充実や燃料・動力産業などの重要産業国有化を訴えました。選挙結果は、労働党394議席、保守党213議席で労働党の圧勝に終わります。

チャーチルは選挙結果を受け、ポツダム会談に参加していたチャーチルは帰国。イギリス王ジョージ6世に辞表を提出し内閣総辞職しました。次期首相には労働党のアトリーが就任します。ポツダム会談へはアトリーが出席しました。首相の座を退いたチャーチルでしたが、保守党の党首はそのまま続けます。

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