小説・童話あらすじ

ペローやグリムだけじゃない!古今東西「シンデレラ」物語の知りたくない真実

「シンデレラ」は女の子がだれもがあこがれる物語ですよね。世界中にさまざまな形で「シンデレラもの」の民話は伝わっていること、ご存知ですか?シャルル・ペロー「サンドリヨン」えぐいグリム童話版「アシェンプテル」平安時代日本の「落窪物語」古代にいたっては、ファラオと女奴隷のロマンスまで!古今東西シンデレラ物語の真実に迫ります。

継子いじめ物語「シンデレラ」ストーリー、基本のキ!

image by iStockphoto

まずはディズニー映画で原作として採用されているシャルル・ペロー版「シンデレラ」に従って、あらすじと内容をおさらい。シンデレラはどうやって舞踏会へ行ったんだっけ?どこまではっきり覚えていますか?なおシャルル・ペローのタイトルはフランス語読みの「サンドリヨン」。この記事ではみなさんに馴染みある「シンデレラ」で統一しますね。

「灰かぶり娘」シンデレラの誕生

シンデレラの実母は彼女が幼いときに亡くなります。父親はすぐに次の妻を迎えました。継母と2人の義理のお姉さんは、前妻の娘が気に食わず、台所へ追い払い、家の女中仕事をすべてさせるようにしました。新しい奥方の尻に敷かれた父親は、実の娘シンデレラへのいじめに加わる始末。台所で灰をかぶって仕事する彼女の姿を見て家族は「シンデレラ(サンドリヨンとも)=灰かぶり」と呼ぶようになりました。

しかしシンデレラは姿も心もとても美しい娘でした。にこにこ笑いながら黙って義理の母親と血のつながらない姉に仕えます。そんなある日、王子さまが盛大な舞踏会を開くことになりました。シンデレラの姉たちも招かれます。ドレスだ髪飾りだと大騒ぎし、「灰だらけ娘のくせに、舞踏会なんぞにでかけていったら、みんなさぞ笑うだろうよ」と嫌味をとばす姉たちのドレスアップを、シンデレラはこころよく行うのでした。

善い魔女の助けで、舞踏会へ

image by iStockphoto

舞踏会当日。姉や継母の姿が出かけてみえなくなると、シンデレラはわっと泣きだしてしまいます。そこにあらわれたのがシンデレラの名付け親の女性。彼女は実は善良な魔女なのでした。魔女はかぼちゃとねずみ、とかげに魔法をかけて、馬車と馬、御者やおつきの人を仕立てあげます。そしてシンデレラのみすぼらしい服を金と銀のドレスに変え、ガラスの靴を差し出すのでした(リスの皮の靴とも)。

舞踏会にて、王子さまは美しいシンデレラをひと目で見初めてしまいます。1日目、シンデレラは無事に魔法の解ける夜12時の鐘が鳴る前に帰ることができました。しかし2日目の夜、楽しさにうっかり時間を忘れてしまいます。鐘がなりはじめたのに気づいて、あわてて走って帰るシンデレラ。その途中でガラスの靴の片方を落としてしまうのでした。

ガラスの靴が合う娘を探して

王子さまはシンデレラを忘れられません。シンデレラの置いていったガラスの靴が足にはまる娘を、お妃にするとおふれを出しました。家来に命じて、舞踏会に出席していた貴族のお姫さまや身分の高い娘たちの足を試させます。回り回って、ついにシンデレラのいじわるな義理の姉たちの番になりました。もちろん姉たちに入るわけがありません。

「わたしの足にだってあうかもしれない」と、脇でみていたシンデレラは言いました。あざ笑う姉たちでしたが、ガラスの靴を持ってきた家来は、この灰だらけの娘はずいぶん美しいと思います。試すだけ試そう、とシンデレラにガラスの靴を履かせると、ぴったり。シンデレラはポケットからもう片方のガラスの靴を出して見せました。そこにあの魔女があらわれて、シンデレラをまた美しく装わせてみせたのです。

2人のいじわるな姉たちにシンデレラは、今度からもっとやさしくしてくれればいいと言いました。4、5日後、シンデレラは王子さまと婚礼の式をめでたく挙げます。そのときに姉たちにもそれぞれ貴族を結婚させて、お城へ引き取ってあげたのでした。

グリム童話、残酷なもうひとつの「シンデレラ」

image by iStockphoto

と、ここまではフランス宮廷のお抱え童話作家シャルル・ペローのバージョンをご紹介しました。しかしもう1つ有名なバージョンがあります。グリム兄弟の「シンデレラ」です。こちらは悲惨、凄惨、残酷……。ここまで違うの?そもそもなんでこんなに違うの!その理由、そして「グリム版」の内容をなぞっていきましょう。

どっちが先?ペローとグリムの「シンデレラ」

結論から言うと、「シンデレラ」を書いた童話作家としては、シャルル・ペローのほうが先。ペローはフランス革命前、宮廷お抱え童話作家だったのに対し、グリム兄弟はナポレオン戦争真っただ中で活動したと言えば時系列がわかるでしょうか。グリム兄弟はドイツ地方各地の民話を採集して「グリム童話」としてまとめ上げました。その1つとして「シンデレラ」物語もあります。グリム童話における名前は「アシェンプテル」。しかしグリム兄弟の採集したこのシンデレラ物語、ペローのそれとはまるで印象の違うものでした。

どっちが本物?と言いたくなりますが、実は世界には古今東西、似たような「継子いじめ物語」「シンデレラストーリー」が伝わっているのです。なんだかふしぎですね。その物語が土地の性質や風土、風俗などにアレンジメントされていったと考えられます。ともあれ次の項からグリム童話版「シンデレラ」をご紹介していきましょう。

グリム童話版シンデレラは「魔女」ではなく「鳩」と「ハシバミの木」

ペロー版では心優しい魔女が救けてくれましたが、グリム童話の助っ人は、なんと鳩と、木!シンデレラの父親は妻を亡くしたあとすぐに後妻を迎えます。意地悪な継母と義理の姉たちは、先妻の娘に陰湿ないじめを。皿いっぱいのレンズ豆をかまどの灰にぶちまけてそれを拾わせます。寝床もなく、暖をとるためにかまどの中で眠る娘はアシェンプテル、つまり「灰かぶり娘」と呼ばれました(彼女のことは以後もシンデレラで統一します)。そんな中、王子さまが舞踏会を開くとおふれがでました。ここまではペローとだいたい同じ。

ドレスも宝石もないシンデレラ。継母や姉たちを見送ったあとに、かつて自分が母親のお墓に植えたハシバミの木のもとへ走ります。「ゆすって、ゆすって、若木さん、銀と金を私に落としておくれ。」するとドレスや宝石がおりてきました。また、姉たちが灰の中にばらまいていったレンズ豆を、鳩がすべて拾って食べてくれます。ここで登場する助っ人である2羽の鳩は母親の霊魂であるとも、神の聖霊であるとも。無事にシンデレラは舞踏会へ行くことができたのです。

次のページを読む
1 2 3
Share: