ヨーロッパの歴史

【絵画】ロマン主義って何?19世紀ナポレオン戦争時代、人の「感情」を描ききる芸術の新境地

早熟の国際的超人気イラストレーター!ギュスターヴ・ドレ

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By ギュスターヴ・ドレ Alighieri, Dante; Cary, Henry Francis (ed) (1892年) “Canto XXXI” in The Divine Comedy by Dante, Illustrated, Complete, London, Paris & Melbourne: Cassell & Company Retrieved on 2009年7月13日., パブリック・ドメイン, Link

ちょっと毛色の変わった画家を紹介します。というよりも、彼にはイラストレーターの名がふさわしいでしょう。ギュスターヴ・ドレです。「ドン・キホーテ」や「神曲」「失楽園」などの挿絵で知っている方も多いのではないでしょうか。

地元の出版社が彼のリトグラフ集を出版したのは、なんとドレ12歳のとき。その後新聞社に寄稿を続け、風刺画を描く一方で多くの挿絵を手がけます。特筆すべきは、わずか30歳でキリスト教世界の大長編にして、超難解なダンテの叙事詩「神曲」の挿絵をものにするという大事業。ここに掲げたのは「神曲」のクライマックス、天国に至ったダンテとベアトリーチェが再会するシーンですが、天使たちの神々しさ、繊細な銅版画の線、「神曲」の世界観を表現しきり、圧巻です。

その後ますます旺盛な創作を重ね、フランスにとどまらずドイツ、イギリス、ロシアなど国際的な人気を博します。生前から彼の作品は大人気。残した作品はなんと1万点以上!現代の日本でもドレを特集した本が多く出版されています。

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絵で見る十字軍物語

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ギュスターヴ・ドレの絵で十字軍物語を追う、塩野七生「絵で見る十字軍物語」。美しい挿絵といっしょに十字軍の歴史を追うことができる名著。ながめているだけで眼福です。

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【イギリス編】妖しく、美しく、かわいらしく……多彩で澄んだ感性の画家たち

さて場所をイギリスに移しましょう。イギリスは隣国フランスとはまた別の、特殊な美しい絵画世界を創造しました。これまでの絵画シーンに見られなかったビジョン、五感を総動員する作品、そしてカワイイ!イケメン!を描き出す美麗画家……他の国の絵画よりも澄んだ、そしておだやかな印象の英国ロマン主義絵画。どんなものなのでしょう?

「幻視」の画家ウィリアム・ブレイク

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By William Blake – The Yorck Project (2002) 10.000 Meisterwerke der Malerei (DVD-ROM), distributed by DIRECTMEDIA Publishing GmbH. ISBN: 3936122202., Public Domain, Link

詩も絵画も、彼の作品が評価されたのは死後。現在は絵画史でも最も偉大な幻想画家の1人に数えられるウィリアム・ブレイク。まるで異質、そして圧倒される感性ですね。神秘的で、まるで世界の深淵をのぞき見せられたようなブレイクの絵画。一度魅せられ取り憑かれたらクセになります。

この絵のインスピレーションはどこからやってきたのでしょう?なんとブレイクはこれらの絵画の世界を実際に「見た」のです。ビジョン、すなわち幻視をする能力を持ち、そうしてながめた異なる深淵をすくいあげて、独自の神話体系を作り上げたほどでした。天才の眼に見える風景は凡人には計り知れません……。

一方で詩人としても英国史で著名です。事実上のイギリス国歌「エルサレム」の作者として広く知られています。幻視詩作者・幻視画家としての評価は現在は非常に高く、BBCは「最も偉大なイギリス人100」38位にブレイクを数えているんですよ。

海と光を描く風景画家ウィリアム・ターナー

次いで英国絵画の巨匠を画家を紹介しましょう。ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー、風景画家です。こちらの絵「海の漁師たち」は、見ているこちらまで波の揺れを感じるかのような臨場感、天から注ぐ光の清らかさ。潮騒のとどろきすら伝わるようです。

ロマン主義は感受性命!の芸術運動ですが、ここまで五感に訴える絵画はなかなかありません。ターナーの絵画に表現される、圧倒的な自然のパワー。特に彼の作品は海洋、波が見事に描かれ、あざやかな光の用い方をすることから「光の画家」とも呼ばれています。

ターナーは幼少期から天才的な素質を持ち、王立美術アカデミーに14歳で入学、21歳で個展を開くという早熟っぷりでした。しかし彼は下層中流階級の出。言葉に労働者の訛りがありました。階級社会のイギリス。これをコンプレックスとして、有名になることをターナーは徹底的に避けたといいます。

カワイイ!美人!イケメン保証、大人気肖像画家トーマス・ローレンス

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By トーマス・ローレンス – Corel Professional Photos CD-ROM, パブリック・ドメイン, Link

かわいいですねえ。トーマス・ローレンス「ランプトン少年像」です。ローレンスはイギリスはじめヨーロッパ中の宮廷や王族貴族が愛したお抱え画家。それも「実物よりステキに書く肖像画家」として大人気でした。

少年時代から、その卓越し似顔絵イラストの腕で家族を食べさせていたローレンス。完璧な宮廷儀礼を身に着け、世渡りがうまく、なによりも実物より格段に美人!イケメン!かわいく!描く技術に秀でていたローレンス。そりゃ人気にもなります。王族・貴族から多く注文を受け、イギリス国王からはナイトに叙爵されました。画家というと不遇で貧乏暮らしをする中で傑作を生み出すイメージですが、ローレンスはリア充画家ですね。

非常に表情豊か、人間の感情や光の面をあざやかに描いたローレンス。彼の肖像画は世界中で愛されています。ちなみに「ランプトン」でピンときた少女漫画ファンもいらっしゃるでしょう。萩尾望都の傑作「ポーの一族」にこのランプトン少年像がモチーフとして登場しますよ(筆者はランプトンは萩尾先生の創作した架空の絵画とばかり……)。

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