5)美味しいものがないって本当?イギリスの食文化とは
よく「イギリスには美味い食べ物がない」と聞きますが、これには少々誤解があるのかもしれません。
歴史上、大航海時代や産業革命など、とにかく「忙しい」というイメージがあるイギリス。実際、昔から、イギリスで「食事」というと、落ち着いて席について会話を楽しみながら食事をする……というより「短時間で栄養補給」という意味合いが強かったようです。サンドウィッチやフィッシュアンドチップスのように、椅子に座らず立ったままでもガブリと食べることができる食べ物が人気。ボリュームがあって腹持ちがよく、すぐ調理できてすぐ食べれて、すぐ仕事に取り掛かれるものが重宝されてきました。
そのせいか、イギリス料理の調理方法はいたってシンプル。ゆでる、揚げる、煮る、素材そのものの味を活かして味付けは塩コショウのみ……といった具合。もちろんこれは、労働者階級の人々に限った話かと思われますが、こういう食文化があったからこそ、労働者たちは力強く働き続け、イギリスの産業・経済は発展していったのでしょう。
6)パーティーでも酒場でもマナーを重んじるイギリス文化
社交場やパーティーの席だけでなく、フィッシュアンドチップスの屋台のようなカジュアルな場であっても、イギリスの人々はマナーや礼儀作法を重んじます。
代表的な欧米諸国であるイギリス。誰にでもフランクに話しかけるオープンなアメリカと同じかと思いきや、社交的である反面プライベートを大切にする傾向があるといわれています。初対面の人にいきなり話しかけるのではなく、天気の話など無難な話題から徐々に距離を詰めていくのが一般的なのだそうです。あまり馴れ馴れしい態度は嫌われる可能性もあるのだとか。だからといってカタブツというわけではなく、相手の都合を尊重した柔軟な会話がイギリス文化の特徴と言えそうです。
また、行列への割り込みや横入りもご法度。人気のお店やイベントなどの際、イギリスの人々はマナーよく辛抱強く、一列に並んで順番を待ちます。エスカレーターに乗るときも、急ぐ人たちのために片側をあけて立つのが一般的。行列マナーに関しては、日本人と通じるところがあるかもしれません。
7)入館無料の博物館・美術館も!芸術を好むイギリス文化
イギリス発の芸術作品ってどうもピンとこないなぁ……と感じる方も多いかもしれません。確かに、イギリス出身の画家といわれてもすぐに名前が思い浮かばなかったり、フランスやイタリアと比較してしまうと、芸術とは程遠い国なのでは?と思われがち。しかし実は、イギリスの人々はとても芸術を愛しているのです。
その一例として、イギリス国内には無料で入館できる美術館・博物館がたくさんあります。大英博物館やロンドン・ナショナル・ギャラリー、自然史博物館、ロンドン博物館など、世界的に有名な巨大施設も無料で閲覧可能。エジプトなど旧植民地で出土した歴史的遺構の数々も、すべて無料で見学することが可能なのです。
国立でない美術館・博物館の中にも入館無料の施設や、入館は無料ですが寄付を募っている施設もあり、イギリスの人々の芸術への思い伺えます。
8)イギリスの人々の社交場・「パブ」について知ろう
「パブ」とは、「パブリック・ハウス(Public House)」を略した単語。現在では「酒場」という意味で用いられますが、もともとパブとはもっと広義に「社交場」「公共の場」という意味を持っていました。パブはイギリスが誇る文化のひとつなのです。
パブの前身は、紀元前1世紀頃までさかのぼります。ローマ人たちが海を渡りグレートブリテン島にやってきて、食事や宿泊ができる施設をたくさん作ったのだそうです。ローマ人たちが去った後もこうした施設は残り、この島を訪れる旅人たちが利用する施設として繁栄。時代が近代に入る頃には、労働者たちが仕事帰りに気軽に立ち寄れる酒場としてにぎわいを見せるようになります。こうした施設のことを、19世紀頃になって「パブ」と呼ぶようになったのです。
パブと同じような位置づけの社交場に「コーヒーハウス」というものもありました。こちらは主に上流階級の紳士たちが政治や商売の話で盛り上がるためのサロンのようなもの。18世紀頃、コーヒーが大流行したこともあって、こちらも大変にぎわったと伝わっています。コーヒーブームが去ると、コーヒーハウスは徐々にお酒を出すパブに変貌。現在、イギリス国内にパブは5万軒近くあるといわれており、お酒と軽食を楽しむ憩いの場として老若男女に愛されています。
9)イギリスといえば紅茶・いつ頃から飲まれているの?
イギリス文化といったら、紅茶の話をしないわけにはいきません。
リプトンやトワイニングといった世界的に有名な紅茶の会社の多くはイギリスの会社。イギリス人の多くが紅茶を楽しんでいるというイメージが強いですが、イギリスに紅茶が伝わったのは17世紀半ば頃といわれています。当時、紅茶の茶葉は主に中国で生産されており、大航海時代の海上貿易で、まずオランダが買い付けを行い、ヨーロッパ中へと広まっていきました。もちろんイギリスにも伝わりましたが、当初はそれほど人気がなかったようです。
イギリスでの紅茶文化のきっかけとなったのが、1662年にポルトガル王室からイングランド王のもとへ嫁いだキャサリン妃だったといわれています。紅茶好きだったキャサリン妃の影響で、紅茶をたしなむ上流階級女性が増え、紅茶人気が高まったのです。ただし、東方から船で運び込まれる茶葉は大変高価。紅茶は富裕層の飲み物として広まっていきました。
10)イギリス文化の象徴「アフタヌーンティー」とは
イギリスの紅茶文化として忘れてはならないのが「アフタヌーンティー」です。アフタヌーンティーとは、「午後に紅茶を飲みながら軽い食事やお菓子を食べる習慣」のこと。単に小腹を満たすおやつタイムというだけでなく、食器や調度品などテーブルセッティングを楽しんだり、花を飾ったり、親しい人を招いておしゃべりをしたり、礼儀作法を学んだり……イギリス上流階級の社交場にもなっていました。この習慣が徐々に労働者階級にまで広まり、現代のイギリス文化の象徴的存在となっていきます。
始まりは19世紀半ば。貴族たちが夜、演劇やオペラ鑑賞に出かける前の腹ごしらえとして、午後4時頃に軽食を食べ始めたのがきっかけと言われています。その後、電灯の普及などで労働者たちも長い夜を過ごすようになり、午後にお茶や軽食を食べる習慣が定着していったようです。
2段~3段重ねのティースタンドに、スコーンやケーキ、サンドウィッチなどが並べられ、大きなティーポットにたっぷりの紅茶。手入れの行き届いた庭を眺めながら紅茶の味と香りを楽しみ、親しい人とのおしゃべりに花を咲かせる……。そしてもうひと働き。アフタヌーンティーは忙しいイギリスの人々にとって欠かせない習慣となっていったのです。